◇ソフトバンク7−1楽天
東北楽天ーソフトバンク 開幕投手として堂々のピッチングを見せる東北楽天先発の則本=ヤフオク
|
 |
ソフトバンクは3回に細川が逆転2ラン。7回に本多の満塁本塁打、8回はラヘアの二塁打で加点した。摂津が6回まで1失点で2年連続開幕戦勝利。楽天は3回に先制したが、その後は打線が沈黙。先発の新人・則本は7回につかまった。
魔の1球。これがプロの世界だ。新人として29年ぶりの開幕投手を務めた則本が1発に泣いた。7回途中まで被安打6。最速150キロの直球を軸に攻め続けた。致命傷となったのは、細川に浴びた3回の2ラン。それでも、鮮烈な印象を残したデビューだった。
「任されたからには勝ちたかった。試合が1球で変わるということを肌で感じました」。58年の杉浦忠(南海)以来となるルーキー開幕投手の白星はならなかった。先制した直後の失点。三重中京大からドラフト2位で入団した右腕は悔しさを隠さなかった。
チームの将来を託された。則本の開幕戦先発。理由を聞かれた星野監督は、「楽天の夢」と答えた。創設9年目の球団にとっても、3年契約の最終年を迎えた指揮官にとっても、リーグ制覇は悲願。エース田中に続く先発の存在なくして、その道を歩むことは難しい。則本には、その「夢」が預けられた。
観客席には滋賀から両親も駆けつけた。開幕投手に指名された27日、母・美奈子さん(50)の携帯には則本からメールが送られてきた。「29日に投げるし」。素っ気ない文章。事の重大さを理解できなかった美奈子さんは、思わず「どこで?」と返した。
新人離れしたマウンド度胸は、大舞台でも変わらなかった。逃げず、恐れず。真っ向勝負でソフトバンク打線に立ち向かった。敗れても、指揮官の表情は穏やかだ。「よう投げたよ。立派なもんだ。次が楽しみだな」。夢の続き−。福岡の夜、則本は確かな光を照らし出した。 (井上学)
この記事を印刷する