頼朝の登場シーンは、源氏が集まり勝ち名乗りを上げるシーンです。ここから、源氏の頂点が始まる。ですから、着ているのは狩衣(かりぎぬ)ですが、品格のある色にしています。この黄土色は天皇のお召しになる色味のひとつに近いものでもあります。
岡田さんはまだ22歳ですが、30歳半ばに見えますよね。
カットによっては白髪にも見えるのですが、それはコーンスターチ(とうもろこしの粉)です(笑)。
この烏帽子が真っ黒だと、重たい物質感がありますが、透けさせることで、視覚的な軽快さと複雑さを実現させています。
複雑さとは、視覚的な情報の複雑さのことです。頭の上にある烏帽子も見えるし、烏帽子の中のヘアスタイルも見える、そしてその奥にある緑も見える。いろいろな情報を重層させることで、パッと見ただけでは解読不能なおもしろい映像となっています。
女性ですが、政子は源氏を引っ張っていく大きな存在です。また、ぼくにとってはとてもスピリチュアルな存在でもあります。
演じる杏さんも、政子のような心の強さをもっていると思うので、まさにぴったりの配役ではないでしょうか。
人物デザイン的には、モデル出身だけあって杏さんは何を着ても似合うので、ぼくは演出的な意図を踏まえながら、デザインの方向性を概念的にとらえるだけでOKでした。
これまで誰も見たことのない政子だと思いますし、強烈な個性を放つキャラクターに仕上がったと思います。
市女笠をかぶって、アザラシの毛皮で作った行縢をはき、馬に乗ってやって来るシーンは本当にカッコいいですね。全体の雰囲気として、当時の最先端だった中国大陸の文化の、そのまた先の「ペルシャ感」も取り入れたつもりです。