振り込め詐欺:少年検挙数、3年で3倍 「バイト感覚で」
毎日新聞 2013年03月30日 15時00分(最終更新 03月30日 18時24分)
振り込め詐欺に関与したとして逮捕される10代の少年が増えている。警察庁によると、少年の検挙者は昨年までの3年間で61人から167人と約3倍に増加。「受け子」と呼ばれる現金受け取り役が多く、中高生や有名私大生が逮捕される例もある。捜査関係者は「アルバイト感覚で引き受けている。罪の重さが分かっていない」と懸念している。【前谷宏】
「いい仕事がある」。昨年6月、東京都内の居酒屋で働いていた私立大学生(当時19歳)に客の男(30)が声をかけた。男はオレオレ詐欺グループのメンバー。リーダーの指定暴力団山口組系幹部(30)の指示で「受け子」を探していた。
大学生は中学や高校の同級生たちに「黒い集金のバイト」と声をかけ、明治大や法政大などに通う大学生7人を集めた。
その後、学生らは組幹部らの指示で被害者宅を訪問。息子の同僚などを装い、現金を受け取ってはメンバーに渡した。集めた現金は1500万円に上ることもあり、1回数万円〜十数万円が報酬として渡された。
しかし、昨年8〜10月に5人が逮捕され、残り3人も事情聴取された。「夏休みに稼ぎ、学費にしようと思った」「報酬でネックレスを買った」。学生たちはそう供述したという。
警察庁によると、振り込め詐欺で検挙された少年は10年の61人(推計値)から11年に133人、昨年は167人(暫定値)に増加。検挙者数に占める割合も10年の9%から11年17%、12年16%に増えている。低年齢化も進み、今年2月には東京都調布市の中学3年生も逮捕された。
振り込め詐欺で最も被害が多いオレオレ詐欺では近年、被害者から直接現金を受け取る手口が急増。昨年下半期は認知件数の約6割を占めた。「受け子」の需要が増加するにつれ、詐欺グループが少年を引き込む事例も増えているとみられる。
昨年11月には、当時16歳と18歳の少年2人が「受け子」をするため福岡県から上京し、逮捕された。地元の先輩から「集金みたいな仕事」と紹介されたといい、地方の少年を東京の詐欺グループにあっせんする動きもあるとみられている。
捜査関係者は「軽い気持ちで『受け子』になっているが、暴力団員の指示で動くことが多い。高齢者から老後の資金を奪っていることの意味を考えてほしい」と話す。