40年超の原発は「特別点検」を4月3日 17時18分
国の原子力規制委員会は、電力会社が原発を40年を超えて運転する場合に、新たに原子炉や格納容器などの劣化を詳しく調べて評価する「特別点検」を、基準として求めることになりました。
全国の原発は、規制委員会がことし7月までに策定する運転再開の前提となる新たな規制基準で、古い設備を改善する対策も求められることから、古い原発が運転を延長するには、2つの基準を満たすことが必要になります。
国内の原発は、去年6月に改正された法律で、運転の期間が40年と定められ、原子力規制委員会の認可を受ければ、1回に限り最長で20年まで延長することができるようになりました。
規制委員会は、3日の会合で、運転を延長する場合に電力会社に新たに求める基準を示し、「特別点検」として、▽原子炉は、溶接部だけだった超音波による検査を全体に広げることや、▽格納容器は、材料のコンクリートの一部を切り取ったうえで、強度を詳しく調べることを盛り込みました。
▽また、原子炉が放射線の一種、中性子線で強度が下がる問題では、評価の計算式に不確実さがあることから、原子炉内に欠陥がないかなどを確認することを求めるとしています。
全国の原発は、規制委員会が、ことし7月までに策定する運転再開の前提となる新たな規制基準で、▽電源ケーブルを燃えない材質のものに取り替えることや、▽原子炉に注水する配管の多重化など、古い設備を改善する対策も求められます。
このため古い原発が運転を延長するには、2つの基準を満たすことが必要になり、新しい原発に比べて改修などに多くの時間とコストがかかることから、電力会社によっては、経営上の判断として、原発の運転を再開させずに、廃炉を選択するケースも出てくる可能性があるとみられています。
国内に50基ある原発のうち、運転開始から40年を超えている原発は、福井県にある日本原子力発電の敦賀原発1号機など3基あり、いずれも停止しています。
国内原発の運転年数は
日本では現在、30年を超える原発について、国が電力会社に対し、重要な設備の安全性を調べて管理計画を作ったうえで、計画を10年ごとに更新することを義務づけています。
50基の原発のうち3分の1以上の17基が、運転開始から30年を超えていますが、これまでに「問題がある」と評価された原発はありません。
すでに40年を超えている原発は、昭和45年に運転を始めた福井県にある日本原子力発電の敦賀原発1号機と、関西電力の美浜原発の1号機と2号機の合わせて3基です。
さらに、今後5年以内に40年を超える原発は合わせて6基で、福井県の美浜原発の3号機、高浜原発の1号機と2号機、島根県の島根原発の1号機、愛媛県の伊方原発の1号機、それに、佐賀県の玄海原発の1号機となっています。
規制委委員長「安全性見極める」
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、記者会見で、新たに求める「特別点検」について、「運転開始から時間がたった原発はいろいろなキズがつく。古い原発ほどきちんとした点検が必要で、運転から40年たった時点で原発の安全性を見極めたい」と述べて、延長を求める原発の審査を厳しく行う考えを示しました。
そのうえで田中委員長は、特別点検などのほかに、運転再開の前提となる新たな規制基準で、古い設備を改善する対策も求められることについて、「古い原発の場合、防火対策などで影響が出る可能性がある。結果として40年以上の運転延長の条件を満たすのは簡単ではない」と述べて、運転延長は容易ではないという認識を示しました。
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