社説
生活保護条例 市民監視は行き過ぎだ(4月4日)
パチンコや競馬などで浪費している生活保護受給者を市民が見つけたら、市への通報を速やかに求める。
兵庫県小野市が今月から全国でも例がない「福祉給付制度適正化条例」を施行した。
保護費の使途に制限はないものの公金を原資にしている以上、ギャンブルに費やすことに疑問を持つ市民がいるのは当然だ。ぎりぎりの生活を送っている人からみれば、納得がいかない気持ちは理解できる。
だからといって市民同士が監視し合い、密告を促すような制度を設けるのは適切と言えるだろうか。
受給者の生活の把握は行政の仕事だ。市民にその役割の一端を担わせるとすれば筋違いもはなはだしい。
兵庫県弁護士会は受給者の人権を侵害し、違憲の疑いもあるとの声明を出したが、こうした懸念の表明は健全な反応と言える。
今のところ道内の自治体を含め追随の動きはないが、受給者への市民の厳しい視線を背景に同様の条例制定が広がる可能性は否定できない。
こうした条例は本当に保護を必要としている人に申請を躊躇(ちゅうちょ)させる恐れがある。受給者であるというだけで白い目で見られ、差別や偏見を助長することにもつながる。
悪影響はあまりに大きく、条例は到底容認できない。
条例によると、通報があった場合、警察OBらでつくる適正化推進員が受給者の生活実態を調査し、不正があれば市は支給停止も検討する。
小野市は人口約5万人。受給世帯は約120世帯で、保護を受ける割合は全国平均より大幅に低い。不正件数は少ないうえ、保護費が市の財政を圧迫しているわけではない。
それなのになぜこうした条例が必要なのだろうか。蓬☆(ほうらい)務市長は「狙いは生活保護の適正運用だが、地域の絆を深め、受給者の自立した生活を支援するため」と説明する。
そもそも受給者の個人情報は非公開だ。だれが受給者かわからないのにどう通報させるのか。人違いや誤った通報もあり得るだろう。絆どころか地域の分断を招きかねない。
生活保護法は受給者に支出の節約を求めている。ギャンブル依存が目に余るようなら、むしろケースワーカーや医療機関などが指導し、生活を改善させることが先決だ。
条例は児童扶養手当などの受給者も通報対象に含めた。これでは福祉制度の利用者を萎縮させかねない。
生活保護の受給者は全国で約215万人に上る。しかし、資格がありながら、受給していない人はその3〜4倍もいるとされる。
そうした人たちの生活を引き上げ、さらなる貧困に陥らないよう後押しすることこそが行政の役割だ。
(注)☆は「草かんむり」に「來」
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