滋子についてみなさんがお聞きになりたいのは、きっと彼女のヘアスタイルではないでしょうか。
「なぜ、滋子は癖毛なの?」という(笑)。
平安美人といえば、やはり豊かな黒髪のストレートヘアをみなさんは思い浮かべると思います。絵巻物など当時の資料を見るかぎり、上級貴族の間では、ストレートヘアが美の基準だったようです。ではなぜ、滋子を貴族の間で一般的に美しいとされるストレートヘアではなく、癖毛にしたのか?
そこには、後白河の存在があります。
滋子は美人で、気の利く女性で、酒豪であったことでも知られていますが、人物デザインする上で最も重要だったのは、ゆくゆく後白河上皇に入御(にゅうぎょ=嫁ぐ)するということです。つまり滋子は、一般的な人たちの見方や価値観とは違うものをもっていた後白河に気に入られる女性でなくてはならないのです。そういう意味では、
滋子の人物デザインは逆算表現です。
では、後白河に気に入られる女性とはどんな女性か?
それはきっと、宮中に流布されている美の基準から少し外れる女性ではないかと考え、滋子にあえて癖毛という設定をしました。当時の上級貴族たちの美の基準を超えたところに、後白河の美の基準はあったと思う。女だてらに酒豪、でもとても才気があり、気の利く女性。そういう人としての内面に後白河はひかれるはずだということも含め、当時では一般的ではない美しさを滋子では表現しました。
癖毛の女性は、視聴者の方々が思い浮かべる平安美人ではないかもしれませんが、ぼくは美しいと思います。平安時代の美学や美意識とは違うかもしれませんが、美しいと思っています。
衣装的には、パキッとした印象ですよね。それは、補色関係の色使いを採用しているからです。特に黄色と青色にこだわっているわけではなく、色彩的に補色の関係を利用することで発光度を上げています。
遠くから見ても発色のいい人、アクティブな印象を与える女性にしたかったんです。
そこにはやはり後白河的な感覚もあります。
何着も、何着も組み合わせて、この補色の表現に至ったのですが、成海さんにもとてもお似合いですよね。