移住労働者と連帯する第4回全国ワークショップにて要望書を作成しました。
「すべての移住労働者及びその家族構成員の権利保護に関する国際条約」 
  (移住労働者の権利条約)の早期批准を求める要望書 
私たちは、日本各地で移住労働者とその家族の人権問題に関心を寄せ取り組んでいる、市民団体や労働組合、個人です。私たちはこれまで、その権利を不当に侵害され、権利擁護の手段さえ奪われてしまっている多数の移住労働者とその家族を支援してきました。その立場から、日本政府が「すべての移住労働者及びその家族構成員の権利保護に関する国際条約」(移住労働者の権利条約)を早期に批准するよう要望いたします。
第二次世界大戦後、国際社会は世界人権宣言を採択し、すべての人の人権を非差別・平等に保障することが、国際的に達成すべき共通の基準であることを明らかにしました。世界人権宣言の理念を実現させるために、国連では人権に関する様々な国際条約が採択され、各国の批准によって多くの条約が発効してきました。とりわけ、日本政府が1979年に批准した国際人権規約(自由権規約・社会権規約)は、人権の普遍的な保障をすべての締約国に義務づけており、その対象には当然ながら移住労働者とその家族も含まれています。
しかし、世界的に移住労働者が増え続けている一方、彼ら彼女らをとりまく人権状況は益々悪化していることも明らかになってきました。多くの地域で人身売買や不当な搾取などの人権侵害事例が少なからず報告されるようになり、移住労働者とその家族の現状に即して、より実効性のある人権保障の基準を定める必要性が出てきました。このような人権保障を実質的に拡大していこうとする世界的な努力の延長線上に、1990年12月「移住労働者の権利条約」が国連で採択され、産声をあげました。この条約は、締約国が、正規・非正規を問わず、すべての移住労働者とその家族の基本的人権を守ることを定めています。
昨年の国連報告によれば、世界の移住労働者とその家族の人口は最近10年間で2倍に増え、1億7500万人に上っています。日本においても1980年代から移住労働者が急激に増えてきており、不況下の現在でもその人口は決して減少していません。多数の移住労働者が家族を形成し日本社会で地域住民として生活をしています。日本に居住するすべての移住労働者とその家族の人権を保障することは、国際社会の一員として日本政府が果たさねばならない当然の責務です。
しかしながら、日本国内では、増え続ける移住労働者の人権を守るための施策は充分ではありません。移住労働者に関係する法律は出入国管理法と外国人登録法のみであり、出入国の規制と在留の管理だけに眼が向けられています。加えて、現在審議されている有事法制によって進められる戦争のできる体制作りは、移住労働者への警戒、さらには排斥へとつながり、移住労働者の人権保障はますます省みられなくなるおそれがあります。あらゆる人の人権が非差別・平等に保障され、平和な共生社会の実現をめざす私たちは、このような日本の情況を非常に危惧しております。
20ヶ国の批准によって発効することが決められていた「移住労働者の権利条約」は、本年3月にグアテマラが20番目の批准国になったことにより、7月1日に発効します。この国際的発効によって、この条約が定める移住労働者とその家族の権利保障の国際人権基準は、国際社会において始動します。
私たちは、日本政府が、一日も早く「移住労働者の権利条約」を批准し、現在の不充分な制度を抜本的に改善するために、日本で暮らす移住労働者とその家族の基本的人権が保障されるような具体的施策を策定することを要望いたします。2003年5月25日
移住労働者と連帯する第4回全国ワークショップ参加者一同