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上杉隆 氏についての検証

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震災後のソコトコ1


震災直後、2011年3月16日に放送された文化放送『吉田照美ソコダイジナトコ』

上杉隆 氏は震災直後の2011年3月16日、文化放送『吉田照美ソコダイジナトコ』に約2時間ほど出演して原発事故をめぐる状況について語っている。上杉氏の話によれば、 世界中でメルトダウンと報じてるのに日本でだけはメルトダウンと書くとデマ呼ばわりされる 、 枝野官房長官が「絶対大丈夫です」と繰り返し言っている 、 国内メディアが「原発の冷却に成功した」とデマを流している 、 モニタリングのデータが隠蔽されている 、とのことである。当時これらの話はどれだけ事実に基づいてなされていたのか、各紙記事や会見記録に照らして検証した。

目次


結論としてはこれらは、当時の枝野官房長官の発言に関する捏造、報道に関する虚偽、原発事故(避難基準)についての誤った知識にもとづいている。


「メルトダウン」と書いたら袋叩きにあった

音源該当箇所
上杉  結果として政府が間違った情報に乗せられて何をやったかというと枝野官房長官が最初、「 全然被害はありません 」、それから「 絶対に安心して大丈夫です 」
吉田  その言葉はどっから来てるんですかねえ。
上杉  って言って3キロ四方の、原発でですよ、避難勧告だったんですよ。でそん時に私も他のラジオで言いましたけど、違うと。原発は大袈裟でも良いんだと。世界中で「メルトダウン」と書いてあるんだから。 日本だけなんですよ 、「メルトダウン」と書いた瞬間に・・・
吉田  まずはやっぱり最悪のことを考えて動かなきゃいけないっていうのは基本だと思うんだけどね。それで勿論落ちついて動かなきゃいけないんだけど。
上杉   「メルトダウン」と書いた瞬間に袋叩きにあってですね 、で、「デタラメジャーナリスト」とやられたんですね。

上杉氏は前日3月15日の『小島慶子 キラ☆キラ』でも同じ話をしている(※音源該当箇所

上杉氏がメルトダウンと書いたというのは以下のツイートであり、自ら述べているように政府機関の発表をそのままツイートしている。またこの事は上杉氏よりも早く各メディアが報じている(※メルトダウンを参照)。

【速報】 原子力安全・保安院によると、福島第1原発1号機で炉心溶融(メルトダウン)が始まった模様。放射性セシウムが検出。安全を確保して退避を。

上杉隆 / Takashi Uesugi (@uesugitakashi) March 12, 2011
上杉氏は別の箇所で、ワシントン・ポストの報道に基づいてメルトダウンの可能性を報じたと述べているが、そのワシントン・ポストの第一報じたい日本政府の発表に依っている。

ワシントンポスト「日本の原発から煙があがる」2011年3月12日
『日本の当局者らの話では原子炉がメルトダウンする怖れがある』


3月13日の官房長官会見で、枝野氏は、「 1号機においては炉心の溶融は起きたという認識か 」という記者の質問に対し以下のように述べている。

2011年3月13日午前11時 官房長官記者会見 (※該当箇所から)
記者 1号機においては炉心の溶融は起きたという認識なんでしょうか。
枝野   これは十分可能性があるということで 、当然、炉の中でありますので確認は出来ませんが、その想定のもとに対応をいたしておりますし、今回の場合も、 3号機についても可能性がある という前提で対応しています。

これを受け、13日のニューヨーク・タイムズの記事は「日本の当局者の話では、...彼らは破損した二つの原子炉で 部分溶融(partial meltdown) が起きたと想定している」と報じている。

翌日14日の会見では以下のようなやりとりがある。

2011年3月14日午後9時3分 官房長官記者会見 (※該当箇所から)
記者 時事通信の〔?〕です。2号機についてなんですが、 燃料棒の溶解、溶融は起きたと考えてらっしゃるんでしょうか 。
枝野   それが起きている可能性は高い。1、2、3、いずれとも ですね。確認はできませんが、起きている可能性が高いという条件は、これは三つとも一緒だと思っています。

3月15日朝日新聞2面(枝野氏の発言を受け「福島第一原発3基とも炉心溶融」の見出し)

3月16日のワシントンポスト記事では「官房長官は、原子炉が 部分溶融(partial meltdown) を起こしているかもしれないと述べている」と報じている。

参考: メルトダウン


海外のばあいは30キロ避難で一貫している

音源該当個所
上杉  海外の場合は一貫してるんです。こういう場合は大袈裟に「30キロ避難してください」と。大丈夫だと確認されたときに20キロに狭めて、「まだ大丈夫ですね」となると10キロ、そして5キロ3キロとやるのがダメージ・コントロール、危機対応なんですよ。 これは基本なんですね、原子力の時は。

上杉氏は、前日3月15日に出演した『小島慶子 キラ☆キラ』でも、 原発事故のさいの避難範囲は世界中で30kmが基本 と述べている(※音源該当箇所)。しかしこの放送の直後、17日(米時間16日)にアメリカが80km退避勧告をだすと、上杉氏はそれ以後、 原発事故のさいの避難範囲は80kmが国際基準 と言うようになる(※例−音源)。しかし下記の表に見るように、IAEAおよび各国の避難基準にかんする事実は、上杉氏の何れの話とも違っている(※参考:原発事故対応の世界基準)。

・IAEAの安全基準と各国の避難範囲 (原子力緊急時支援・研修センター作成資料POST-FUKUSHIMA EUROPEAN ACTION PLAN(SPAIN)に基づく)
IAEAの安全基準 原子炉の熱出力や核種の危険度により推奨範囲を設定

・予防的措置範囲(PAZ): 0.5-5km
・緊急防護措置計画範囲(UPZ): 5-30km
日本 ・緊急計画範囲(EPZ): 8-10km
アメリカ ・避難・屋内退避区域: 16km
・摂取制限区域: 80km
フランス ・即時対応区域 2km
・避難区域: 5km
・屋内退避区域: 10km
イギリス 施設ごとに緊急時計画区域(DEPZ)を設定

・マグノックス炉のDEPZ: 1-3.3km
・改良型ガス冷却炉のDEPZ: 1-3.5km
・軽水炉のDEPZ: 2.4km
スペイン ・緊急防護措置区域(UPZ): 10km
・長期防護措置区域(TPZ): 30km


枝野長官は「大丈夫です。絶対大丈夫です。」と繰り返し言っていた

音源該当箇所
上杉  広河隆一さんもガイガーカウンター持って現地行ったら3日前ですね、振り切れちゃうんですよ。こりゃ大変だとやってるんですけど、その情報は伝えない。安全だと。いろんな形で議論しないと話にならないのに政府も騙されて、新聞・テレビの立派なメディアの言うことを聞いて、そして枝野官房長官がくり返し、「 大丈夫です。絶対大丈夫です。 」
吉田  大丈夫ですの根拠が無いんだもんなあ。

震災直後から放送前日の3月15日午後までの枝野官房長官会見のなかに、上杉氏が挙げている「 大丈夫です。絶対大丈夫です 」といった無条件に安全を請けあうような発言は見あたらない。

3月12日午前動画
3月12日午後動画
3月12日午後6時前動画
3月13日午前8時動画
3月13日午前11時動画
3月13日午後3時半動画
3月13日午後4時50分動画
3月13日午後8時動画
3月14日午前5時15分動画
3月14日午前10時55分動画
3月14日午前11時40分動画
3月14日午後0時40分動画
3月14日午後4時15分動画
3月14日午後9時3分動画
3月15日午前5時35分動画
3月15日午前6時42分動画
3月15日午前11時動画
3月15日午後4時20分動画

ちなみに広河隆一氏については朝日がこの日(3月16日)の朝刊に、毎日が3月28日(夕刊)に取りあげている。


読売で掲載される前から「リストを基に」ラジオで話をしていた

音源該当箇所
上杉  結果としてこういう事になった場合どうなるかというと、5キロ、10キロ、20キロ、30キロと増やして、世界中が「ダメだ」と、「コントロールできてない、日本政府は」と。「日本の国はもうまったくこの対応できてないんだ」となってなって避難勧告が出て、「日本から脱出しろ」と、「全部西に行け」と言って、外資系も吉田さん仰ったように、これ全部出てます。大使館も、そして他の機関も、「とにかく東京から逃げろ」ということになって外国人が居なくなっているのは当然です。

上杉氏は読売新聞記事の盗用疑惑について現在、ラジオで読売の発売以前に退避情報を話していたとし、だから盗用は成立しないと言っている。

藤本 :記事の内容は3・11の原発事故で各国政府の対応をまとめた内容が、読売新聞で掲載されたものと上杉さんのメルマガで配信されたものが同一であることから、上杉さんが盗用したと断言しているものですね。ただ、上杉さんは読売で掲載される4日前から リストを基に ラジオで話をして、政治家にも取材をかけていますよね。
上杉 :読売を盗用したというのなら時系列が全くの逆で、タイムマシンでもないと無理な話ですよ。
東スポWeb 2012年10月22日

しかしこの放送では、上杉氏は下記リストにあるような具体的な内容の話をしておらず、したがってこの部分を根拠に「読売より前に リストにある情報 をラジオで話していた」と言うことはできない。しかも、この時点ではリストにある各国の多くはこうした退避勧告をまだ出していない。上杉氏も上記で 原発事故時の避難範囲は世界中で30kmが基本 と述べているように、リストにある情報とは別のことを述べている。

上杉氏は問題のリストを「著者調べ」としているが、下記のように読売記事と言葉遣いから国の並び順まですべて同一である(※記事の元となったメルマガのデータは、読売オンラインの記事と、不要な全角スペースまで同一であった)。

読売新聞2011年3月19日記事 上杉隆『国家の恥』188頁 (※右下に「著者調べ」)

ちなみに前日15日の『小島慶子 キラ☆キラ』でもこのリストにあるような話はしていない(※リストはこの日より後の状況を反映しているので、この時点でリストに基づいた話をするのは不可能である)。

参考:
記事盗用疑惑記事盗用疑惑2対応をめぐる発言の変遷記事盗用疑惑4


「海外メディアを一人でもいいから会見に入れろ」と訴えていた

音源該当箇所
上杉  ところが、記者クラブが、普通だったら世界中から海外メディアが来ていてみんなびっくりしている訳です。私のニューヨーク・タイムズの元のボスも来ていますし今。で「何でまだ官邸に入れないんだ」と、もうね、驚いているというか。
吉田  全員がそこでオープンな形で情報を得るようにしなかったら意味がないじゃないですか。なるべく広く伝えなきゃいけないんだからね。
上杉  記者会の人にひとり訊いたんです、「もういい加減にしてくださいよ」と。そしたら「いや俺たち決めてるんじゃない」と言うけど、もう決めてるんじゃなくて、普通だったら世界中からジャーナリスト来てる、そして色んな報道されてるんだと。日本政府はそれをデマだと言ってるんだったらちゃんと入れてあげて、そこでやるんじゃないかと。敵とか味方関係なくて、みんな世界中から来ているメディア、フリーも何も関係なく、本当のことを被災者とか国民に知らせてあげようとしているのに。
吉田  まして他の国に関係することで十分ある訳ですからね。
上杉  世界中の問題ですから。「なに邪魔してるんだ」と言ったら、「いや入ればいいじゃないか」と。あんた達が邪魔してるんだと。官邸報道室に電話しても同じです。もうくり返し紳士的に、原発発生時から「とにかく入れてください」と。「みんな百人二百人記者が居るんだけど、全員が電話してしまうと迷惑がかかるんで、 私が代表して一本化してます 」と。「お願いします」と言ったら、一昨日わかったんですが、福山官房副長官と話をしたら、「早くお願いしますよ」と言ったら、「え、聞いてないよ」と。

音源該当箇所
上杉  自分たちがデマを流してる癖に「デマをやめましょう」、「フリーランス、ネット、海外メディアは記者会見入れるのやめましょう」って、こんなこの期に及んでそんな馬鹿なことやってる場合かって。
吉田  本当そうだねえ、これねえ。
上杉  僕がずっと言ってきたのは官邸にもそうですし、「私じゃなくていいんだ」ともう。「 誰でもいいから海外メディアの記者を一人入れればいい 」。 それか通信 、ネット。これは被災者も含めてですね、ネットでしか見れない人もいる訳です、ツイッターとかで。テレビなんかないですから被災地。「そのために 一人でもいいから入れてくれ 」と。みんなもう席なんて余ってる訳です官房長官会見、客席〔?〕では空席ですよ。
吉田  ガラガラだよ。
上杉  「一人でいいんだ」と。で今まで入ってたんだから。
吉田  何してんだろう、本当にねえ。
上杉  って言ってるだけなのに入れてくれないと。それを政府の方に言ってもダメだと。こういう情報を出さないといけないし、本当にそれは自分たちのためなんかどうでもいいんですよ。
吉田  既得権みたいなものにずっと執着してるっていう気持ちがまったく理解できないですね。
上杉  口酸っぱく言ってるのはこの事だったんですね。それでも未だ官邸・政府は入れないと。

この前日3月15日放送の『小島慶子 キラ☆キラ』でも、上杉氏は自分が「 海外メディアを誰でもいいから一人入れろ 」と言ってるのに無視されたと述べている。小島氏が「そうなると、海外の記者の方というのは政府の記者会見の場を取材せずに記事を書くことになる訳ですか?」と訊くと、上杉氏は「 そう。みんなそうです今も 。」と答えている(※音源該当箇所)。

官邸HPにある2011年9月の告知によれば、外国記者登録証をもつ海外メディアは官房長官の定例記者会見に参加可能である。これは官房長官会見のオープン化が行われた震災前の2011年2月10日時点でも同様であった。
震災直後の3月16日と18日に、ロイターとジャパン・タイムズの記者は以下のように証言している。

官邸記者会見に海外メディアは排除されていると言うが、うちは普通に出られるのだが。私も何度も出てるし。ジャーナリストと名乗る人が誤った情報を流すのは同業として残念でならない。

志田義寧@ロイターさん (@y_shida) 2011年3月18日

何度かtweetしましたが、海外メディアはもともと官邸の会見に入れます。ブルームバーグ、ロイター、NYT、WSJなどの記者は日本語もできます。RT @amneris84 手話の次は英語発信。まずは会見に外国メディア入れないと RT @dave_spector 特に海外にちゃんとし

Natsuko Fukueさん (@natfukue) 2011年3月16日
上杉氏はこれらの証言に対し「なぜロイターが入れるようになったかをきちんと調べてから発信してください」、「【誤報】経緯と条件をよく調べてから呟いて下さい」と答えているが、ラジオで言っていた話とは論点がずれており、むしろ自らが言っていた、 今でも海外メディアの記者が会見に一人も入れてない という話が事実ではないことを認めるようなツイートになっている。

上杉氏はこの後3月18日、25日には官邸会見に出て枝野氏に質問している(※18日上杉氏の質問箇所25日上杉氏の質問箇所)。にもかかわらず、その後29日には「 官邸の会見にはまだ入れない 」とツイートしている。

官邸の会見にはまだ入れない…(´・_・`) RT @taharash: プルトニウムの件も,東電社長不在の件も,すべて一昨日の上杉隆氏(フリー)の質問が無ければ情報が出てきたか分からない.

上杉隆 / Takashi Uesugiさん (@uesugitakashi) 2011年3月28日
※プルトニウムについては上杉氏より前に他の記者が質問している(※プルトニウムにかんする質問参照)。


原発作業員について「とくに問題もないし安心してください」

音源該当箇所
吉田  4号機、建屋の壁に空いた穴の近くにはですね、使用済み核燃料548本を冷やすために貯蔵したプールがあってですね、蓋がないまま曝された状態であると。3号機の近くでは一般の人の年間被曝限度を大幅に上回る1時間あたり400ミリ・シーベルトの放射線量が検出されたと。緊急時の作業員でも15分間しかその場にいられないと。10時間いると二人に一人が60日以内に亡くなってしまう数値だということなんですよね、これね。
上杉  はい、でも 枝野長官に言わせると、二日前、三日前、昨日までだと「人的な影響はない」と、「とくに問題もないし安心してください」というのが東京電力と日本政府と、そしてテレビ・新聞などの大手メディアの発表だった んですが、違うんだったらすぐに速やかに「誤報でした」と。自分たちが間違えてましたとまず言わないとわかんないんですよ。だからテレビ・新聞もまず最初にですね、緊急謝罪放送をして、これまでの数日間の放送は間違いでしたと、海外メディアは合ってましたと。海外メディアは四日前の発生時からから全部これ言ってるんです。証拠残ってますけど。読んでいただければ分かりますけど。「大変なことになるぞ」と。きちんとやんないと、要するに もう世界に例をみない大暴走が始まると言ってた 、これ暴走ですよ。

3月14日午後9時3分 枝野官房長官会見 (※該当箇所から)
記者  朝日新聞ですが、原発の 現場の作業員の健康被害、被曝というのも出てきている んですが、政府として作業員にたいする何らかの例えば補償ですとか、そういった対応は今後考えられる事はありますでしょうか。

枝野  当然、現場の作業員のみなさんには大変な危険の中で、大変なご苦労を頂いているということに本当に頭の下がる思いでございます。基本的には、安全基準の範囲のなかで作業をしていただいております。ただ、たとえば今日、負傷された方等は、ある一瞬に、一時的に放射線が出ている、放射能を帯びた物質が出ている可能性もあるので、そうした方に対するチェックや健康管理は万全を期して参りたいというふうに思っております。当然のことながら、こうしたことによって負傷された方についてはしっかりと、広い意味での政府の責任として対応していくことが役割・責任であると思っております。

作業員の負傷とその対応について、以上のやり取りが14日の会見でなされており、上杉氏が述べている「 特に問題もないし安心してくださいというのが政府やメディアの昨日までの発表だった 」という話はこの事実と食い違っている。

15日以前に作業員の安全性に焦点をあてた記事じたい少ない。上杉氏の言う「問題もないし安心してください」という論調の記事は見あたらない。
3月15日 朝日新聞 3面



新聞・テレビは全部「冷却に成功しました」とデマを流している

音源該当箇所
吉田  あの、いわゆる、僕もこの日本のメディアが報じないんで、やっぱりツイッターの部分で色々情報を仕入れたりはする訳ですね、自分で努力すると。すると燃料棒っていうのが、これが収まるまでには数か月もしくは数年かかるっていう風に、それが専門家の意見というのがちゃんと載ってる訳です。
上杉  全部そうです。どんなに小さくても止まるまでには一ヶ月かかるわけです。ところが 日本のテレビ・新聞は全部これ「冷却に成功しました」と ・・・
吉田  なんかそんなにわかの安心なんか要らないんだよね。
上杉  「冷却に成功しました」と。結果として嘘じゃないですかこれ。
吉田  そうだねえ。それはね。
上杉   何でそういうことを、平気でデマを流すんだと。 自分たちがデマを流してる癖に「デマをやめましょう」、「フリーランス、ネット、海外メディアは記者会見入れるのやめましょう」って、こんなこの期に及んでそんな馬鹿なことやってる場合かって。

この日の各紙朝刊をみても、上杉氏が言うような、「冷却に成功しました」と事態がすぐにも収束するかのように述べている記事は何処にもみあたらない。


朝日新聞 3月16日 朝刊2面 読売新聞 3月16日 朝刊3面


モニタリングのデータが隠されている。放射性物質飛散の情報は米軍と個人のものだけ

音源該当箇所
上杉  最初に仰ったように現地の生情報が海外のメディアには出てるんですけど、 日本のだけが出てないんですよ 。そちらの方でポイントもありますよね。あの、生データというか発表するところが本来ある筈なんですけど、そういうデータって全く出てないんですかね。
古長谷  いま手元ではちょっとよく分からないですけども、ネット上で或るていど出す方向が見えてきているというような話が聞いて入るんですけど。モニタリングのポイントのデータの話ですよね。私はいま関心が高まってる1号にしても3号にしても2号にしても炉の周辺で本来コントロール室・制御室の中でモニタリングしているデータを民間でも外から見えるような形で、リアルタイムで圧力や温度がどう変化してるかっていうのを見えるようにすることが一番の安心につながると思うし、逆に一番それを民間が関知して避難行動に繋げるっていうのが現実的だと思いますんで。
吉田  そういう状況に速やかにすべきですよね。
上杉  いま 生データに近いのは個人の方がですね、ガイガーカウンターでそれぞれネットに発表してるのが民間で個人なんですよ。さらにあとアメリカ軍の生データしかないんです 。不思議なのは政府とか出さないで、東電出さないで、アメリカのデータと個人のデータなんです。
吉田  おかしいですよ。
上杉  出せないことはないんですよ。
吉田  おかしい。やればできるはずでしょ。
上杉   東京に来たのも、これ微量ですよ、来たのも、じつは民間の人が「来てるぞ来てるぞ」と言って、アメリカ軍が出してそれで初めて反応したんです。だからもう本当にこれ以上隠さないでと思うんですよ 。
吉田  本当そうだねえ。
〔中略〕
吉田  とにかくいま古長谷さんが言っていた様に、生データみたいな数値的なものでもいいですから、やっぱり東京電力、それから管内閣、政府で、やっぱりそういう生データを提示するという出来るんであれば、出来るわけですよね。それを国民に常時提示するような形を早く取ってほしいですよね。
上杉  それが情報公開なんですよ。これを訴えたくても言えない。そして今これは古長谷さんが、いわき市は10マイクロシーベルトと言いましたけど、現時点で。そうすると「あ、安心だな」と、何もないけど生データが出ることによって「あ、大丈夫だ」と。こうやって安心なんですよ。それが余計なデマとかパニックを防ぐことになるんです。だから情報を隠して、フリーとか入ると情報全部出ちゃうからパニックになっちゃうんじゃなくて、全部情報出すからパニックにならないんですよ。ここを政府と記者クラブ・メディアと東京電力は間違いをしている。とにかく全部出すことしかないんです。
吉田  本当そうだねえ。

上杉氏は、 放射線の観測データが隠されていて、個人が測ったものか米軍からの情報しか出てこない と述べているが、この日の各紙では関東および全国で観測された数値が報じられている。

3月16日 日経新聞 2面 3月16日 読売新聞 30面

それ以前にも各地でのモニタリングの観測値は各紙で報じられている。

3月15日朝日新聞夕刊1面 3月15日 毎日新聞 夕刊3面


上杉氏はこれ以後も「国内メディアでは放射性物質の拡散は報じられなかった」と言い続けており、2012年11月の森達也氏との対談本でも「 放射能の拡散や、それによる汚染の広がりなどに関する情報は、いまだに出てきません。 」(『誰がこの国を壊すのか』57頁)と述べている。

※放射性物質の拡散にかんする情報は事故直後から継続的に報じられている(放射能をめぐる報道を参照)


更新
2013.04.02 ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト記事キャプチャを追加
2013.04.03 読売新聞のMP観測値記事を追加、朝日15日記事キャプチャを追加

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