滋子の婚礼衣装は、
当時の宋の装束が基本になっています。
宋の女性が描かれた絵が残っていて、それを参考にして人物デザインしました。
衣装のデザイン的な要素は資料に描かれた絵にのっとり、白と淡いピンクという全体の色合わせは、滋子でありそれを演じる成海さんに似合うことを優先させました。
白を基調にしているのは現代の日本の婚礼(入内)と印象を混ぜるためで、襟(えり)の紅白の色合わせは日本古来の巫女(みこ)をイメージしています。
ですから、宋風の装束と日本の感覚、そして現代感が混在した人物デザインと言えると思います。
宋の装束は袖がとても長く、滋子が手に巻いているのは袖です。
上に着ている淡いピンクのものは、裾(すそ)の長いベストのようなものとストールです。同色なので写真で見ると1枚に見えるかもしれませんが、ベストとストールの2枚重ねです。
脚本にも「天女のような」という表現がありますが、羽衣のようですよね。成海さんにとても似合っていると思います。
髪飾りも宋の絵を参考にしています。
玉(ぎょく)のかんざしを左右に3つずつ、そしてかんざしとシャクヤクの花を付けています。参考資料が絵なので正確な素材はわかりませんが、おそらく玉は翡翠(ひすい)、かんざしはべっ甲だと思われます、どれも縁起のいいものですから。
髪型については、宋の絵ではすべての髪を結い上げていますが、
あえて後ろ髪をおろして滋子のくせ毛を見せるようにしています。
当時、笑われたり卑下されたりしていたくせ毛を堂々と見せる。これは、滋子のまっすぐな性分やそれを受け入れる後白河上皇(松田翔太)の寛容さや特殊性を表現しています。
くせ毛を隠すのではなく、象徴的に見せながらも美しいと思わせる。
もっと言えば、滋子のくせ毛を美しく見せるための衣装、髪型、髪飾りです。
そういう意味では今回、衣装よりもヘアスタイルを決めるのに時間を費やしました。デザイン画を描くことからスタートし、おろす後ろ髪の分量、髪飾りの配置など、関係スタッフと試行錯誤を繰り返し、ここにたどりついたという感じです。