「球春」がやってきたタイミングに、野球界に大きなニュースが飛び込んできた。ミスタープロ野球こと長嶋茂雄さん、ゴジラこと松井秀喜さんの2人への国民栄誉賞の授与である。師弟のダブル受賞となる
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一報を耳にしたとき、なぜこのタイミングに―との思いも湧いた。物事を斜めに見る性分からだ。頭をよぎったのが、元横綱大鵬、故納谷幸喜さんへの栄誉賞の授与だった。生前ではなかったため、タイミングを失したとの指摘も数多く政府に寄せられた
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では前々から栄誉賞最有力候補の長嶋さんは? 納谷さんでの反省から、元気なうちに贈ろう―となってもおかしくない。欲しいのはきっかけだ。松井さんの引退セレモニーが5月5日に東京ドームであると漏れ聞き、ダブル授与がひらめいたのではないか
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勝手に想像したけれど、真相は違うようだ。発案者は安倍晋三首相。当初は引退を表明した松井さんへの授与だったという。米大リーグで活躍した選手への授与で、就任後の訪米に向け、日米友好をアピールする狙いがあったとか。思惑の産物だったのか
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サッカー女子日本代表の「なでしこジャパン」の受賞に、政権の話題づくりとの見方があったのを思い出す。政治と絡めると愉快でなくなるから、よそう。師弟の受賞がエープリルフールのうそでなかったことを喜び、これまでの活躍と努力を心からたたえたい。