大河ドラマ「平清盛」

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禿(かむろ)

禿の人物デザインは、脚本家の藤本さんから「赤い羽根の装束にしてほしい」というオーダーが最初にありました。それは、脚本上(そのときはまだ禿を描いた回の脚本はあがっていなかったのですが)、禿の赤い羽根が何らかの演出的な装置になっているということでした。
実は現場の進行上、禿という特殊なキャラクター(しかも集団)を生み出すのに対して非常に差し迫った時間状況でした。そこでまず、水干(すいかん)を赤く染めました。そこに赤い羽根をまんべんなく付けるというのが藤本さんのひとつのアイデアでしたが、それは時間的にも、デザイン的にも、予算的にも(笑)現実的ではなかった。で、どうしよう?と悩んでいるときにパッとひらめいたのがどこか海外で見かけた“サンドイッチマン”です。人の体の前面と背中に宣伝用の看板をさげている、あの姿。1枚の長方形の布の真ん中に穴を開け、そこに頭を入れて前後に垂らす。それが赤い羽根に覆われていれば、法衣(ほうい)のようにも見えるし、肩の部分の形状は狩衣(かりぎぬ)の輪郭のようにも見える。また、さながら赤い羽根でできた鎧のようでもある。「これは、ちょっとおもしろいんじゃないか」「やりきれる可能性があるんじゃないか」と思ったのがきっかけです。

膨大な種類の羽根を置いてあるお店に行って、イメージに合うものを選び、赤色に染めました。パッと見は1色の赤に見えるかもしれませんが、実際は濃い赤、薄い赤、その中間と、3色の赤色で染め、その3種類を使って1色に見せています。この辺は本当にものスゴいスピードで作業をしていただきましたね。実際ぼくらの行動も早かった(笑)。
また、その下に着ている水干も当初は赤い1色でしたが、その後、袖口と裾口に黒のグラデーションを入れました。そのほうが、たとえば両手を広げたときなどに、全体として鳥の羽のように見えるのです。後白河法皇の御前に出ていたときと、時忠の命によって市中を見回っているときは、基本デザインは同じですが、ディテールが少し違っています。

ちょっと余談ですが、ドラマを見ている方にとって禿は、とても不気味で怖い存在だと思いますが、撮影現場では禿役の役者さんはみんな若くて仲が良く、現場をすごく明るくしてくれる存在でした。ぼくは彼らと接しているのがとても好きでしたね。

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