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「祭り」の標的となった中日新聞 記事自体に問題はなかったか?

小島一彦(中日新聞社編集局編集委員)

2013年04月03日

 「ネトウヨ」。最近よく耳にする言葉だ。インターネット上の掲示板などで勇ましい右翼的発言をする、あるいはそれを支持する人たちを「ネット右翼」といい、略して「ネトウヨ」。最初は熱帯魚の一種かなと勘違いしたが、同僚に聞いてその意味を知ったのは半年以上前のことだ。

 実際、「ネトウヨ」とはどんな人たちなのだろう。街中を練り歩く右翼団体の街宣車に乗っている迷彩服の人たちとも違うような気もする。ネット上のバーチャルな空間で、それも匿名だからこそ存在するのかもしれない。

 定義はともかく、その「ネトウヨ」に中日新聞は最近、相次いで標的にされた。昨年暮れに自民党が政権に返り咲き、安倍晋三氏が再度首相の座に就いた。新政権が誕生すると、東京新聞(中日新聞東京本社)特報部が取材する恒例の記事に新内閣の命名がある。「安倍新内閣 名付ければ」が載ったのは12月27日付朝刊で、名古屋本社発行の中日新聞にも同日掲載された。

 毎日見開きで掲載される特報面は東京新聞のいわば?売り?のひとつだが、中日新聞ではこのうちメーン記事を独自に組み直して同日または少し後に掲載している。従って東京の紙面と名古屋本社発行の紙面では、レイアウトがかなり違う。今回、「ネトウヨ」の種になったのは中日新聞のほうだった。

 標的となったその記事は、1ページの上8段をすべて使い、安倍首相が笑顔で手を振っている全身像の写真をコラージュで中央に配置し、その周りに、命名案を見出しというより正札のように貼り付けた。「逆戻り」「そつなくまとめてみました」「福島圧殺」「まぐれ敗者復活」「改憲」「学力低下」「ネトウヨ」「厚化粧」「極右はしゃぎすぎ」「国防軍オタク」―。

 一読して、よくこれだけコキ下ろしたものだ、と思うのは私だけではないだろう。少しは評価する命名はないの?と首をかしげてしまった。だが、本文を読むと、その理由は明快だ。作家の高村薫や宮崎学、金子勝・慶応大教授、大田昌秀元沖縄県知事、政治評論家の森田実、エッセイストの北原みのり、國分功一郎・高崎経済大准教授ら各氏のほか脱原発団体の代表などもいる。いずれも脱原発、反自民、護憲の色彩が強い人たちばかりだから、当然といえば当然の紙面だろう。

 この記事が出ると、すぐにネット上で?祭り?が始まった。記事の写真が掲載され、あちこちの掲示板で「反日新聞」「マスゴミ新聞」などの書き込みが拡散した。と同時に編集局読者センターには苦情の電話とメール、ファクスが殺到した。

 「頭にきた。新聞を破り捨てた。購読をやめる」(名古屋市、30代男性)、「新聞によるいじめだ」(津市、40代女性)、「批判の限度を超えている」(京都、50代女性)など、電話138件、メール・ファクス437件もの声が寄せられた。

 一本の記事でこれだけ反応が大きかったのは近年まれだという。なかには・・・・・続きを読む

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