野田
「世界の扉です。
今日(1日)は混迷が続くシリア情勢についてお伝えします。
反政府デモが始まって丸2年が過ぎましたが、アサド政権と反政府勢力との戦闘は首都ダマスカスに及び、激しさを増しています。
国連による調停はうまくいかず、事態打開の糸口は、今も見つからないままです。
この間、シリア国内で生活する人々は戦闘に巻き込まれ、幼い子どもたちの生活や心にも大きな影響を与えています。
まずは、アレッポに住む少年とその家族の暮らしぶりをオーストラリアABCのリポートでご覧下さい。」
シリアのアレッポは、今も人々が住む最古の都市の1つです。
かつては商業都市として繁栄した、活気あふれる町でした。
今は地獄のようなシリア。
中でもアレッポは最も危険な場所の1つです。
アレッポでは、学校に行くのにも命賭けです。
イブラヒム君が通っていた学校は空爆で破壊された為、臨時の教室へ通っています。
イブラヒム君
「勉強したいのに、この2年は無駄になってる。」
母親 エイシャさん
「あの子が通学途中に空爆に巻き込まれないか心配です。」
通学には生徒の強い意思が必要ですが、それは教師も同じ。
イブラヒム君が通う臨時学校の教師アフィフさんが、荷物をまとめています。
爆撃から逃れるため、絶えず移動を繰り返しているのです。
教師 アフィフさん
「狙撃される可能性が99%はあります。
ここら辺は狙撃手だらけですよ。」
今日の授業は現代アラビア語。
イブラヒム君は久々の授業に真剣です。
しかし授業は強制的に終了。
現地リポーター
「この爆発は政府軍の爆撃によるものでした。
爆発による破片は学校の近くまで飛んできました。」
内戦による破壊は町並みだけではなく、子供たちの心にまで及びます。
イブラヒム君たちは1週間前に起きた恐ろしい現場へ案内してくれました。
イブラヒム君
「大きな音がした現場に来てみたら、解放軍の兵士が瓦礫の下敷きになってたよ。」
さらに幼稚園からの親友が、空爆により彼の目の前で殺されました。
イブラヒム君
「病院で死んだよ。」
父親 ゼイン・アル・デインさん
「息子の心には恐怖とともに、“復讐”という残酷な心が芽生えています。
学校に行けないことより、そちらの方が心配です。」
しかし、アサド大統領が退陣しても、彼に代わる指導者がいないのが現状です。
今はっきりと言えることは、若い世代が戦争という泥沼にどっぷり浸かっていることです。
シリアの将来を担う子供たちは、出口の見えない戦争の真っ只中で人格が形成されています。
イブラヒム君
「僕が恐れるのは、天国の神様だけ。
もう“心はいらない”、そうすることに慣れたんだ。
今の音聞こえた?」