米、韓国との演習にステルス爆撃機 「対北」軍事圧力を強化
産経新聞 3月30日(土)7時55分配信
【ワシントン=犬塚陽介】オバマ米政権が北朝鮮への軍事的な圧力を強めている。米本土を防衛するミサイル防衛(MD)の強化を打ち出し、米韓合同軍事演習にはステルス性能を持つB2爆撃機を投入した。B2は北朝鮮の長距離弾道ミサイル射程の圏外とみられる米内陸部から離陸し、朝鮮半島で爆撃訓練を終えてそのまま帰還した。有事の即応体制を誇示することで、北朝鮮だけでなく、米軍の東アジア展開を警戒する中国に対し、情勢の打開に本腰を入れるよう警告する意図も見え隠れする。
ヘーゲル米国防長官は28日の記者会見で、北朝鮮による「挑発的な行動と好戦的な語調が危険を高めている」と批判。金正恩第1書記ら北朝鮮側の言動を「真剣にとらえる必要がある」とし、「最悪のシナリオ」を想定しながら警戒を強化する方針を示した。
米国の専門家の間では、北朝鮮が米本土を攻撃できるミサイルを実際には配備していないとの見方が支配的だ。むしろ、挑発行動がエスカレートし、局地的な戦闘に発展して歯止めが利かなくなる事態への懸念が広がっている。
このため、米国は今月に入り、圧倒的な軍事力を誇示して北朝鮮の挑発を封じ込める姿勢を明確にしている。すでに核が搭載できるB52戦略爆撃機を米韓合同軍事演習に参加させ、28日には通常なら展開状況を公表しないB2の訓練参加をあえて発表した。
B2は北朝鮮から1万キロ以上離れた中西部ミズーリ州を離陸し、黄海で爆撃訓練を実施して帰還。北朝鮮の長距離ミサイルは射程1万キロと推定されており、仮に配備したとしても米国の即応、急襲体制に影響がないことを誇示した形だ。
外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)によると、今回のB2の訓練費は550万ドル(約5億2千万円)以上。国防費削減を強いられる中での「法外な出費」が、オバマ政権の強い姿勢を示している。
B2は1999年、北大西洋条約機構(NATO)軍による在ベオグラード中国大使館誤爆のさいにも使用された。標的を取り違えて誤爆となったが、投下した爆弾は設定通りに目標をとらえたため、「正確な誤爆」とも呼ばれた。
オバマ政権の政策決定に影響力を持つ新アメリカ安全保障センターのクローニン上級顧問は、B2の黄海への飛行が北朝鮮に加え、中国にも心理的な影響を与えると指摘。国連決議に基づく経済制裁を履行し、挑発の停止に向けて影響力を発揮するよう迫る「メッセージ」が含まれているだろう、と分析している。
最終更新:3月30日(土)8時58分