教科書検定:高校15%厚く 国語・数学3割増 震災の記述倍増−−文科省
毎日新聞 2013年03月27日 東京朝刊
文部科学省は26日、主に高校2年生が14年春から使う教科書の検定結果を公表した。農・工業など専門教科以外の共通教科では132点が合格。10年ぶりに全面改定した学習指導要領を反映し、ページ数は現行(昨春供給)と比べ平均15%増と厚くなり、特に国語と数学は3割増えた。東日本大震災を取り上げた教科書の割合は48%(63点)と、11年度検定(主に高校1年生対象)の24%から倍増した。
いわゆる「ゆとり」教育からの脱却にかじを切った新学習指導要領に基づく検定は、高校では10、11年度に続き3回目。思考力や表現力の養成を目指す新学習指導要領に従い、どの教科書も発表や討論などの「言語活動」を重視している。共通10教科の平均ページ数は計2604ページとなり、現行(2267ページ)より15%多く「ゆとり」路線で最も少なかった05年春供給分と比べると19%増となった。
教科書会社は約1年かけて編集し、毎年4月に検定申請する。11年は震災の影響を踏まえて1カ月ほど期限を延長。文や写真を震災関係に差し替えた例もあったが「準備が間に合わなかった」「客観的評価が難しい」(編集担当者)とする社が大半だった。今回は東京電力福島第1原発事故を取り上げた割合も26%(34点)と前回の7%から急増した。
社会科(地理歴史、公民)の教科書は25点中、地図1点を除く24点が震災と原発事故を記述。「原発推進派」と「脱原発派」の意見を併記してそれぞれの長所と短所を考えさせる政治・経済の教科書や、菅直人元首相について「震災処理の不手際もあって(内閣)総辞職に追い込まれた」とするなど政権評価に踏み込んだ日本史の教科書も。英語でも、放送で避難を呼び掛け続けて亡くなった宮城県南三陸町職員の話などを取り上げ、現代文では原発事故を扱った文学作品も登場した。
また、英語はコミュニケーション重視に転換し、英語で授業することを基本としたため、ごく一部の難語や文法用語を除いてすべて英語で記された教科書もある。【加藤隆寛、苅田伸宏】