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今だからこそ骨太な『ウィザードリィ』を作りたかった

2006/06/30

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[『ウィザードリィ・外伝 ~五つの試練~ Five Ordeals』インデックス]

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[『ウィザードリィ・外伝 ~五つの試練~ Five Ordeals』公式サイト]
 『ウィザードリィ』とは、人間、エルフ、ドワーフ、ノーム、ホビットといった異なる能力を持つ種族から、戦士、僧侶、魔法使い、盗賊といったキャラクタを作り、最大6人で迷宮を冒険するという1981年に誕生したRPGだ。オーソドックスなRPGでありながら、幾多もの続編が登場し、25年もの間ゲーマーに遊ばれ続けているRPG界の巨頭的作品である。2006年6月8日(木)に発売された、『ウィザードリィ・外伝 ~五つの試練~ Five Ordeals』は、そんな『ウィザードリィ』シリーズの最新作となる作品だ。
  今回、ジーパラでは最新作発売を記念して、本作の魅力をより深く知るべく、制作に関わった様々な方々に直撃インタビューを実施! シナリオ製作者、音楽作曲者、ディレクターなど各方面の達人が語る『ウィザードリィ』制作の世界にご注目。ここでしか読めない貴重な制作秘話も飛び出すぞ!
 開発者インタビュー第一回目となる今回は、『ウィザードリィ・外伝 ~五つの試練~ Five Ordeals』のディレクターを務めた金田剛さん。
(聞き手:忍者増田)

第二回:「成人病にヘビーメタル…実はネタ満載の『Wiz』だった!?」一圓氏・白石氏インタビューはコチラ

聞き手・プロフィール
忍者増田
Ninja Masuda
 フリーライター兼インチキ忍者。かつて某PC誌編集部に在籍し、『ウィザードリィ』の伝道を努めた『ウィザードリィ』大好き男。

新しいスタイルの『ウィザードリィ』がはびこる中、
骨太な『ウィザードリィ』が再登場してもいいのでは!?
金田剛
Takeshi Kaneda
 有限会社59取締役。今作のディレクターを務める。アスキー在籍時は、GB版『ウィザードリィ・外伝』シリーズのプログラムを担当している。

―― まず最初に、今作『ウィザードリィ・外伝 ~五つの試練~ Five Ordeals』(以下『五つの試練』)における、金田さんのお仕事の内容を教えてください。

金田氏:
  マニュアルにはディレクターと書かれていますが、雑用でも何でもやりますよ(笑)。人の手配をしたり、問題が起きたときに最終的に決定をくだしたり……。つまり、買ってくれたユーザーさんはもちろんのこと、今作に関わったすべての人がハッピーになるための調整役ですかね。作り手だけが満足して、プレイしても面白くない、そして商売としても成立しない、というのでは困りますから。

―― 大変でしたでしょうね。前作『ウィザードリィ・外伝 ~戦闘の監獄~』(以下『戦闘の監獄』)から続く、原点回帰といいますか、昔ながらの古き良きスタイルの『ウィザードリィ』を作ることになった経緯を教えてください。

金田氏:
  『ウィザードリィ』って、日本では特殊なゲームですよね。もともとはアメリカで流行っていたゲームなんですが、今はほぼ、アメリカではプレイされなくなっていて。でも、日本ではオリジナルシナリオが出たり、独自に進化しているという。
  今でも年に何作か日本オリジナルの『ウィザードリィ』が出ていますが、僕がアスキーで『ウィザードリィ』を作っていたとき(※1)も、それらと同じような方向性で、なんとか新しいユーザーを獲得したいと思って作っていました。でも現在、ふと周りを見てみると、そういうものばかりになっているなというのを感じたんです。もちろん、そういう新しいスタイルの『ウィザードリィ』もアリなんですが、ここでもう一度コアなユーザーに向けた古き良き『ウィザードリィ』があってもいいんじゃないかと。でも、本当にコアな人たちだけだと商売的に厳しいので(笑)、パソコンの8ビット時代に『ウィザードリィ』をやっていたけど、もう10年以上やっていない、このパッケージ(※2)を見たときにちょっと気にしてくれるような、30代後半~40過ぎくらいの人を新たに取り込みたいなと。パソコンではプレイしていたけど、家庭用ゲーム機ではプレイしてなかった、みたいなね。
  つまり、コアなユーザーに向けた『ウィザードリィ』を作って、それをさらに商売としても成り立たせましょうというのがコンセプトですね。

※2:今作『五つの試練』と前作『戦闘の監獄』のパッケージは、過去のPC版『ウィザードリィ』のイメージで作られている。

―― そして前作『戦闘の監獄』が発売され、好調な売り上げを見せたわけですね。で、今作『五つの試練』では、シナリオが5つ入っているという形になったわけですが……?

金田氏:
  実は「次回作は?」という話があったとき、正直悩んだんです。というのも『戦闘の監獄』と同じスタイルで出したところで、ユーザーが振り向いてくれるのだろうかと疑問に思ったからなんです。
  そこで、新しいスタイルを模索していたわけです。そして、出た答えの1つが、5本のシナリオを5人の方に書いていただく、という現在の形ですね。『戦闘の監獄』の追加シナリオ『~慈悲の不在~ the Absence of Misericordia』(※3)は1,575円(税込)なのですが、これは、最低これぐらいでないと厳しいというギリギリの値段設定なんですね(笑)。そういう値段のシナリオを5本用意すると、大体8,000円ぐらいになる。ユーザー的にも、そのぐらいのボリュームがないと納得しないだろうと。でも、それだけだと単に×5にしただけで芸がない。そこで、今回シナリオライターの方に提供したシナリオ作成ツール(※4)をユーザーに公開しましょうということになりました。そういう経緯で、今のスタイルと価格になったんです。

―― 確かに今作はすごいボリュームですよね。お買い得感抜群。

金田氏:
  5つのシナリオをすべてクリアーするのはきついと思う方もいるかもしれませんが、3ヶ月ぐらいで全部クリアーしなくても、1~2年かけてじっくりクリアーしてほしいなと思います。

※1:アスキーで『ウィザードリィ』を作っていたとき
金田氏は、以前アスキーに在籍し、『ウィザードリィ』の制作にプログラマーとして関わっている。なお、読者の皆さんにはどうでもいいことかもしれないが、奇しくも増田(聞き手)も金田氏と同時期にアスキーに在籍していた。

※3:『~慈悲の不在~ the Absence of Misericordia』
『戦闘の監獄』を持つユーザーがプレイできる追加シナリオ。現在もダウンロード販売中だ。

※4:シナリオ作成ツール
ユーザーが独自に『五つの試練』用のシナリオが作れる、シナリオ作成ツール『Wiz-Scenario Making Tool Ver.1』。8月よりダウンロードにて提供開始予定。『五つの試練』には、このシナリオ作成ツールが無料でダウンロードできる“専用IDシート”が同梱されている。

15年前から『ウィザードリィ』の制作に関わる金田氏
未だに根強くファンに愛される『外伝』シリーズ

―― 少し話はそれますが、金田さんの、アスキー時代の『ウィザードリィ』との関わりを教えてください。

金田氏:
  すごい細かいところで言えば、一番最初は、ファミコン版『ウィザードリィIII~ ダイヤモンドの騎士~』(※5)の修理をやっていました(笑)。カートリッジの電池交換なんかね(笑)。

―― あ、そうだったんですかぁ(笑)。

金田氏:
  プログラマーとして参加したのは、ゲームボーイの『ウィザードリィ・外伝I』(※6)が最初で、『ウィザードリィ・外伝Ⅱ』と『ウィザードリィ・外伝Ⅲ』は、プログラムの他に実質プロデュースも兼ねています。『ウィザードリィ・外伝Ⅳ』と『ウィザードリィ ~ディンギル~』は、純粋にプロデューサーとしての参加ですね。

―― 主にゲームボーイ版に関わられているわけですね。では、金田さんが今までプレイされた『ウィザードリィ』で、一番のお気に入りは?

金田氏:
 お気に入りというか、やはり僕にとって『ウィザードリィ・外伝Ⅰ』というのは、この業界にドップリ漬かり込むきっかけとなったシナリオなんで、忘れられないですね。

―― 拙者も『ウィザードリィ・外伝Ⅰ』には衝撃を受けたクチでして。当時拙者は、「ゲームボーイで『ウィザードリィ』なんてできるの?」と疑ってしまった前科があるんです。心の中で思っただけですけどね(笑)。しかしプレイしてみたら、「あ、実は『ウィザードリィ』って携帯向けなゲームなんだ」と気づかせてくれたシナリオでしたね。オートマッピングが定着したのもあそこからですよね。拙者は多くの『ウィザードリィ』フリークと同じように、シナリオ1が好きなんですが、『ウィザードリィ・外伝Ⅰ』と『ウィザードリィ・外伝Ⅱ』はそれとは別格で好きですね。

金田氏:
  ゲームボーイ版は、逆に携帯ゲームという制限があったおかげで進化したという部分もありますよね。

※5:ファミコン版『ウィザードリィⅢ』
1990年に発売されたシナリオ。ダイヤモンドの騎士の装備を手に入れるのが冒険の目的。“各種族の特性値の上限=種族の基本値+10”というスタイルを採り入れた初のシナリオで、ここから各種族の個性がより強くなった。ちなみに、PC版では『2』にあたるシナリオである。

※6:『ウィザードリィ・外伝Ⅰ』
1991年に発売された、ゲームボーイ版初の『ウィザードリィ』。日本オリジナルの『ウィザードリィ』第1号であり、初のオートマッピング採用や、武器に初めて射程距離がついたことも話題になった。このゲームボーイ版はファンにも高く評価され、1999年に復刻版として『外伝Ⅰ』、『外伝Ⅱ』、『外伝Ⅲ』の3本が同内容で再販されたほどの人気だった。

『ウィザードリィ』ファン待望のシナリオ作成ツール
気になる今後の展開は……?

―― 金田さんが考える『ウィザードリィ』の魅力というのを語っていただけますか?

金田氏:
  いやいや、それは増田さんのほうが詳しいでしょう(笑)。

―― (笑)。ま、拙者的には、キャラクタ育成、レアアイテム探し、緊張感あふれる生死ギリギリの戦闘、シンプルさゆえに膨らむ無限の想像力、こういった4点に集約されるかな、といつも答えているんですけど。

金田氏:
  ええ、もうおっしゃるとおりです(笑)。

―― ずるい(爆笑)。では今度は逃げられない質問をしますね。ずばり、今作『五つの試練』の魅力はどういう部分でしょう?

金田氏:
  1つ1つのシナリオはそんなに大きなものはないですが、5つあるので、飽きずに年単位で、そして自分のペースで遊んでもらえるかなと。

―― 確かに、ドカッと激長シナリオが1つあるより、中くらいのシナリオを小刻みにプレイしていくというスタイルのほうが、飽きず疲れずにプレイできますよね。コアな『ウィザードリィ』ファンは、もうみんなそれなりのお歳になっていますからね(笑)。体に優しい『ウィザードリィ』なのかな(笑)。

金田氏:
  どうでしょうね(笑)。あとはやはり、シナリオ作成ツールですね。『ウィザードリィ』でこういうのがついたのは初なんですが、出すのは最初はかなり迷ったんです。みんなが使ってくれて、いっぱいシナリオが出てしまうと、我々の次の商売がなくなってしまう危険性もある(笑)。だけど我々もプロですし、面白いものを作っている自信もありますから、そういうののせめぎあいでしたね。

―― なるほど~(笑)。

金田氏:
  もう1つシナリオ作成ツールの話をすると、仕様に関しても最近まで迷っていました。このツール、そのまま出すと『五つの試練』と同じようなものが作れてしまうんですが、あまり多機能すぎるツールにしても、一般の方は1本作るのに数ヶ月ぐらいかかってしまうのではないかと。なんでもできるようにすると、作るのも非常に手間がかかるようになってしまうんです。だったら、モンスターとアイテムなんかは、固定にしてしまえという案が出てきた。一番手間がかかるのは、結局モンスターとアイテムのデータ部分なんですが、それをある程度固定にしてしまって、マップ作って、あとは配置だけすればオーケーにしとこうと。

―― 作り方が簡潔になるのは拙者も賛成ですね。結局、どのへんのレベルまで簡潔になるのでしょうか?

金田氏:
  まだ詳しくは言えませんが、みなさんの期待に応えられる仕様にはなると思います。

―― 個人的には、遅れてもいいから、拙者でも作れるような簡潔な仕様を望みます(笑)。ということで、気になる配布予定日のほうは……?

金田氏: 
  シナリオ作成ツールにサンプルゲーム付きという形で、8月中には出せると思います。

―― そうですか。シナリオ作成ツールを使った今後の展開なんかがあれば、聞かせていただきたいのですが。

金田氏:
 うーん、発売元のIRI-CTさんに相談しないと、どこまで言っていいのかわからない(笑)。

―― たとえば、ユーザーが作ったシナリオを募集して、ネットで配布したりできるのかなーと。

金田氏:
 ええ、基本的には、一般に公開・配布するためのサーバシステムも開発提供予定ですので。

―― 期待しております。それでは最後に、『五つの試練』をプレイしているユーザーに最後に一言お願いします。

金田氏:
  末永く遊んでください。あとは、ぜひ頑張って面白いシナリオ作ってほしいですね。増田さんも(笑)。

―― 拙者はどうかわかりませんが(笑)、ユーザーの独創的なシナリオがドンドン登場して、また『ウィザードリィ』が盛り上がることを祈っています。



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