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国際
【新帝国時代】第3部 プロパガンダ戦争(3)「田中上奏文」の悪夢再び
10種類の中国語版が出版され、組織的に大陸各地で流布されたほか、英語版「タナカ・メモリアル」が昭和6(1931)年、上海の英語雑誌『チャイナ・クリティク』に掲載され、同誌から転載された小冊子がアメリカ、欧州、東南アジアに配布された。
ソ連に本部のあるコミンテルンも同年、雑誌『コミュニスト・インターナショナル』に全文掲載し、ロシア語、ドイツ語、フランス語で発行。「世界征服を目指す日本」とのイメージを広めた。
満州事変後の昭和7年、中国はジュネーブで開催された国際連盟理事会で「田中上奏文」を持ち出し、そのシナリオ通りに満州で侵略が起きていると訴えた。
日本の首席代表、松岡洋右は「田中上奏文」が偽物であり、本物である証拠を提出するよう求めた。中国代表の顧維鈞は、「田中上奏文」にある政策は、日本が進めてきた現実の政策そのままであると主張。そして「自国のみならず世界の問題」と論じた。
中国は日本が世界征服をもくろんでいると強調することで、国際世論に日本の不当性を訴えたのである。
松岡が真贋(しんがん)論争に持ち込んだため、逆に中国の巧みな宣伝により、大陸での日本軍の行動がクローズアップされた。世界はわかりやすい言葉に反応し流れを作る。論戦を制した中国は各国の支持を得たが、日本は常任理事国の地位を捨て国際連盟を脱退。孤立への道を余儀なくされる。やがて日中戦争から太平洋戦争に突入する。
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