厚生年金基金:「健全」な1割、存続…厚労省案を提示

毎日新聞 2013年04月01日 22時13分(最終更新 04月01日 23時43分)

厚生年金基金制度改革案
厚生年金基金制度改革案

 厚生労働省は1日、企業年金の一つ、厚生年金基金(562基金)のうち約9割には厚労相が解散を命令できる一方、財政が「健全」な約1割の基金は存続を認める内容の厚生年金法改正案を同相の諮問機関、社会保障審議会年金部会(部会長・神野直彦東京大名誉教授)に示した。民主党政権時の「10年で全廃」案を撤回する内容だが、自民党の意向を踏まえて「存続ありき」で結論を導いた感は否めず、なし崩し的に基金が存続する可能性もある。

 「なぜ残すのか、理解できない」「1割のために制度を維持するコストをどう考えるのか」。1日の同部会では、改正法案に異論が相次いだ。厚労省側は「(厚労相ら)政務とも相談した中での政策判断だ」と苦しい説明に追われた。

 AIJ投資顧問による年金消失事件を受け、厚労省は昨年、同基金(加入者437万人、受給者293万人)の全廃案をまとめた。同基金は国に代わって厚生年金の一部を運用・支給しており、存続させれば公的年金にも影響しかねないためだ。同審議会の専門委員会(神野委員長)も「制度の持続可能性は低い」と指摘していた。それが政権に復帰した自民党が一部基金からの要請に応えて存続論を唱えると、厚労省は一転、厚生年金の支給に必要な資金の1.5倍以上の資産を持つ約1割を「健全基金」として存続を認めた。

 ただし、1.5倍とは「1〜2年後に厚生年金用の資金が不足する代行割れ基金はほぼ0%」という水準の資産だ。「健全」の根拠は弱い。専門委員会は「1.5倍の資産」を存続の最低要件としていたのに、今回の案は1.5倍さえクリアすればいい。しかも計算方法を見直し、必要な保有資産額は従来水準より半減させた。厚労省幹部は「将来も健全だと約束する水準ではない」と言う。

 現在の基金の多くは複数の業者で作る総合型基金だ。存続させた揚げ句に代行割れし、加盟企業の一部が倒産すれば、倒産企業が分担するはずだった厚生年金支給に必要なカネは、厚生年金全体の積立金で補填(ほてん)することになる。1日の同部会で駒村康平慶応大経済学部教授は「存続は基金に無関係の厚生年金加入者にリスクを押しつける」と指摘した。【佐藤丈一】

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