「鉄オタ」をご存知だろうか。鉄道ファンの別称で、鉄道を心から愛し、乗ったり、撮ったり、集めたり、弔ったりする人のことを指す。しかし、その一部が、“愛”ゆえに数々の事件を起こしてしまっている。
先月、長野県「しなの鉄道」で線路脇に植えられた開花前の桜が、何者かに切られてしまう事件が発生。同鉄道会社の関係者のツイッターにおいて「鉄道ファンが犯人」だとうかがわせる内容の発言があったのだ。
また、それと同時期に、鉄道イベントで撮影を邪魔されたと憤る鉄オタが子供を取り上げ、母親が土下座で謝罪するというショッキングな動画がネット上に出回った。
これらは、鉄道の撮影にこだわるファン、いわゆる“撮り鉄”の仕業と言われている。現役の“撮り鉄”、A氏に騒動に対する見解を聞いてみた。
「木を切られた信濃追分(しなのおいわけ)~御代田(みよた)間のカーブは浅間山をバックにきれいな編成写真(車両全体の写真)を撮れるスポット。木が邪魔だなって気持ちはよくわかります。僕らも雑草ぐらいだったらよく刈ってるし」
なぜ雑草を?
「写真を撮るときは足回りまでキレイに写したいですから、雑草は邪魔になるんです。それは本来、鉄道会社の仕事なんですよ。でも、人員削減でそこまで手が回らなくなっているから、僕らが代わりにやってる。まあ、桜の木はやりすぎだったかもしれないけど……」
では、鉄オタが母親に土下座をさせている動画の件は?
「撮影する側としては、車両に人が写り込んでほしくないんですよね。しかもその車両を狙うために何時間も前から待ってたのに、一般人がフラッと入ってくる。正直、イラつきますよ。撮影している人の前に入らないというマナーを知らないのかと」
そういったマナーは、“撮り鉄”の仲間うちだけのものだと思うが……。
「そもそも、この車両の価値をわかってんのかって思いますよ! どうせ『みんなが撮影してるから私も』ぐらいの意識なんじゃないかな。この際、言わせてもらいますけど、車両の前のスペースは、車両全体をうまく写真に収めるために空けているんですよ。一般人にはそのことを知ってほしい!」
もちろん、こんな言い分が一般人に通用するはずがない。その他大勢の鉄道ファンに迷惑をかけないためにも、一部の“撮り鉄”たちには意識改革が必要だろう。
(取材・文・撮影/関根弘康)
■週刊プレイボーイ14号「真性鉄オタ覆面座談会 俺たちは“鉄クズ”じゃない!!」より