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壮大な夢の果てに
豊川工陸上部の体罰問題を考える


(5)私心なき指導者 東三河の高校陸上界を底上げ

 「今回の問題を、体罰事件としてだけ捉えてほしくない」。長年、東三河の公立高校で陸上競技の指導に携わった関係者は、強い口調で訴える。
 関係者は、「体罰問題は、あえてカッコに入れさせてもらうが」と前置きした上で、豊川工陸上部の顧問教諭(50)の功績を次のように評価する。
 東三河の高校陸上界は、彼が豊川工の顧問を務めるようになってから強くなった。長距離だけではない。短距離も、跳躍も、投てきもすべての部門でレベルアップした。
 なぜ、強くなったのか。1つは、彼が自分の学校だけでなく、地域全体の指導に目を向けてくれたからだ。
 たとえば、毎年春先に行う東三河地区高校生の合同合宿。彼は他校の生徒に長距離の実技指導をするだけでなく、宿舎での講話で高い志を持つことや、支えてくれる父母らに感謝することの大切さを説いた。
 「何より」と続ける。同じ年代、豊川工の部員たちの態度が他校の高校生の心を打った。豊川工の部員たちは率先して食器の片づけや清掃を行い、ミーティングでは全員の意見を汲み上げられるように段取りを整え、積極的に発言した。
 「競技力だけでなく、人間性もここまで高められるものなのか。他校の部員は、この合宿で大きく目を開いた。これが東三河の高校陸上界全体の底上げにつながった」と感謝する。
 「それだけではない。10月の国体への選手派遣もそうだ。11月の県高校駅伝を優先して、本来なら選手を出したくないはずだが、彼は気持ちよく派遣に同意した。最悪の場合、選手が体調を崩して県高校駅伝で敗れるかもしれない。それでも、彼は陸上界全体を考えて同意した。素晴らしい指導者、教育者だ」と高く評価する。
 今回の体罰事件で、「教諭は県大会14連覇で有頂天になり、お山の大将なった」の悪評も聞かれるが、この関係者は「絶対に違う」と断言する。 
 「彼は卑しい私心など、これぽっちも持っていない」と擁護する。それなら、なぜ教諭は体罰をふるったのか。素晴らしい指導力と理不尽な体罰、この組み合わせに誰もが、理由を探しても、見つけられずにいる。

東愛知新聞社では「体罰問題」についてのご意見を募集しています。
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豊川工陸上部の体罰問題を考える メニューへ 2013年2月8日紙面より抜粋



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