玉木さんは、遠くを見通す冷静な目をいつももっているような気がするんです。感覚的にクールというか温度が冷めているような外見にみえ、それがひとつの魅力でもあります。今回義朝という武士をあらわすとき、人物デザインでは温度をすこし高めようと思いました。ふん装の温度を高めるということは、運動性を高めることであり、汚すということもふくまれます。そうすることで、存在のバランスをとっています。
剣の紋の狩衣(かりぎぬ)を着ています。義朝の色彩は、藍色や紺色を中心軸にしています。玉木さんご自身がもっている野性も強調されるし、何よりすごく似合っていますよね。
行縢とは、馬に乗って狩りや遠出をするときにはく、腰から足元までを覆うものです。義朝が付けているのは、鹿の皮で作った行縢です。(写真右下)
普通、侍烏帽子は折り目がきちんと付いているのですが、義朝のそれはヨレヨレですね。ただ汚しただけでは、この侍烏帽子が持ち主とともに生きてきたという感じが出ない。ですから、装飾部が素材自体を柔らかく、くちゃくちゃに加工して、さらに美術部がエアガンで汚し、義朝とともに生きている感じを表現しています。
義朝は東のほうへ旅に出ます。ずっと同じ着物を着ているので当然、日に日に汚れていく。不精ひげも生え義朝自体も汚れていく。でも、汚れれば、汚れるほど玉木さん演じる義朝は野性味を増し、どんどんカッコよくなっていきます。