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国連総会で「武器貿易条約」採択
4月3日 0時52分

銃や戦車など武器の国家間の取り引きを規制する初めての国際条約「武器貿易条約」が、国連総会で2日、採決にかけられ、加盟国の圧倒的多数の賛成で採択されました。

世界の紛争や犯罪で、銃や戦車などの武器による市民の犠牲は毎年およそ50万人に上ると推定されますが、核兵器などの大量破壊兵器と異なり、通常兵器の国際的な取り引きを規制する条約はこれまで存在しませんでした。
これについて国連は、加盟国間による交渉を続け、先週、武器貿易条約の最終案をまとめ、現地時間の2日午前、国連総会で採決を行いました。
その結果、加盟国193か国のうち、主要な武器輸出国であるアメリカも含む154か国による圧倒的多数による賛成で、条約は採択されました。
反対は北朝鮮、イラン、シリアの3か国、棄権はロシアや中国など23か国でした。
「武器貿易条約」は、戦車やミサイルから銃などに至る幅広い武器を対象に、大量虐殺や戦争犯罪などに使われると分かっている場合や、国連安全保障理事会の制裁決議による禁輸措置に違反している場合などに、加盟国の輸出入や仲介などを禁止しているほか、加盟国に毎年、武器の輸出入に関する記録を国連に報告することを義務づけています。
日本の西田恒夫国連大使は、「多くの人が犠牲となり、犯罪とも絡む通常兵器の取り引きについて、初めて法的な意味のある規制として承認されたことは非常に意義深い」と評価しました。
武器貿易条約は今後、50か国の批准によって正式に発効します。

武器取り引きの現状は

国際的な武器の取り引きを分析している、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所によりますと、2008年から去年までの5年間の世界の武器取り引き量は、2007年までの5年間と比べ、17%増えています。
国別にみた武器の輸出量は、▽トップが世界全体の30%を占めるアメリカ、▽2位がロシアの26%、▽3位がドイツの7%、▽4位がフランスの6%、そして、▽中国が、前回5位だったイギリスを抜いて、5%を占め、5位になっています。
一方、武器の輸入量トップ5は、▽インド、▽中国、▽パキスタン、▽韓国、▽シンガポールで、アジア諸国が独占しています。
また、地域別の輸入量の割合でも、アジア・オセアニア地域が世界の47%と半分近くを占め、アジアでの軍備拡大の傾向を裏付けています。
前の5年間と比べ、どれだけ輸入量が増減しているのかを地域別にみると、▽アフリカが、アルジェリアやモロッコなど北アフリカ諸国を中心に104%の増加と、ほぼ倍増しています。
このほか、▽アジア・オセアニアが35%の増加、▽南北アメリカがそれぞれ34%増加しています。
これに対し、▽ヨーロッパが20%の減少、▽中東は7%の減少となっています。

武器流出、影響は大きく

国家間の武器取り引きを巡っては、取り引き後の管理体制が国によっては不透明なことが多く、紛争地やテロ組織、さらには犯罪組織などへの武器の流出が続いてきました。
内戦が続くシリアでは、アサド政権側にはイランが、また反政府勢力側には湾岸諸国が、それぞれ武器を提供していると指摘され、内戦の拡大の原因とされています。
また、カダフィ政権が崩壊したリビアでも、政府軍や反政府勢力が保有していた地対空ミサイルなどの大量の武器が未回収で、ことし1月に日本人10人を含む外国人が犠牲になったアルジェリアの人質事件でも、リビアからの武器が使用された可能性が高いと指摘されています。
しかし、これまで武器の管理や取り引きを規制するための国際的な枠組みが存在しなかったため、人権問題を扱う世界的なNGOからは「武器の取り引きはバナナの取り引きよりも規制が緩い」といった皮肉な指摘もなされてきました。

採択までに「長い道のり」

戦車や銃など、通常兵器の取り引きを透明化することで、テロリストや武装勢力などへの武器の流出を防ぐべきだという声は、90年代後半から国際的なNGOや有識者の間で高まりを見せました。
特に自動小銃や手りゅう弾といった小型武器の取り引きは、持ち運びが簡単で入手先が分かりにくいことなどから、アフリカや中東などの紛争地域で野放しの状態で、紛争の長期化や市民の犠牲の拡大などの要因になってきました。
このため国連は2001年、小型武器の流出の防止や、不要になった武器の回収と処分の徹底、武器の流通ルートを追跡できるような制度作りなどを各国に求める行動計画を採択しました。
さらに2006年には、日本などがリーダーシップをとって、小型武器を含む通常兵器全体の国際的な取り引きを規制する「武器貿易条約」の制定を求める決議案を国連に提出して採択されました。
しかし、武器貿易条約の具体的内容の交渉では、アメリカなど武器輸出国を中心にさまざまな反対意見が出されました。
特に、弾薬や部品など、どこまでを武器として規制するのかや、輸出入の規制をどこまで厳しくするのかなどの点で意見がまとまらず、去年7月の国連での交渉も、アメリカやロシアが厳しい内容の条約案に慎重な姿勢を崩さず、交渉は決裂しました。
そうしたなかで、先月18日から始まった会議は、この条約に関する最後の会議として位置づけられ、アメリカなども条約の最終案に賛成の立場でしたが、条約の採択には加盟国の全会一致が原則だったため、北朝鮮などの反対で採択は実現しませんでした。
このため、日本など条約を推進する立場の国々が、条約案を国連総会の場で採決する方針に切り替え、2日、総会での圧倒的多数の賛成で条約は採択されました。

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