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コラム

海潮音

4月2日

 今年の春は駆け足でやってきた。まだ4月に入ったばかりなのに、本紙の「桜だより」には早くも「満開」が並ぶ。昨年は「つぼみ」さえ載っておらず、観測史上最速が腑(ふ)に落ちる◆この春爛漫(らんまん)の中、日本海新聞はきのう、西部本社設立30年を迎えた。記念特集号をご覧いただいただろうか。30歳男女30人のメッセージや、圏域30年間の主な出来事、30年後の将来展望など、「30」にこだわって特集号をまとめた◆筆者が新聞社に入社したのは31年前の1982年。自身の新聞人生と西部本社の歩みが重なり、ことさら感慨深い。特集号づくりで30年の折々がよみがえり、妙な感傷に浸ってしまった◆85年のわかとり国体では高飛び込みを担当し、初めての種目に四苦八苦。山陰合銀とふそう銀が合併した91年は安来勤務で、経済紙に出し抜かれた苦い経験も。97年の夢みなと博では事業局員として「市町村デー」のステージをお手伝いした◆そして一昨年秋から単身赴任で米子市へ。圏域の豊かな自然と悠久の歴史・文化、そして気の置けない人情に囲まれて迎えた2年目の春。桜の見ごろは今週がヤマ場。地域のさらなる飛躍を願い、確信して、花見の宴を楽しみたい。


4月1日

 韓国の面積10万平方キロメートルは日本の4分の1、5千万人の人口は日本の半分に満たない。国土や市場を考えると、韓国の目が海外に向くのは自然の成り行きだろう。モノの輸出に限らない。外貨獲得のツールはカルチャーも同じだ◆2003年放映のテレビドラマ『冬のソナタ』に端を発した韓国への新たなイメージは、サムスンなどの製品購入を容易にする一方、年間8万〜9万部だったNHKハングル講座テキストの発行数を20万部に押し上げた◆日本貿易振興機構のジェトロが11年にまとめた韓流ブームの波及効果は、ポップス音楽の「K−POP」を歌う少女時代や東方神起のアイドルグループ日本進出によって広がったかもしれない◆K−POPの歌唱力を競う日本人によるコンテストの中国地区予選が5月18日に米子コンベンションセンターである。政府機関の韓国文化院が、日韓交流を促進する鳥取県に協力的な印象を抱いて開催地に選んだ◆「韓国に興味を持つきっかけの多様化にもなる」とは県担当者のコンテストへの期待。領有権問題を抱える両国だが、交流の裾野が広がり、相互の理解につながるとすれば、日本に流入する韓国カルチャーの価値は高まる。


3月31日

 今年は日本を代表する写真家、植田正治(1913〜2000)の生誕100年。伯耆町にある植田正治写真美術館を中心に記念事業が目白押しだが、生涯を過ごした生地・境港市の市民図書館でもささやかな企画展で郷土が生んだ偉大な写真家の業績を紹介している◆その中で市民の目を引いているのが、生前本人から寄贈を受けた昭和天皇の境港巡幸の記録写真だ。戦後間もない昭和22年11月、冷雨そぼ降る中、境港台場公園や引揚者の厚生寮などを視察された時の様子が撮影されている◆「人間宣言」した天皇が気さくに見物客の歓迎に応える姿、緊張する地元随行者、見物客の表情などその場の雰囲気や時代性を見事にとらえている。後に「植田調」と称される様式的な芸術作品とはまた違った魅力がある◆写真の寄贈を受けた当時の図書館長で、植田家とは近所付き合いもあったという畠中弘さん(84)は「玉栄丸爆発の写真も頼まれて撮っておられるはず。カメラが貴重だった時代。植田さんでないとできない写真だった」と解説する◆境港市教委では今秋、植田が境港の風景を撮影した写真を集めた企画展を計画する。「灯台もと暗し」を返上したい。


3月30日

 鳥取藩の殿様は平井伸治公。江戸から迎えられ6年がたった。治世よく民の評判も良い。2期目は「漫画」なるものに傾倒し、土佐藩ともまんが王国友好通商条約を結んだ。藩主の任期は残り2年、そこで黄門様ならぬ「漫遊記」の旅に出た◆助さん、格さんは江戸霞が関から引っ張ってきた。地元藩士の出番は少ない。葵(あおい)の御紋の印籠に相当するのは「国際まんが博成功」。武家や商人の中には疑問の声があるが、そう信じている◆城を出ると民は不景気に悩まされ、若い衆は働き場がないと上方に出ていく。街道からは荒れた田畑も見える。国境(くにざかい)まで行くと、村がこの先どうなるのかとも思う。藩主は目を疑った◆「私は為政者として成すべきことをしてきた」。漫画は鳥取藩を世に知らしめ、自然豊かなこの地に旅人を呼び込むためだった。江戸から姫様まで連れて来た。だが、口の悪い民は「効果はあったの」と無礼なことを言う◆旅の帰り、大きな池があった。アザラシがいると騒いでいる。名前を付けてもらったお礼にアザラシは藩主に言う。「もっとやるべきことがあるでしょ」。旅で見た現実に深く手を突っ込むことを言いたいようだ。殿様の心に届いたか?


3月29日

 いまはやりのTPPではなく、PPKの話。「ピンピンコロリ」の略である。病気に苦しむことなくピンピンと元気に生きて、コロリと死ぬ。30年前に長野県伊那谷の小さな町から始まった健康長寿を目指した運動である◆その長野県は先日、厚生労働省が発表した2010年の都道府県別平均寿命で、男女とも1位に輝いた。日本一の長寿県である。野菜をたくさん食べ、みそ汁は1日1杯など減塩運動を展開。生活習慣病対策に県民挙げて取り組んでいる◆その結果、がんや心疾患などの死亡率が低く、1人当たりの高齢者医療費も低くなった、という。ピンピンコロリの実践県である。対して鳥取県は男性40位、女性36位。鳥取の女性は全国で唯一、平均寿命が縮まった◆鳥取県の第2次がん対策推進計画案では、1日の野菜摂取量を350ミリグラム、食塩摂取量を男性10グラム未満、1日の歩数を男性8千歩以上、女性7千歩以上などの目標が立てられた。要は野菜を多く食べ、塩分を控え、よく歩くこと。難しいことではない◆平均寿命の発表は5年に1回。長野県の男性は5回連続1位と健康長寿をリードしている。長野を見習い、鳥取もPPK運動を展開しよう。


3月28日

 鳥取市出身の女優・瀧本美織さんや蓮佛美沙子さんが、テレビや映画で活躍している。米子市では映像イベント「米子映画事変」が開かれるなど、映画の明るい話題が多い。一方で昨年、同市の映画館「サティ東宝」が閉館し市内から映画館が消えた◆コミュニティシネマセンター(東京)の調査では、鳥取市で2009年に公開された映画は41本でそのうち洋画は10本。同年に日本で封切られた映画719本で割った公開率は6%(全国平均44%)、洋画公開率は3%(同50%)といずれも全国最低◆洋画は外国の事情を知るための絶好のメディアなのに、触れる機会が非常に少ない。県庁所在地でありながら、文化的な刺激に乏しい全国有数の映画過疎地。嘆かわしい◆兵庫県宝塚市に、公設民営の映画館「シネ・ピピア」がある。映画館がなかったため1999年に市が設置した。優れた文化を紹介して新たな才能を引き出すとともに、市民交流の場にするのが目的だ。行政が映画をまちづくりの中に位置づけた好例といえる◆映画は文化的・芸術的な面のほか、ロケ誘致などによる経済効果が期待でき、まちの活気をつくりだす有効な方法になる。単なる娯楽ではない。


3月27日

 自然の中に出掛け、木の枝、花や山並みに、五線譜が書かれた透明な板をかざす。山の頂点や花を音符と考えて板に描く。音符を紙に写し、色や形を付ける。自然が奏でるメロディーを見つける「採譜」という手法だ◆考案した「音から学ぶイヤーゲームの会」代表の桜井有機子さんを講師に、小学生約100人が伯耆、南部、江府町で採譜をしたのは昨春。それから1年。子どもたちが発見した旋律は「全国植樹祭とっとり」の「テーマ表現曲」となった◆いくつもの断片(単旋律)を楽曲に仕上げた鳥取大学地域学部教授の新倉健さんは「与えられたものをできるだけそのまま、全て使おう」と意識したという。曲は交流、学習、体験、生活の「四つの森」などをイメージした7部から成る◆先週末、植樹祭の式典音楽隊の合同練習で曲の一部を聴いた。吹奏楽、管弦楽、合唱を合わせて約300人による演奏は、ふるさとのたおやかな自然を感じさせた。未来に生きる子どもたちの感性が投影された音だ◆曲は5月26日、植樹祭主会場のとっとり花回廊で踊りとともに披露される。作曲者は自然。森や花から生まれた音楽が、森や花を大切に育もうという皆の思いを包む。


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