２００６年 日本ドラマ
脚本：古沢良太
監督；西山太郎
出演：水谷豊、寺脇康文、鈴木砂羽、高樹沙耶、山西惇、川原和久
ゲスト：原千晶、誠直也、亀石征一郎、藤間宇宙
テレビ朝日放送を視聴。
伊丹憲一刑事（川原和久）と亀山薫（寺脇康文）が道場で剣道の稽古。
強い伊丹。弱い薫。しかもヘトヘト。
伊丹に”未熟者”と蔑まれる始末。
傍らには横目でそれをチラチラ見ながらあきれた様子で本を読む杉下右京（水谷豊）がいる。
”君は無駄な動きが多すぎますよ。構えを崩すことは隙を作ります。僕は剣道も達人なんですよ。”という右京に、薫は
”そーですか。”とまともには反抗しない。
剣道が得意な伊丹も尊敬している剣道の達人・吾妻（誠直也）が真剣で斬殺された。
吾妻が経営する道場・吾妻心聖館の師範代・ふみ（原千晶）は右京と薫に、用具室には居合い用の剣が二本無くなっているが、それ以外に変わった点はないという。
そこにやってきた伊丹が捜査に乗り出した右京たちを問いただすと、
右京 ”剣道の達人が一刀両断に殺された、好奇心が抑えられませんでした。”
伊丹 ”好奇心とは何ですか！ 興味本位で首をつっこまれると不愉快です！”
右京 ”（薫に）叱られました。”
薫 ”ですね。”
吾妻が経営する道場・吾妻心聖館の師範代・ふみ（原千晶）らは、吾妻とまともに立ち合って勝てる者などいないという。
もうひとりの師範代・望月（市川勇）でも無理だ。
吾妻の一人息子・俊一（藤間宇宙）は喘息があるため、剣道はやらないという。
吾妻と立ち合うという果たし状のような覚書を交わした吾妻の親友・関（亀石征一郎）が逮捕された。
”武士道は死ぬことと見つけたり” という関は、病院のベッドで死ぬなら、と吾妻に剣で挑み、不覚にも勝ってしまったという。
関はすでに現役剣士とはいえない。そんな関に吾妻を斬ることなど・・・。
関の実力を知る伊丹は納得がいかない。
伊丹がなんと、右京、薫夫婦行きつけのたまきの店に顔を出した。
偶然を装いながらも、鑑識の米沢からこの場所を聞いてわざわざやってきたのだ。
各自のひとりごとで会話をするまどろっこしいやりとり。
美和子が、”ちょっと、なんなんですか、この面倒くさい会話は。” とあきれる。
不本意ながら自ら捜査できない伊丹が、それとなく右京と薫に捜査を極秘に依頼しに来たのだった。
そんな伊丹が言うには、道場に来る前、傷害などで逮捕歴があるふみが怪しいとか。
しかし、ふみの父親が警察庁の警備局長であることから捜査一課には事件を蒸し返すなという空気が漂っていたのだ。
薫は嫌味をいう。”それでおとなしく引き下がった訳だ。”
伊丹 ”なんとでも言え！”
薫 ”尊敬する先生だったんだろ。もっと骨のある奴だと思ったけどな！”
伊丹 ”負ける勝負には出ない。引くときは引く！ （札を惜しげに出して）釣りはいい！”
と言って伊丹は店を出て行った。
たまき ”変わった方ですね。”
真剣な顔つきの薫と美和子が同時に２回うなずく。
早速、右京と薫がふみに会いに行く。
薫がふみに稽古を依頼する。
”大丈夫ですか”と心配する右京に、”強いったって女性ですからね。ふっとばされることはないでしょ。”
ところが道場で壁にふっとばされる薫。”まいったー。”
右京が一言。 ”君は期待を裏切りませんねー。”
ふみ ”亀山さんは無駄な動きが多いようです。無駄な動きはそれだけ攻め込まれます。”
薫 ”おんなじことを言われました。こちら（右京）の達人にも。”
右京と薫は、吾妻が決闘を前に死後の資産処理もしていなかったことに疑問を抱く。
しかし、ふみも俊一も覚書がある以上、２人が決闘し吾妻が斬られたと信じて疑わないようだ。
これからの捜査協力をお願いすると、俊一が薫の手を取り、”よろしくお願いします。”
”まかしといて下さい。”という薫は手を握り返す。
覚書からスルメイカを焼いたときに出る油のシミが見つかった。
酒に酔うと掛け軸の模写などもして遊んでいた吾妻と関。覚書もそんないたずら心で書かれたものではないかと右京らは推理する。
そんな疑問をぶつられたふみは、自分を疑っているのか、と右京に迫る。
剣の実力は館長の足元にも及ばないというのに、と不満を口にするふみに、右京は ”殺意を抱いていれば殺せる、抱いていなければ殺せない。問題はそこなんですよ。” と切り返す。
師範代の望月が勤務する会社が吾妻の道場を買収する予定であることがわかった。
道場の名前は残すが、事実上その歴史は幕を閉じる。
望月によると、吾妻と結婚を前提に付き合っていたふみは道場の売却に猛反対だったらしい。
吾妻心聖館館長夫人という肩書きが手に入らない。
ふみがそんな風に思い、吾妻を恨んでいるとしたら・・・。
そんなとき、右京と薫は刑事部長から、二度と道場に行くな！、ときつく叱られる。
しかし、彼らは怯まない。
薫 ”どうするんですか？”
右京 ”攻め込みますよ。”
薫 ”おっ。大丈夫ですか。”
右京 ”糸口は見えています。”
館長夫人に収まるという夢が破れたふみによる犯行ではないか。
右京と薫はふみに自分たちの推理（殺人現場の道場の床がきれいに拭きとられたようにみえることと、用具室の雑巾が新しくなっていたことの関連性）を突きつける。
ふみがいろいろと言い訳をし、辻褄が合わなくなると、薫が一言。
”余計なことをしましたね。無駄な動きは・・・” （攻め込まれる隙をつくる。）
ふみは開き直り、証拠がないと否定する。
しかし、関が着ていた吾妻の返り血がついた剣道着を調べなおし、ＤＮＡ鑑定すれば本当は誰が着ていたものかも判明する。
右京が切り札をきると、意外にもふみはあっさりと自供する。
”降参。お二人のおっしゃる通りです。私がやりました。”
しかし、右京と薫は、なおもふみに厳しく迫った。
”本当のことを話してくれと言ったんです。”
実は犯人はその場に現れた息子の俊一だった。
偉大な父の存在を常にプレッシャーに感じ、次第に心の殻の中に閉じこもるようになってしまった俊一。
今では自宅の部屋が唯一の安らぎの場となっていたが、それも父は望月の会社に売却してしまった。
それも吾妻が俊一に強くなって欲しいと願っていたからこそ。
そんな父の思いを知った俊一は、精神的に追い込まれつつも夜毎刀を振り自らを鍛えていたという。
そして、事件の夜。
俊一は自ら稽古をつけてくれと願い出たが、やはり自らの弱さをさらけ出すことになり、刀を振り回すうちに父を斬ってしまったという。
斬られた吾妻も息子を追い詰めた責任を感じていたようだ。
俊一は、関とふみに相談し、俊一に疑いがいかないように事件の事後処理をしたのだ。
”あなたに対する贖罪の想いが、館長を一瞬、剣聖ではなく、ただの無防備な父親にしたのかもしれませんね。”
右京の言葉が道場に響き渡り、ふみの心にも染み渡った。
若君の犯行を庇おうとする関とふみは、甚だ考え違いをした行為だと言う右京と薫。
しかし、ふみは俊一を精神的におかしくしてしまった責任を感じていたことを語るのだった。
そのとき俊一は最後にしっかりと言う。
”（犯人は）僕です。悪いのは誰でもありません。卑怯にも逃げ隠れしました。申し訳ありませんでした。”
俊一が伊丹たちに連行された。
ふみがいつから俊一が犯人だと気付いたのかを問うと、最初に彼に目をつけたのが、なんと薫だったのだ。
俊一が薫の手を握ったときに、剣道をしないはずの俊一に竹刀の持つ手豆があったという。
もしかすると、そのとき俊一が罪を告白しているつもりだったのかもしれない、という右京。
犯行を隠そうとしたふみにも当然罪が問われる。
連行する前に右京とふみの剣道の稽古。まき技で右京の勝ち。おそるべき右京でした。
大福には見向きもしなかった右京が、伊丹の事件解決のお礼（貸し借りなし）のメロンにはうっとり。
さすがメロンの威力。
（テレビ朝日の公式ＨＰをもとにブログ用に改修しました。）
尊敬する剣士が殺されたとあって、今回の伊丹の表情が引き締まっていて、今までとは違った雰囲気が漂っていました。
凛とした女剣士の原千晶がとても格好良かったです。
俊一の心の病は実感がありました。
悲しい結末ですが、彼の最後の言葉は彼の未来への希望を感じさせてくれます。
2006/11/22 ★★★★☆ （評価：4 /5）
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