三陸鉄道:人口減少、赤字…前途は多難
毎日新聞 2013年04月03日 11時48分(最終更新 04月03日 13時17分)
三陸鉄道南リアス線は3日、2年ぶりに岩手県大船渡市で運行を再開したが、前途は多難だ。復旧は一部で、震災による人口減少がローカル線の赤字に拍車をかける。戸田公明市長らは「地元だけでなく、観光客や鉄道ファンにも乗ってもらわないと経営環境はより厳しくなる」と話す。
市によると、震災前に4万人を超えていた人口は3万9000人余に減少。三陸鉄道の株主である県は円安による燃料高も考慮し、今年度は2億4000万円の赤字を見込む。
影響を受けるのが通学生だ。県立高3年の岩城圭祐さん(17)の母裕子さん(48)は「鉄道が走っても、私が車で息子を送迎しなければ」と残念がる。
最寄りの三陸駅で午前7時11分の上り始発に乗っても学校近くの盛(さかり)駅に着くのは7時41分。7時半に始まる野球部の「朝練習」に間に合わない。学校では進学希望者のための「課外授業」も同じ時刻に始まる。震災前は午前7時前には盛に着いていた。
三陸鉄道も保護者らの不満は承知だが「部分復旧ゆえに希望のダイヤが組めない」と担当者。整備と安全点検の基地が現時点の終着点になっている吉浜駅になく、基地設置の投資余力もないためだという。車両は毎晩、基地がある盛駅に戻り、乗客が見込めない朝の下りを吉浜駅へ走らせたうえで上りを運行せざるを得ない。現在より早い時間に始発を組めない。「釜石まで全面復旧すれば応えられるかも……」と担当者。
通勤通学者が震災前の3分の1に減ると見込む三陸鉄道は「せめて帰宅用に」と片道専用の定期券を発行。社員たちもこの2年、車で被災地を案内するツアーなど運行以外の業務を続けた。「運行再開が待ち遠しかった」との気持ちは強い。今後は、多彩な観光プランも設けるなど、経営改善に努める。
【根本太一、円谷美晶】