【バンコク=寺岡秀樹】インドのニューデリーで昨年十二月、女子学生が集団暴行され死亡した事件以降、インドを訪れる外国人女性の観光客が激減している。性的暴行事件が頻発する中、安全面を考慮し敬遠された格好で、インド商工会議所連合会の調べでは前年同期比で約三分の一減少したことが分かった。インドの観光業にとって深刻な打撃となる恐れが高まっている。
同連合会がインド国内の旅行会社、千二百社を調査したところ、外国人観光客は事件から三カ月間で、全体で約25%減少、女性に限ると約35%減った。旅行会社の七割以上が予約を取り消され、キャンセル客はマレーシアやタイなど、他のアジア諸国に旅先を変更したという。連合会は「世界的な景気後退という側面もあるが、女性が旅行する際の安全性に懸念が高まった」ことが原因とみている。
キャンセルが目立った観光客の国籍は英国、米国、カナダ、オーストラリアなど。三月にはスイス、英国出身の女性を狙った事件が続発。英国外務省は、滞在中は警戒を怠らないよう求めて、米国務省は女性一人でのタクシー利用を控えるよう呼びかけるなど、注意喚起に努めている。
インド観光省によると、昨年、インドを訪れた外国人観光客は約六百六十万人。観光省は二〇一六年までに観光客がもたらす外貨収入を倍増させようとしている。一方で、性犯罪の厳罰化を目指し強姦(ごうかん)罪の最高刑を死刑にする改正案が二月に発効後も、事件が急減する気配はなく、このままでは観光産業にも打撃を与えかねない。
インド国家犯罪統計局によると、二〇一一年、インド国内で二万四千二百六件の性的暴行事件が発生。約二十二分に一件の割合で起きた計算だ。
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