政治・経済 週刊文春 掲載記事
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「徳政令」終了で
中小企業の倒産ラッシュが来る

別名「亀井法」と呼ばれる Photo:Jiji

「平成の徳政令」と呼ばれ、リーマンショック後の中小企業を救ってきた中小企業金融円滑化法が3月末で終了する。しかし、同法を解除するのは容易ではない。「劇薬だったが、効果は絶大だった」(地域金融機関幹部)ためだ。

 昨年9月末までに円滑化法に基づき貸出条件の変更を申請したのは約400万件、うち9割超が承認され、適用された債務総額は約100兆円に上る。この間の倒産件数はバブル期を下回る水準にまで抑制された。その劇薬が切れることで、倒産の急増が懸念されている。

 円滑化法の終了を控え、「銀行はすでに契約条件の変更などを申し入れてきている。融資の打ち切りも示唆している」(書籍小売、大阪府)。

 金融庁によると円滑化法に頼る企業は30万~40万社で、うち転廃業を迫られる中小企業は5万~6万社と言われる。だが、「最大10万社は再生の見通しが立たない状態」(金融筋)との指摘もある。

 当局側は「貸出条件を緩和しても1年以内に経営改善計画を策定すれば、不良債権としない」というルールを定めて冷静な対応を呼びかけているが、「1年が経過しても計画を策定できないケースが増えている」(信用情報機関)。「このままでは将来の不良債権を抱え込むだけで、いずれ爆発する。傷口が広がる前に処理したい」(地銀幹部)というのが金融機関の本音だ。

 打開策として期待されるのが「再生ファンドの活用」。中小企業向け債権を再生ファンドに譲渡することで時間をかけて支援していくという戦略だ。すでに全国各地で受け皿となる再生ファンドが組成され、4月には「地域経済活性化支援機構」も立ちあがる。

 金融庁は税制支援にも乗り出す。最大の目玉は「再生ファンドによる債権放棄」だ。再生ファンドが債権放棄した場合、再生企業は税制上の優遇措置を受けられる仕組みだ。

 しかし、「債権をファンドに疎開させても、再生できる中小企業はごくわずか」(前出・地銀幹部)との厳しい見方も残る。また、「債権が再生ファンドに持ち込まれた場合、何らかの形で経営責任の明確化を求められる。家族のような従業員の解雇を迫られるのではないか」(中小企業経営者)と警戒する声も根強い。

 時限爆弾破裂まで、あと1週間しかない。

森岡 英樹 (ジャーナリスト)

※この記事の公開期間は、2016年03月20日までです。

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2013年3月28日号
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