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「水俣病の失敗」世界へ 欧州環境庁が報告書 2013年04月01日

「水俣病の失敗」世界へ 欧州環境庁が報告書の写真、図解
欧州環境庁が発行した「レイト・レッスンズ」の水俣病に関する記述。表題に「Minamata disease(水俣病)」とあり、失敗の教訓を伝えている
 欧州環境庁(EEA)は、世界各地の環境問題の研究をまとめた報告書「レイト・レッスンズ(Late lessons)」の2013年版で水俣病問題を取り上げた。水俣病研究者3人が共著で、被害を拡大させた行政やチッソの対応、認定制度や補償の不十分さを批判。「水俣病の失敗」の教訓を世界に訴えている。

 EEAは欧州連合(EU)の機関の一つで、報告書は環境汚染や健康被害などの事例を挙げ、発生や拡大を未然に防ぐことの重要性を示唆する内容。01年にも発行している。

 水俣病の記述は「民主主義と正義への困難な道のり」と題し、昨年亡くなった故原田正純医師と、岡山大大学院の津田敏秀教授、頼藤貴志准教授の共著。

 水俣病の発生から原因物質をメチル水銀と特定するまでの混迷、水俣病を正確に定義しないまま始まった認定制度や補償の混乱ぶりを指摘。胎児性水俣病について「有害化学物質が胎盤を通して胎児に達することを示した最初の例」と言及し、環境汚染が将来の命をも脅かすと強調した。

 10月に熊本市と水俣市で開かれる「水銀に関する水俣条約」外交会議にも触れ、「水銀汚染防止の技術的な議論に終始せず、水俣病が未解決の問題を多く抱えていることを表明すべきだ」と提言している。

 水俣病の報告を取りまとめた頼藤准教授は「水俣病の教訓は世界に共通する。原田先生が生前語っていたように、海外にも失敗の経験を発信し続けたい」と話している。(鎌倉尊信)



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