インタビュー - 髙橋 大輔
——いよいよ来季は五輪。いままで2回の五輪前とは違う心境ですか。
トリノ五輪は、2005年の世界選手権が終わってから五輪に行きたいなって思って、気持ちの準備を始めたのが五輪シーズンになってからでした。バンクーバー五輪は前年に怪我して休んでいましたから、準備は五輪シーズンだけ。だから今回は、3年前から気持ちとしては準備していることが大分違います。
——やはり五輪って、特別ですか?
やっぱり五輪は違います。空気感が違います。選手もジャッジもみんないつもと一緒の人なんだけど、でもあの空気感はぜんぜん違いますね。
——トリノ五輪はどんな感じでした?
もう訳が分からなくて、何か背負っているという気持ちは薄かったです。五輪に出れる喜びでワーってなって終わってしまいました。
——バンクーバー五輪は?
あの時は怪我から復帰して時間がなくて一気に準備して、勢いもあって五輪を楽しもうと思っていました。正直なところメダル自体は、行けるかな、いや厳しいなと思っていましたから。でも今回の方がもっとメダルは厳しい気がしてます。
——バンクーバーでは4回転を成功しなくて銅メダルだったんですから、今の状態ならさらに上を狙えるのでは?
あのシーズンは4回転を一度も降りませんでしたが、でも皆もやらなかったから。今みたいに4回転3本が当たり前なのとは状況が違います。
——そういえばカナダでのインタビューで『来年が最後になると思うので』と微妙なニュアンスの話をしていましたが、引退しない可能性も出てきた?
来年が絶対に最後、と明確には言ってないんです。最後と思ってやる、と話したのですが・・・(苦笑)。そこまでと期限を決めて、もう十分と思えるようにやってる。だから来年終わって、ああもう出来ないって思えば辞めます。たぶん来年以降はもうやらないけど、人生何が起こるかわからないから。
——そうでしたか、つい期待しちゃいました。五輪ではどんな演技を?
出場することが叶ったら、自分自身が感動できる演技ができれば良いなと思います。もう全部出し尽くしました、というものを。ミスがある無しではなく、何とも言えない、会場が一つになった、みたいな空気感を感じられたらいいなって。何とも言えない繋がっているような空気感です。
——今度の五輪は、どんな五輪になりそうですか?
出場はまだ決まっていませんが、今度挑む五輪への道は、自分の人生の次のスタートになるものです。引退後にどういうスタートを切れるかが、五輪にかかっている。だから最後だけど最初みたいなものだと思う。僕が、僕のやりたいことを始めるためのスタートなんです。
(2013年3月19日、世界選手権の帰国日に取材)