2012年06月28日
TechTargetより
データの急増によりバックアップ時間が長期化し、万一のデータリカバリにも支障が出るようになってきた。そんな中、イメージバックアップ方式でシステムとデータを丸ごと保護する「ShadowProtect」が注目されている。
注目のイメージバックアップ方式を採用したShadowProtect
データ増大によるバックアップ/リストア時間の長期化や、ダウンタイム時間の延長に効果があると注目されているのが、冒頭に述べたイメージバックアップという技術だ。イメージバックアップとは、ファイル単位ではなくHDDのセクタ(トラック上の記憶領域)単位でバックアップを行うため、OS、アプリケーション、データを丸ごとコピーできリストアも容易。データとシステムの領域を全て対象にすることで復旧手順を短縮し、ダウンタイムとリカバリタイムを大幅に削減するDRの手法として非常に有効とされている。
その技術を採用しているのが、バックアップソリューション「ShadowProtect 4」(以下、ShadowProtect)だ。開発元は米国のStorageCraft Technology Corporation(以下、StorageCraft)である。StorageCraftはさまざまなソフトウェアに技術供与をしており、イメージバックアップのパイオニア的な存在だ。日本ではイメージバックアップの普及に努めてきたラネクシーが総代理店としてShadowProtectを販売している。
ShadowProtectによるバックアップとリカバリの仕組みは、まずバックアップ対象となるサーバのC/Dドライブのパーティション全体を丸ごと圧縮してイメージ化する。完全バックアップのみならず、差分バックアップや増分バックアップを自由に選択してデータ保存先にバックアップできる。保存先はLAN上のサーバの他、NAS、SAN、iSCSIのストレージ、外付けHDD、USBメモリ、光学メディアなど、驚くほど多様なシステムやデバイスに対応しているのが特徴だ。
また、バックアップイメージを対象サーバに適用すると、わずか数分でリカバリが可能な他、ShadowProtectに標準で搭載されているHIR(Hardware Independent Restore)機能を活用することで、バックアップイメージをNIC(ネットワークカード)やHBA(Host Bus Adapter)が異なるサーバにもリカバリすることができる。障害発生時に全く同スペックのマシンが用意できない場合に、スペックや構成の異なるサーバに緊急避難できる安心感は大きい。
さらに、ShadowProtectは同じイメージバックアップツールの中でもバックアップ/リカバリの速度が他を圧倒する。業界でメジャーな他社イメージバックアップ製品のサーバ機を想定したベンチマークテストと比較して、バックアップ/リストアとも倍以上のスピードで処理できる結果となった(図1)。速度のアドバンテージはダウンタイムの削減に直結するため、将来データが増大しても対応できる重要な要素だ。
図1 サーバ機を想定した場合のShadowProtectと他社イメージバックアップツールとの速度比較。顕著な差が見られた
ちなみに、バックアップイメージを仮想環境上のゲストとしてリカバリするP2Vも可能だ。VMware ESX/ESXi、Hyper-V、Citrix XenServer、Oracle VM VirtualBoxに対応する。
障害発生時に仮想サーバとして障害復旧に備えるHSR
そして、ShadowProtectのDR機能強化を目的に用意されたアドオン製品が「ShadowControl ImageManager 5」(以下、SCIM)である。SCIMは、バックアップの保存イメージをオンサイト(ローカルサイト)のストレージに保存し、そのイメージバックアップファイルを専用線またはインターネット経由でオフサイト(遠隔地)へレプリケートする。これにより、バックアップをより確実かつ安全に管理し、万一の災害発生時に備えることができる。
また、HDD容量を節約するバックアップファイルの自動統合機能や、バックアップイメージの整合性を定期的に確認する自動ベリファイ機能、バックアップイメージの状況を確認できる電子メール通知機能などもサポートしている。
さらに、SCIMの機能の1つで、仮想マシンに自動スタンバイを用意する「HSR」(HeadStart Restore)も画期的な仕組みを提供する。ShadowProtectで作成したバックアップイメージをストレージに保存すると、すぐさま増分ファイルを取りながらVMware ESXi上にリカバリしておき、万一障害が発生した場合は仮想サーバとして障害復旧に備える機能だ。継続的にサーバのバックアップの更新、リストアがされる状態を作ることで、数時間~数日かかっていたテラバイトクラスのデータを持つサーバも、わずか数分で復旧作業が完了するという。
HSRはジョブ単位課金の有償アドオンになるが、冗長化システムを組むほどのコストは掛からず、リカバリにかかる時間を大幅に削減しダウンタイムを最小限に抑えることが可能になる。
その他、有償サービスとしては、超高速オフサイトレプリケーション「ShadowStream」や、LANまたはWANベースのレプリケーション、intelligentFTPによるオフサイトレプリケーションを用意。最適な方法を選択することで、整合性のとれたファイルをまとめて高速転送できる(図2)。
図2 SCIMのシステム構成例。オンサイトのサーバ2台のデータをネットワーク内のWindowsストレージに増分バックアップした後に、そのレプリケーションを独自プロトコルのShadowStreamで遠隔地のオフサイトに高速転送し二重化。さらにオフサイトで仮想マシンにHSRで自動スタンバイを用意する
図2の構成なら、サーバ用バックアップソフトであるShadowProtect 4 Server の費用、レプリケーションをするShadowStream 2ジョブ、仮想環境への自動スタンバイをするHSR 2ジョブの合計金額で40万円を切る。Windowsのネットワーク共有より数倍高速で、専用線を使うより格段に低コストだ(表1)。
用途 | 製品名 | 単価 | 数量 | 価格 |
サーバ用バックアップソフト | ShadowProtect 4 Server | 11万4500円 | 2 | 22万9000円 |
---|---|---|---|---|
レプリケーション | ShadowStream -2 -Job | 6万8800円 | 1 | 6万8800円 |
仮想環境への自動スタンバイ | HSR -2 -Job | 6万8000円 | 1 | 6万8000円 |
合計 | 36万6600円 |
ライセンスには年間保守(初年度1年)、メディアパック1本が含まれる
連続増分バックアップのリスクを回避しリカバリの迅速化と保護を両立
通常、バックアップデータは巨大なため、レプリケーションは非常に時間がかかり、頻度を含めて困難な作業になりがちだ。そのため、ShadowProtectでは連続増分バックアップを推奨している。連続増分バックアップとは、一度完全バックアップを取った以降は、前回と変わった部分のデータのみバックアップする方法だ。ファイルサイズが小さく高速な処理が可能なため、高い頻度でバックアップを取る環境に適している。
しかし、連続増分バックアップは大きなリスクも抱えている。増分ファイルのチェーン(連鎖)が増えていくと管理が煩雑になる上に、リカバリの際に複数ファイルを参照する必要があり、リカバリに時間がかかるようになってくる。さらに、連続増分ファイルのどれか1 つでも欠損すると全てのバックアップファイルが機能しなくなってしまうリスクも存在する。
そのため、SCIMでは日次、週次、さらに月次へと順次増分ファイルを自動統合する設定を行うことで、リカバリの迅速化とデータの保護を両立する。また、増分ファイルチェーンのベリファイを行ってバックアップセットの連携性を検証し、問題があれば管理者にアラートすることも可能だ。さらには、保持期間を過ぎた世代の増分ファイルを削除するようポリシー設定をすることで、ストレージへの圧迫を回避できる。
図3 SCIMの機能
バックアップをサービスで提供するShadowProtect for MSP
そして、ShadowProtectは、通常ライセンスとは別に、クラウド事業者やホスティング事業者、その他管理サービス事業者向けの専用ライセンス「ShadowProtect for MSP」を用意している。MSP(Managed Service Providers)とは、企業が保有するサーバやネットワークの運用、監視、保守などを請け負うプロバイダーのことだ。
図4 MSP事業者向けに提供するShadowProtect for MSPでは、ShadowProtectのバックアップ/リストア機能やSCIMの全機能を使用可能
MSPはShadowProtect for MSPの利用により、ShadowProtectの機能を活用したエンドユーザー環境のバックアップ/リストアや、レプリケーション機能を利用したデータセンターでのバックアップ、さらには仮想環境へのリカバリなどをSCIMの各機能も含めてサービスとして提供できる。また、管理コンソールから全ライセンスのアクティベーション状況の確認や解除、ライセンスキーの管理、請求書の発行なども実行できる。
エンドユーザーはMSPのサービスを利用することで、短期間の活用でも初期投資が不要になるとともに、月額料金制なので高機能なバックアップがより気軽に手間を掛けずに導入できる。また、MSPは独自のサービスと組み合わせてShadowProtectを月額で提供できる上に、エンドユーザーが利用しているライセンスの管理をMSPポータルで一貫して行えるためサービスレベルの向上につながる。外部への受発注の業務がないため、納期を気にする必要もない。
今後、バックアップもツールを自社で導入して自ら管理するよりも、サービスで提供することが主流になる時代が来ることを予感させる機能といえる。
(※)ShadowProtect for MSPはバックアップサービスを提供するMSP向けのライセンスである。ユーザー向けのライセンスではないので注意が必要だ。エンドユーザーはMSPが提供するサービスを利用することで、ShaodwProtectを月額で利用できる。
バックアップ業務の空白を埋める待望の製品
バックアップ業務やDR対策の難しさは、バックアップ/リストアの作業自体がいつ起こるとも知れないシステムダウンや災害に備える保険的な意味合いが強いことにある。そのため、ミッションクリティカルなサーバとは異なり、ファイルサーバやグループウェア用サーバなど、ダウンタイムがそれほど厳格に管理されないリソースにどれほどのコストを掛けてバックアップやリストア対策を行うのか、特に中堅・中小企業は大いに迷うところだ。
ShadowProtectは高機能な障害復旧機能が盛り込まれた上に極めて安価な価格設定で、デスクトップ用からサーバ用まで各種取りそろえられており、業務継続の規模やクリティカル度合いによって柔軟に選択できる。まさにどのベンダーもサポートしていなかったバックアップ業務の空白を埋める、待望の製品といえるのではないだろうか。