コラム:米アップルが中国で選んだ「負けるが勝ち」
By Richard Beales
[ニューヨーク 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] 米アップル(AAPL.O: 株価, 企業情報, レポート)のティム・クック最高経営責任者(CEO)には「謝り癖」がついたようだ。1日には「iPhone(アイフォーン)」の保証をめぐる中国での混乱について謝罪した。この問題でアップルはメンツを失うことになったが、それは価値あることだと言える。
ソーシャルメディアへの投稿を見る限り、中国のアップル愛好家は、国営メディアによる同社への一斉批判とも見える動きに影響されることはなさそうだ。しかし、アップルが自分たちの傲慢(ごうまん)さを認めることは、将来同社の製品を買うかもしれない大量の潜在顧客の神経を鎮めるには安上がりな策だろう。
クックCEOは半年前には、自社の地図アプリの不具合について謝罪した。今回の問題は、中国国営テレビCCTVが先月15日、企業の過失に関する恒例の特別番組でアップルを取り上げたことが発端。アップルの中国サイトに掲載された謝罪は、同社の製品保証やアフターサービスをめぐるメディアの一斉批判に対応するものだ。激しいアップル批判の結果、不公正さを示す事例が明らかになったようには見えないが、同社が中国の顧客を例えば米国の顧客より軽んじているという印象を与えたのは確かだ。
このケースの根底にあるメッセージは、往々にして中国で生産する人気商品から多くの利益を上げる巨大外国企業への警告にもなり得る。大国に成長した中国の市民が、他国から二流扱いされることに敏感になっているという面を映し出している可能性もある。また、同社の競合である中国の中興通訊(ZTE)(000063.SZ: 株価, 企業情報, レポート)や華為技術(ファーウェイ)(002502.SZ: 株価, 企業情報, レポート)を後押しする意図があるのかもしれない。
本当の意図はどうであれ、批判の曖昧さによってアップルは譲歩しやすくなったと言える。アップルは今回、iPhoneの保証を一部見直したが、方針転換というよりは、「誤解についておわびする」という謝罪に重きが置かれている。そして、自分たちを傲慢に見せず、中国側との舌戦を避けるという目的を果たした。
これは重要なことだ。2012年第4四半期には、中国はアップルにとって世界で2番目に大きな市場となり、売上高545億ドルに占める割合は13%に上った。クックCEOは今年に入って訪中し、世界最大の市場となることにも期待を示した。
アップルは、契約者7億2000万人を抱える中国移動(チャイナ・モバイル)(0941.HK: 株価, 企業情報, レポート)と端末販売でまだ契約していない。アップル株が低迷する中、クックCEOには成長が見込める国でのトラブルを積極的に回避する必要があるのだ。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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