清盛(松山ケンイチ)と雅仁親王は、登場シーンはともに賭博場です。これは、
運試しというか、運の強さや、運によって導かれていく人生の象徴
だと思います。
少年期の雅仁親王は皇位への望みも薄かったので遊び暮らしていた、言ってみれば朝廷のはみだし者。また成長してからも、
自分で意図しなくても、結果的に既存のものを壊したり、ひっくり返してしまうような人物です。
ぼくのイメージでは、パンクなキャラクターなんです(笑)。
ですから人物デザイン的には、少し逸脱した感じがほしいと考えました。
賭博場での登場シーンでは、
被衣(かつぎ)という薄い衣を頭からかぶって、赤い紗(しゃ)の狩衣(かりぎぬ)を着ています。
時代考証の先生の意見を参考にして、本来の色であるグリーンの狩衣の上に、あえて雅仁らしく赤を着させました。
赤の狩衣の紋様は、鳳凰(ほうおう)の幼鳥である鳳雛(ほうすう)です。
のちに後白河法皇として権勢を握るようになることを暗示的に表現しています。
でも、これは偶然(笑)。ぼくは鳳凰だと思っていましたが、時代考証の先生にこれは鳳凰になる前の幼鳥だと教えてもらいました。
赤い被衣もあえてかぶせました。これは、顔や身分を隠すためというより、より目立たせるためです。もちろん演出的な効果も考えましたが、
彼は「隠れるということは逆に目立つこと」
といった逆説的な自己顕示欲が強い人物ではないかと推察したからです。
髪型は、当時の少年期の貴族では決まり事だった角髪(みずら)というものです。
本来はもう少し短いそうですが、雅仁の人物像もさることながら、松田さんのイメージにあわせて、髪は少し長めにしてみました。
そのほうが、彼のもっている野生というかソリッドな感じにも似合うし、朝廷のはみだし者である雅仁のイメージにも合うと考えました。
光るもの、反射するものは魔よけの意味を持っていたので付けさせました。また、雅仁は芸能や文化に精通していた人物だったので、その象徴としてアクセサリーを身につけさせたいと考えました。そこで、当時は魔よけの意味もあったシルバーをモチーフにして、雅仁のイメージに合わせて作りました。
赤と銀(シルバー)という色彩は、このドラマの世界感全体を貫いている色彩ですが、特に後白河をイメージさせる象徴的な色彩として使っています。のちのちはそこに紫色も加わります。
賭博場で身ぐるみはがされて、清盛に助けられて、清盛の家にいるシーンでは、ベージュの水干(すいかん)を着ています。これは、清盛の水干を借りて着ているという設定ですね。
また、元服のシーンでは束帯(そくたい)を着ています。束帯の色に関しては時代考証的に明確な記述がなかったので、時代考証の先生に当時の絵巻を見ていただき、おそらくこういう色だろうということでベージュが選ばれました。