2007年06月13日
■重箱の隅をつっついた話『モンブラン149』2回目<クリップ> なで肩といかり肩。おにぎりとおいなり
NHK『美の壺』にモンブラン149<開高健モデル>が出ていましたねぇ。
ますますモンブラン149が好きになってしまいました。
なんてったって、わたくしが私淑する3人の作家【開高健・立原正秋・三浦綾子】が愛用した万年筆なのですから。
さて、前回は尻軸の違いをお伝えいたしましたが、第2回目は、胸ポケットに挿すときに大切なクリップです。
微細な点を比較するともっと種類が増えるかもしれませんが、1960年代以降に生産されたモンブラン149のクリップには、大まかに分けて3種類のバージョンがあると思われます。
(A)1960年代製造の149用
(B)1970年代から80年代後半製造の149用
(C)1980年代後半から現在の149用
写真の左側が(A)1960年代製造の149用クリップです。
右側が、(B)1970年代から80年代後半製造の149用クリップ。
写真がわかりにくくてすみません。
写真の左側が(C)の1980年代後半から現在の149用クリップです。
右側が、(B)の1970年代から80年代後半製造の149用クリップになります。
<なで肩>、<いかり肩>、
<おにぎり>、<おいなり>
この4つのキーワードをつかって、
各時代のクリップの特徴を説明すると
次のようになります。
<なで肩>と称するのはクリップのバーの始まりがカーブを描いているからです。<いかり肩>のほうは角張っています。
つづいてクリップの留め金の形状によって<おにぎり>か、<おいなり>かを見分けます。留め金が三角形でおにぎりの形なので<おにぎり>と言います。最近の留め金はたわら型をしています。<おにぎり>に対して<おいなり>と呼んでいます。
60年代の留め金は、<おにぎり>と<おいなり>を合わせたように見えます。
(A)1960年代製造の149用クリップは、
<なで肩>で<おいなり>。
(B)1970年代から80年代後半製造の149用クリップは、
<なで肩>で<おにぎり>
(C)1980年代後半から現在の149用クリップは、
<いかり肩>で<おいなり>
モンブラン149<開高健モデル>は(B)に当てはまります。
<なで肩>にまだレトロな雰囲気が残っています。
クリップ口の<おにぎり>は結構はっきりとした三角形です。
無造作に、クリップをパチン!パチン!と音を立てている人がよくいますが、モンブラン149のクリップはごらんのとおり、かなり尖った<おにぎり>の留め金なので、あっという間に、キャップにクラックがはいります。
加えて、(B)の時代のクリップは意外と脆く、天ビス(天冠)との接合部のリングとクリップのバーの境目にクラックがはいったり、クリップのバーが歪んでしまったりします。御用心。御用心。
昨夜放送の、重松清さんが語る『開高健 悠々として急げ』(NHK教育)は、まあまあでした。
ルポを書いて外を見てきた開高先生が、ベトコンの少年兵が公開処刑されるところに立ち会って、一変してしまいます。
開高先生は「粉砕された」「砕けた」と書いていますが、あの一発の銃声で、開高先生は内なる世界を描くようになっていくのです。人間の心の闇や人間の不毛さを…。
開高先生のこんな言葉を見つけました。
旅に出て人と事物を観察し、
書斎にもどって心と言葉を観察する。
たえまなく揺れてさだまらない心にそそのかされて、
それを追ったり追われたり、
“歩く”と“書く”の二極をあわただしく往復するうちに、
時の大河をうかうかと下ってしまう