福島産野菜:値崩れ拡大 セシウム規制強化、なお風評被害
毎日新聞 2013年03月29日 02時30分(最終更新 03月29日 02時35分)
全国の取引価格を事実上決める東京都中央卸売市場で、福島県産野菜が東日本大震災から2年目の12年度、震災1年目より大きく値崩れした。国は昨年4月1日、食の安全安心を回復しようと食品中の放射性セシウムについて1キロ当たり100ベクレルの厳しい基準を導入した。しかし、この1年間で風評被害は逆に強まったと言えそうだ。
都中央卸売市場の野菜の取引で、全国▽東日本産▽西日本産▽福島産−−の4種類の平均価格(年間に売買された合計金額を総量で割ったもの)について、毎日新聞が09年度を基準に増減率の推移を調べた。
震災1年目の11年度を見ると、最初の三つは09年度を4%前後上回ったが、福島産は5%減。震災2年目の12年度では、全国は09年度比0.2%減とほぼ同じ価格だった。ところが、福島産は同年度比18.7%減で、落ち込み幅は拡大した。
10年の農水省の統計などによると、福島産野菜は全体の出荷量の2割強が、都中央卸売市場で取引された。
値崩れについて東京都内で野菜を扱う市場関係者は「今も売れない。西日本では『一切受け付けない』というスーパーもあり、値がつかない」と証言。「放射性物質の影響が分からない段階で暫定規制値を定め、消費者に不信感が広がった。新たな基準値も信用されていない」と国を批判する。
国が震災直後に定めたセシウムの暫定規制値は1キロ当たり500ベクレルで、「甘すぎる」と消費者団体などから批判を浴びた。これを受けて新基準値を設ける際、国は「厳しい基準で風評被害が収まり、産地も消費者も守られる」としていた。
厚生労働省によると食品で当初の暫定規制値を超えた事例は1204件(震災直後〜12年3月末)。今の基準値を超えた事例は2198件(同年4月〜今年2月末)と増えたが、きのこ類や野生の鳥獣などが大半で、食卓への影響はほとんどないとされる。【町田結子、神足俊輔】