国際激流と日本

米国上院が日本の核武装を論じた

北朝鮮の核兵器開発への対抗策として浮上

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 どんな趣旨にせよ、日本の核武装などというシナリオ自体、日本で猛烈な反発が起きることは必至だ。世界で唯一の核兵器の犠牲国という歴史の重みは特記されるべきだろう。非核三原則も生きており、国民の多数派から支持されている。だから現実の国家安全保障という観点からでも、日本の核武装などという言葉には激しい非難が沸くであろう。仮説のまた仮説であっても、日本が核兵器を持つという想定は、それを表明するだけでも犯罪視されかねない。

 ところがその一方、北朝鮮というすぐ近くの無法国家が日本や米国への敵視政策を取りながら、核弾頭ミサイルの開発へと驀進している。米国の政府や議会がその核兵器の無法国家への拡散を必死で阻止しようとしながら思うにまかせず、その事態が深刻になる中で、北朝鮮の核武装への阻止の手段、あるいは抑止の手段として日本の核武装という想定を語る。これまた無視のできない現実なのである。

 北朝鮮の核武装という事態が米国にそれほどの危機感を生んでいることの証左でもある。米側のそうした現実は日本側でいくら反発を覚えるにしても、自国の安全保障政策に絡んで実際に起きている現象として知っておくべきだろう。北朝鮮の核兵器開発は米国にも東アジアにも、そして日米関係にもそれほど巨大なインパクトを投げ始めたということでもある。

東アジア地域で核保有国が続々と出てくる?

 さて、それでは実際に日本の核武装はこの上院公聴会でどのように論じられたのか。2時間半ほどにわたったこの公聴会の模様からその関連部分を拾い上げて報告しよう。

 まず公聴会の冒頭に近い部分で上院外交委員長のロバート・メネンデズ議員(民主党)が日本に言及した。

 「私たちは最近、政権指導者の交代があった日本についても、金正恩政権にどう対処するか、その効果的なアプローチをともに考える必要があります」

 メネンデズ委員長の冒頭発言の後に登場した最初の証人はオバマ政権国務省のグリン・デービース北朝鮮担当特別代表だった。そのデービース代表に委員会側のボブ・コーカー議員が質問する。

 「北朝鮮の核問題では、米国の同盟国である日本と韓国が米国の抑止への信頼を崩さないようにすることが重要ですが、あなたも承知のように、米国はいま核戦力の近代化を進めてはいません。だから日本などが米国の核抑止による保護への懸念を抱くとは思いませんか」

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