2013-03-29 18:51:24

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テーマ:ブログ

 思わぬどたばたもあり遅くなりましたが、どうお伝えしようか。
 かなり悩みました。
 
 たとえ、黙っていてもロクでもない誤解や憶測が広まったりするのですから、やはり自分の口から一度、お伝えしておいたほうがいいと思いました。

 ただ、話す範囲もまた悩みます。
 長くなりそうですが、お話をする上で最低限の脈絡には触れておきたいと思います。
 
 思えば、作家としてデビューが決まったのとほぼ同時とも言える早い段階で、私は盛大に躓いていました。

 愚直にわざわざ許可をとってもいますので、ぶっちゃければ、最初に担当となった方が、編集者としても職業人としても社会人としてもかなり問題があったのです。
 本業を疎かにしても、外向けの仕事を優先していたせいで世間受けは良かったみたいですが、人目のないところでは、いわゆる暴君タイプでした。機嫌が悪くなると態度や仕事ぶりに途端に露骨に出て、「社会人としていかがなものか」といった振る舞いは一度や二度では済みません。しかも、大半は本人が原因だったりします。

 これについて、編集部には早くから相談していたのですが、とかく冷淡でした。
「他の作家とはちゃんとやっている。もし、本人に問題があるならば、他でもそうなるはずだ」
 初期など、まるでお前にこそ原因があると言わんばかりでした。あれこれ明らかになった今となっては何をいわんやですけど。

 この過程でも諸々あり、ある大きな問題で編集部より意見を求められて、とある事情もあって私は切実な想いで自分の意見を繰り返し訴えたのですが、結果的に度々の相談事とともにそれは全く活かされず、むしろ、より望まぬ形となって報われました。

 それを経て、上述の最初の反応や、訴えがどう活かされたかも含めて事情が全く見えなかったこともあり、説明を求めて編集部より「了解した」との回答を頂いていたのですが、いざ説明となった段でも心無い対応は続きました。

 最初にジャブをもらってから、本題の事情説明となったのですが、
「(最初の編集者と上手く行かなかった)原因は、お前にある」
 ええっ!
 イの一番にこちらですか。
 しかも、その事柄は原因(初代担当の問題ある言動)があってのリアクションではないですか、と反論したら
「事情はよく知らないけど」
 ええっ!
 事情をよく知らないで、部下でもない社外の人間を批判したのですか。
 ええっ! はもう一つありました。
 問題の初代担当は、こちらの言葉はダイレクトに上に伝えても、自分に不都合な事柄は(恐らく)一切、報告してないのが、この段階でさえ明らかになっていました。一方で、この方が編集部の窓口となっていたので、私は早い段階から相談をしていたのです。だから、少なくとも事実そのものは把握されていたのです。


 これに関しては他にも多々ありましたが、実際の創作面においても厄介はふんだんにありました。
 当初から発生してましたが、最大の点は、一作目と二作目の方針です。
 これらは言うまでもなく、初代担当が主導権を発揮した結果です。

「終わり方が綺麗なので、この作品は『一先ず』終わりにしましょう」
 受賞の知らせを受けたその年のある日、唐突にこう伝えられたのですが、私は何ら共感も賛同もできませんでした。少なくとも、「シリーズを閉じたくなるほど綺麗」などとは思えません。
「電撃では異色作なので、結果が分かるまでの二作目はうちのテイストで」 
 応じたのは、この点について、反論の材料がなかったのです。
 また、一作目の終わりとする方針が仮置きな言い方だったこと、それ以上に、上述の初代担当の性格がありましたから、長いこと一緒にやっていくのだからと、その関係性を重視したこと、何より、方針に従うに当たって、初代担当が幾つか約束事をしてきたからです。結果論で言えば、この約束はなかったことにされました。序ながら、この約束の存在と違反も、編集部には(こちらが訴えるまで)自ら報告していなかったようです。おかげで、後日、「約束が違うではないか」と私が反発をしたことについて、長らく我がままを言っている扱いをされる破目に陥りました。約束してきた当人からでさえもです……。
 
 二作目の創作に関しても、問題続出でした。
 事前に不馴れと戸惑いは何度も伝えてましたが、元より右も左も分からない段階での、当時も首を傾げ、今振り返っても疑問だらけの「私の経験則」に基づいた「私の方針、私の工程、私の手順、私の考える展開や物語構成」といった初代担当のやり方に、取り組んで一ヶ月もせずにこちらは根を上げました。おかげで以後、時間と労力と気力を絶望的に消費しながら、全ての機会で、『方針の根本は言うに及ばず、あらゆる角度において初代担当が一人で思い描いた設計図に、何かしらの変更の必要性を訴える』苦闘をする羽目に陥ります。
 後年(決して『後日』などという生易しい単位ではなく)、初代担当の問題行動と編集部の一連の対応について、正式に謝罪を頂いたのですが、その席で、こちらの異論を封じる際や、自分の考えを押し付ける際に「私の経験則」を常套句に用いるなど、とかくキャリアを鼻にかけるところがあったこの初代担当が実は「一から作家を担当するのは実質、初めてだった」と知らされて、私は口から魂が出そうになりました。勘弁してください。


 勿論、当時の私はそんな真相など知りません。
 繰り返し訴えながらも、実態を無視され続けた指示にのたうちながら、時間に関するリスクとの兼ね合いと展望についての言及さえ何らなかったこともあって、結果的に、悲愴な決意で二作目を仕上げるに至りました。
 その直後に、初代担当より「三作目である二作目の二巻のスケジュールを決めたい」と連絡があり、かなり長いやり取りが生じました。

 といっても、


 「これだけ苦労した作品なのに、何故、次もそれが分かっている題材に取り組む必要があるのか」
 と私がそれ以前にも繰り返し訴えていた状態も踏まえて切実に改めて口にしたところ、
 初代担当は「シリーズで巻を重ねるのが、ライトノベルの売り方なんだ」
 との理由が延々と電話口で繰り返されただけです。
 
 当然ながら真っ当な疑問が浮かびます。
「シリーズで巻を重ねるのがライトノベルの売り方で、そこまで重要なら、デビュー作の二巻出せばいいんじゃないの?」
 ところが、初代担当は不可解なまでに、これについて一言たりとも触れませんでした。
 しかも、この時点で既に「異色のデビュー作のおおよその結果」は出ていたのです(ですから、3作目のこの指示は明確な約束違反でもありました)。

 しばらく後になっても「電撃は中高生の男子が主な顧客層なのだから、それを意識して」と初代担当は当時の自身の判断について揺るがぬ正当性を繰り返していました。
 初代担当の判断の変更を促したいとの悲痛な思いもあって、私は、デビュー作出版後に世の反応とそれに対する担当の見解も頻りに問い合わせて、初代担当は自ら肯定的な評価を回答していたのです。ところが、そこに整合性をつけようとの考えは、最後まで不思議なまでに皆無でした。
 この頑迷さが、マニュアルに忠実であろうとする思考なのか、自らが描いた作家像に、初めて担当するという新人作家をはめ込むことに囚われていたためなのか、私には分かりません。
 私の伝え方が悪いのかと相当に悩んだりもしました。
 原因はこちらにのみにあると言わんばかりの当時の編集部の物言いに、ある時など、さすがに堪り兼ねて、「どう伝えれば、あの人の考えを変えさせることができたのか、(私よりずっと長い時間一緒にいるのだから)是非、教えて欲しい!」と訴えたこともあります。答えは得られませんでした。これについては、話に聞いた初代担当の以後の振る舞いなど考えれば、さもありなんではありますけど。
 ともあれ「編集の仕事を分かっておらず、作家と仕事をする適性がなかった」との評には深く頷くしかありません。

 上述している担当者の問題ある言動と編集部の対応は、言うまでもなくほぼ同時発生だったのですが、以後も、混乱と混迷に途方もない拍車がかかります。

 
 当初、初代担当の問題行動もさることながら、この編集方針や手法も、編集部に訴えれば、いかにおかしいか明らかになると当然のごとく私は思っていました。
 ところが、「結果的に上手くいかなかったのは悪かった」とは言われても、どちらに対しても、個別の事柄になると、「問題ない」とか「悪いとは思わない」といった反応にばかり直面したのです。
 
 10巻構想であろうと、途中で売れないとなれば、打ち切り。
 あるいは10巻構想でも売れ続けたのなら、以後も続けよう。
 といった判断を、編集者がするのは当然でしょう。

 しかしながら、そんな『売り上げとは無縁』のところで、
 編集者が一方的にこの作品は単発で終わらせよう、とか、この作品はシリーズ化にして続きを書け。
 って(特に前者について)主導権を発揮するのは、「間違ってませんか?」
 とこの点についても俎上に載せたのですが、「間違ってない」と言われてしまったのです。
  
 他にも色々と疑問がありました。
「商業的にも成功している受賞作を好意的に受け止めてくれた読者は、二作目の作風を期待するんですか?」
「デビュー作を読んで、そちらは私に萌えなどを書くことを、期待したんですか?」
「受賞するに至った作風を否定した上で、私の何を評価してくれているんですか?」

 私は「こういう作品(や題材)でなければ書きたくない」みたいな信念めいたものはありません。
 問いへの答えに絶対の正解はないでしょうが、かといって、答えるのが困難な問いでもないはずです。
 だから、「デビュー作読んで、可愛い幼女(or熱くて厚い男など)を書いてくれると思った。そんな作品を自分は押していきたい」といった突飛なことでもいいと思うのです。
 実際に書く人間にちゃんと向き合ってくれて、それで説得力のある言葉を頂けて、責任を負って頂けるのなら。それなら、たとえ提案としてあまりに疑問があっても、建設的な話し合いはできます。
 ところが、「電撃の主な顧客層は……」といった類を除けば、一度として誰からもまともな答えをもらったことはありません。
「シリーズにするか閉じるか、何をどう書くか編集者が決めてきて、それで失敗したら作家の責任ってのはおかしくないですか?」
 といった、もっとドギツイことも繰り返し尋ねたりもしました。

 後に編集部の別の方から「こういう(最初の担当の不品行とそれによる不始末に関する)話より、創作のための建設的な話をしよう」と言われたことがあるのですが、上述の問いかけに答えを求めようとするのは、他の方からすれば、建設的とはならないのでしょうか??

 一方で、編集部の窓口となった方からは、デビュー作について「年齢層が高めで、異世界もので、電撃に合わないと思った」と一作目が出た後になっても、とてもネガティブに言われました。
 
 そこが評価されて受賞し、世間様にもまずまずの結果となったのでは、と売れた結果そのものに言及しても、冷淡な反応は変わりませんでした。
 私は戸惑うばかりになりながら
 「デビュー作の二巻駄目なんですか?」
 と尋ねたのですが、
 「あの終わらせ方でどうやって続きを書くんだ?」
 冷ややかに返されてしまいました。
 
 あの、書いたの私なんですが……。
 回答に呆然しました。
 作品を満足して終わらせた作家が続編を望む編集者への台詞なら分かりますが、逆は普通ないんじゃないかと思うのは、書き手の傲慢なんでしょうか……?
 こうして、「編集者の一方的な判断で、作品の未来を閉じられた」身としては、以後、下手に綺麗な(とされる)形の構成にしてしまうことに忌避感を覚えました。緻密な構成や設定をしても、不可解な理由で終わらせたらたまりません。

「作家が『売り上げを根拠に続編を訴えた』のに対して、編集側が売り上げとは無縁の理由で、否定を重ねる」
 今振り返れば、この当時、ライトノベル分野ではなおのこと、極めて奇怪な体験をしていたのだと思います。


 衝撃を受けながらも
「じゃあ、どんなのならいいのか」と聞いたら「ボーイミーツガール」と言われたので、
 では、と後日、異世界ものだけど、ボーイミーツガールの作品を提出したら、
「異世界物は電撃的じゃない」
 ことを理由の一つに却下されまして、仰け反りました。


 この直後というかまさしくこれが原因で、何度か行われたうちの編集側との話し合いの一つが行われました。
 その際に、「改めてお前から事情を説明される必要はない」と明言されるぐらいには事情を把握された上で、同席された仕事熱心な方から、
「自分のやり方で書いていい、好きな題材で書いてもいい、と(こちらは)言っているのに、何が不満なんだ?」
 と尋ねてこられて、私は絶句しました。
 当時は率直に明かせないとある根本的な事情の存在を想像されなかったのは無理がないとしても、上述の出来事を経てのこの発言です(「こういう話……」も同じ席で同じ方からの発言です……)。
 最初の担当の件のみならず、創作の面においても、事実として、編集部のどなたからもこちらの訴えに何一つとして賛同を得られませんでした。
 おかげで、私に対して行われたことは、担当者個人の勝手な行動なのか、部署内で合意を得ているのか、組織の基本的な感覚や方針なのか、判別が著しく困難で、これだけでも、甚だ混乱することになりました。

 それに加えて、実際の創作活動においても、評価されたはずの部分が直接に裁定する側から真っ向否定され、代わりの指針も展望も具体的に提示されなければ、こちらの簡易な問いへの明快な答えもなく、なお否定だけ明確にされたのだから、かなり混乱します。 

 売れなかったのであれば、己の力不足を反省するしかありません。
 違うアプローチも必要になってくるでしょう。 
 でも、続刊を出すのに支障がないほど売れていて、それでいて編集側から否定されたのです。

 これで混乱する私が馬鹿なのかなあ、と悩んだこともあるのですが、後になって、ある案件で「そうではなく、もっと~な感じで違うふうに」と意趣返しのつもりもなく伝えたら、編集側から「では具体例を出してくれ」と言われたので、状況から人間として無理のない反応みたいです。編集部の方も、自分がいざその立場になってみるとその時は考えて頂けるみたいです……。
 
 こういった背景から、その次の作品は
「とにもかくにも『曖昧』、『ボーイミーツガール』は不可欠な要件、異世界はだめとのことで、『和物』とされる範疇で」
 となりました。


「立ち上げたばかりで、コンセプトがまだはっきりしてない」

 とのことだったので、「とにかく手近で枠が空いているなら」と、そもそもの創作概要と設立目的が明らかに乖離したレーベルに、完成原稿を突撃させたのは、当時はとある絶望的な事情があったがためにやむを得ないながらも、それでも乱暴な選択だったなあとの反省は、振り返るとあったりはします。 

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