政治・経済 週刊文春 掲載記事
THIS WEEK

「党が蒸発する」民主議員が恐れる
定数是正衆参ダブル選

衆参ダブルに踏み切り圧勝した中曽根氏

 永田町に衝撃を与えた衆院選無効判決。「1票の格差」是正が安倍政権にとって一大政治課題となったが、思わぬ余波に脅えるのが民主党だ。

「『0増5減』を成立させた後、解散し衆参ダブル選挙にする。そうなれば民主党は間違いなく“蒸発”し、跡形もなくなる」(民主党衆院議員)

 永田町でダブル選に先頭を切って言及したのはみんなの党の渡辺喜美代表。3月25日、渡辺氏は記者団に「早急に制度を議論し、夏の参院選とのダブル選挙をすればいい」と強調した。

 実は、1票の格差是正を大義名分にしたダブル選は過去に例がある。渡辺氏の父、故美智雄元副総理はかつて自民党中曽根派の大幹部だった。その中曽根康弘元首相が断行し、自民党に空前の大勝をもたらした1986年7月の衆参ダブル選が「喜美氏の脳裏にチラついたのだろう」と関係者は推測する。

 中曽根政権当時も85年に最高裁が1票の格差で違憲判決を出し、定数是正が急務になっていた。支持率の高かった中曽根首相は総選挙で政権基盤を固めたがったが、定数是正が解散の障害になっていた。中曽根氏は当時の金丸信幹事長とコンビを組んでダブル選を決意。翌86年5月、衆院定数を「8増7減」する法改正を成立させたが、この時はダブル選を強く警戒する野党に配慮して30日間の「周知期間」を設定。「解散権は制限された」と野党を油断させて臨時国会を召集し、冒頭解散に踏み切った。俗に言う「死んだふり解散」である。

 8増7減と0増5減、違憲判決と、中曽根ダブルと今回の状況は似通っている。憲政上、2回しかない衆参ダブル選はいずれも自民党が圧勝をおさめて終わっている。

 ダブル選を意識してか、前哨戦も過熱している。民主党の細野豪志幹事長が「0増5減だけなら、再び違憲判決が出るおそれがある」と反対する構えを示すと、自民党の石破茂幹事長は31日、「与党は重い責任を負っている」と、参院で否決されたら、衆院での再可決も辞さないと踏み込んだ。

 ただ、ダブル選には連立を組む公明党が大反対だ。今年は都議選、参院選があり、「衆院とのトリプル選挙などしたら、組織が壊れてしまう」と党幹部は悲鳴をあげる。

 憲法改正を巡り、すきま風が吹く自民党と公明党。今後の政局の流れに、1票の格差是正が絡んでダブル選へとつながるのか――、要注目だ。

「週刊文春」編集部

※この記事の公開期間は、2016年04月03日までです。

この記事の掲載号

2013年4月11日号
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