米國へのテロ事件と眞珠灣攻撃について(平成十三年九月二十五日)

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                                                 中島一光

 米國を震撼させた中樞部へのテロに關して、米國土への奇襲攻撃と言ふ點で眞珠灣攻撃と、また身を捨て

て多くの敵を屠つたと言ふ點で神風特別攻撃隊と同樣のものとして論じられてゐることがある。

 この攻撃の内容、今後の社會に與へる影響等に關して論ずる力も無いし、素人の私が輕々に論ずべきもの

でもないと思つてゐるが、同等に論じられることの不當性について若干の意見を述べたいと思ふ。

 聞くところによると狂信的なイスラム教徒である彼等はアラーの神による死後の救濟(佛教で言へば極樂

淨土へ生まれ變るやうなもの?)を信じて嬉々として命を捧げたとのことである。イスラムの教義を知らず

に輕々に論ずべきではないが、現世の命よりも死後のアラーの神の救濟(御加護?)を重んじた結果の自殺

攻撃であり、眞の意味で身を捨てたとは言へないのではなからうか。

 特別攻撃隊として散華せられた方々は(一般の兵士として戰死された多くの御靈も同じであるが)「死後

に極樂往生出來るから喜んで死ぬのだ」と考へられて死地に赴かれた譯ではない。それどころか(佛教的な

考へから)「このやうに惡念(怨念)を殘して死ねば無間地獄に落ちる」と思ひつつも、「國を危機から救

ふには此の身を捧げるしか道はない、成佛などは二の次だ」との御考へで死後の幸せをも犧牲にされたので

ある。また佛教を引合に出さずとも、武人として最も重んじる名譽すらも捨てる氣で

 命よりなほ斷ちがたき ますらをの 名をも水泡といまはすてゆく(回天隊 久住宏中尉(特進後、少佐))

との辭世を殘して散つて行かれたのであり、死後の安穩と引き換へにして自殺攻撃をしたテロリストと同列

に論ぜられるのは心外である。

 今もなほ死後の魂の安寧を拒否し護國の鬼として留り續けてをられる御靈は、國の爲に身を捨てて敵艦

(放置すれば味方の罪もない一般人を殺す可能性がある敵兵が乘り組んでをり一般人はゐない)へ突入され

た行爲と無辜の(罪の無い)一般人を標的としつつ自分はアラーの神のもとに召されることを信じて行つた

單なる自殺攻撃を同列に論ぜられることに憤つてをられるであらう。

 多少骨のあると思つてゐた週刊誌ですら今囘の單なる自殺攻撃を安易に「カミカゼ」と記すなど、表面的

に見てゐるのは殘念であつた。このやうなことが原因で特別攻撃隊を始めとする護國の御靈の崇高な行爲が

打算的自殺行爲と同一レベルで論じられるとしたら心外であり、その責任の一端は「今まで御靈の崇高な行

爲について正しくかつ解り易く説明してこなかった我々にも責任がある」と痛感してゐる。

 次に眞珠灣攻撃との對比の問題であるが、既に多くの識者の常識となつてゐるやうに、「ルーズベルトが

あらゆる手段を用ひて日本に先に攻撃をさせるやうに仕向けた謀略」であり、ハルノート等「歐州の小國で

すら矛を取つて立上がつたであらう」とすら言はれた屈辱的な仕打を受けて立上がつたものである。

 宣戰布告の無いまま攻撃したとの批難があるが、これは今も變らない外務省の出先機關の不手際(外交感

覺の無さを含む)によるものであり、政府は攻撃前に手交するためにあらゆる努力をしてをり、また米國は

暗號文を解讀してをり十分に警戒警報を發せられたのに敢へて日本に先制攻撃をさせたのである。

 一市民がパールハーバーと同じだと叫ぶのは知らざるが故として放置してもよいかも知れないが、米政府

高官がパールハーバーのパの字でも口にするやうであれば、今囘もまた「米政府の謀略?」と疑はれ各國か

ら猜疑の目で見られることもあるので心した發言をされるやう望む次第である。

 それはさて置き、今囘の事件での米國人の結束を見て「一撃により多くの艦を沈めることにより米國民の

戰意を喪失させ早期停戰を實現するとの思ひで知米派?の山本五十六大將が考へた眞珠灣攻撃作戰が戰略的

には失敗であつた」との説に裏付を見た思ひがした。來冦する米艦隊を漸減しつつ日本近海で艦隊決戰を挑

むとの從來方針を貫いたならばより優位な戰ひをすることが出來、媾和するにしてももつと有理な條件で出

來たのではないかと思つた次第である。

 米國の制裁行動がどのやうなものとなるか不明であるが、空爆では地下に隱れた相手を確實に殺すことは

困難であり、地上軍の投入は地の利を得たゲリラの術中に嵌まるだけである。忍者の里である伊賀の攻撃の

際や一向一揆の立て籠る長島を攻略した織田信長軍のやうに結果的には目的を達するかも知れないが、力攻

(ちからぜめ)による損失は多大なものがあると考へる。

 金と時間は有るのだから、秀吉の故智に因んだ包圍交通遮斷による干殺し作戰が有效なのではなからうか。

周圍に支援國が無い筈なので國境を遮斷し、降伏して出て來られる場所は限定して、その他の場所や目的で

出ようとする者のみ空爆(へり等による對地攻撃)により徹底的に叩くことにすれば、内部に侵攻するため

の地上軍は必要なくまたゲリラ側からの攻撃は有利な隱れ家から出ることになり彼等の地の利の優位性は無

くなるであらう。

 この方法は短期的に見れば何等の成果は無いやうに見えるが、早晩食糧が盡き放置すれば餓死してしまう

ことである。指導者の地下壕には何年分かの食糧が蓄へられてゐるとのことであるが、兵士に對する食糧は

限りがあり全兵士に供給したのでは忽ち底をつくであらうし、自分達のみ獨占したのでは反感を買ふことに

ならう。

 餓死させるなど人道に反するとの批判もあらうが、武器を捨て降伏するために出て來た人には十分な支援

をし、敵對する者のみを懲しめる手段とするなら問題は無いと考へる。また無用な血を流す必要も無くなる

であらう。

 この作戰の要諦は「周邊國全ての協力」であり、一箇所でも拔けが有れば效果はなくなることである。

今囘のやうに少なくとも表面的には全世界が一致して批難しない限り成立たず、彼等を支援する目的で物資

を運搬しようとする者に對して攻撃してもどこからも文句を言はれないやうな状況下に於いてのみ可能であ

り、通常安易に用ひることが出來る方法ではない。

 また時間もかかるものであり、その間世界輿論を味方に付け續ける努力が必要であり、獨善的な行動で顰

蹙を買つた時點で蹉跌が考へられる。環境問題等で獨善的な態度が見られる米國が輿論に配慮した行動を取

り得るか否かが作戰の成否を決定すると思つてゐる。これに成功すれば眞の世界協調が實現するであらうが、

單なる力攻によるのであれば多くの流血の上に微々たる成果が得られるに過ぎないであらう。

 犧牲者に對する哀悼の念は誰にも劣らないつもりであるが、今囘はこの事件が原因で誤解され兼ねない

神風特別攻撃隊を始めとする護國の御靈への侮蔑とも成り兼ねない記事等に反論すべく筆を執つた次第であ

り敢へて哀悼の言葉等は省かせて戴いた。

 

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