2010年12月6日
「猟官運動まがい」「いろいろつまらぬことを、選挙のときにやる」
1975年3月、参院予算委員会の分科会。社会党の久保亘議員が、日本芸術院の会員選考をめぐる問題を追及した。
答弁に立った永井道雄文相は「芸術院自身の自主性というものを非常に重んじなきゃいけない」と応じた。
日本の文化の権威が集う芸術院のありようは、何度も国会で問題になった。芸術院は国の機関。会員は非常勤公務員で「年金」を毎年250万円支給される。会員選考は三つに分かれた部ごとに現役会員の投票で行われるため、特に第1部(美術)では会員の家をあいさつして回る事前運動が続いてきた。
久保議員の国会での追及などもあって事前運動を厳しく戒める「申し合わせ」がつくられたが、いまだに守られていない。
現状を憂える会員はいる。第1部の部長で日本画家の松尾敏男さん(84)は「なりたい人ではなく、なって欲しい人を推薦し選ぶべきだ」。洋画家の中山忠彦さん(75)も「あいさつ回りは好ましくない。候補者の作品を展示し、比較できるようにすればいい」と話す。
■変わらぬ習わし
だが、長年の習わしはなかなか変わらない。上部組織の文部科学省、文化庁は長く、「自主性を重んじる」立場をとってきた。先月、記者会見で問われた笹木竜三文科副大臣はこう答えるにとどまった。「申し合わせ事項で十分なのかどうか、時代の変化の中で問題ないのか、考えていく必要がある」
芸術院は「芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関」と位置づけられている。だが、現代の文化状況とのずれも目立つ。