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国際
【新帝国時代】第3部 プロパガンダ戦争(3)「田中上奏文」の悪夢再び
偽書と認識
『日中歴史認識』(服部龍二著)によると、日本外務省は満州事変前から中国国民政府外交部に「田中上奏文」が事実無根として取り締まりを要請。これに応じて中国は昭和5(1930)年4月12日、機関紙『中央日報』で「田中上奏文」の誤りを報じている。中国は当初から「田中上奏文」を偽書と認識しながら「宣伝戦」を展開、国際社会はそれを信じたのである。
手嶋龍一慶応義塾大学大学院教授(インテリジェンス論)は「田中上奏文は中国側の贋作だが、日本側の機密文書も織り込んだ実に巧みな工作だった」と指摘。その上で「いま反ファシズム戦争を戦った国々を糾合しようと尖閣カードを使って宣伝戦を仕掛けている。これに対抗するには、戦後の日本が光り輝く民主主義国であることを示し、同じ価値観を分かち合う米豪印と結束を固める新たな外交戦略を打ち出すべきだ」と強調する。
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【用語解説】田中上奏文
昭和2年、日本政府が対中政策を検討した「東方会議」を受け、田中義一首相が天皇に上奏したとされる文書。中国語で大陸における政策が具体的に記されている。英語版「タナカ・メモリアル」には日本が最終的に米国を侵略すると書かれていたため、米国で強い反発を呼んだ。現在では国際的にも偽書であることが定説になっている。
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