セカイは核の炎に包まれた……
蘇った死者に食い殺されるより、自らの故郷に放射能まみれの大浄炎を放つことを決めたのだ……
だが、人は衰退し文明は滅びたが、人という種は生き延びた。
劣悪な環境に適応しながら人類は再び数を増やし、歴史を刻み始めた……
この物語は滅びの記憶を誰もが遠い時間と空間の彼方に置き忘れた、極東の島国より始まるのだった……
作者注:
この前書きは明らかなシリアス成分の誇張、並びに過度の中二病成分が含有されています。
また、本編は前に短編に連載した物を再編した物ですが、400字詰め原稿用紙1枚以上のバカとカオスが増量されていますm(__)m
01本目: "東條英美の憂鬱"
さてさて、話をどこから始めようか?
繁栄を誇った人類がバイオハザードで滅びかけたとこから始めようか?
それともゾンビに喰われて衰退した人類が、死なばもろともで核兵器を使ったところから?
あるいはようやく核汚染を抜け復興しかけた頃に生まれたいくつもの"救世主伝説"の話をしようか?
嗚呼……
それらはきっと目を見張る物語だったに違いない。
しかし、遠すぎる。
その時代を知る語り部は、既にこの世にはいないだから……
何故なら、今の時代は……
**********
聖歴(聖人歴)1936年
大和帝国皇紀2596年
大和帝国
帝都"東京"
永田町、首相官邸
「ねえ、"しゃむ"」
「なんにゃ? ごしゅじんしゃま♪」
日本庭園風の庭を見ながら、縁側のように作られたスペースで二人の"ようぢょ"がピトっとくっついていた。
一人は丸眼鏡に黒髪お下げ。
歳の頃ならランドセルをギリギリ背負えるお年頃。
いや、それともスモックの方が似合うだろうか?
ともかく、現代日本なら立派に【レッドデータ(絶滅危惧)・ようぢょ】に認定されるだろう。
でもスモックもランドセルもオプション設定されてなく、代わりに着てるのは無粋な軍服。
オマケに階級章に描かれたサクラを見る限り、【帝国陸軍元帥】……
同じく現代日本なら、
『お嬢ちゃん、どこのコスプレショップで買ったんだい? あんまり似合ってないね……そうだ! お兄さんがキミに似合う服を……ハァハァ(;´Д`)』
と言った途端に「お巡りさんコイツです!」とポリスを呼ばれた挙げ句、肩に下げたカラシニコフでファッ○されるパターンだ。
何か現代日本と違う国のような気がしないでもないが、特に気にしてはいけない。
そしてもう一人……というか一匹?は問答無用の"猫娘"だ。
ピンクの髪にシャム猫柄の尻尾と猫耳……
体格はガネッ娘といい勝負。
ガネッ娘にぴとっと張り付いて、ゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らしていた。
それにしても、露出の高い衣裳だ。
ぶっちゃけ、下着と大して違いはない……というか下着なんじゃないだろうか?
「ひでみん、今から"天ちゃん"のとこに行こうと思うんだけど一緒に来る?」
すると、"しゃむ"という名前(?)らしい猫娘は不思議そうな顔をして、
「天ちゃんのお城にゃ? お土産はドラ屋の羊羮にゃ?」
「うん。天ちゃん、ドラ屋の羊羮好きだし……お年賀にね。ほら、天ちゃんって年末から三が日にかけてイベントづくしでロクにご挨拶も出来なかったし」
「イベントって、晴海とか幕張とか有明とかでやってる奴かにゃ?」
「似たようなもんかな?」
そんな時に、
「コラコラ。"英美"、国事と民間イベントを一緒にすんなつーの」
いつの間にか部屋に入ってきたいたのは、楽に身長が190cmは有りそうな筋骨隆々としたマッチョな大男である。
☆☆☆
英美……それがガネッ娘の名前らしいが、そのマッチョメンは彼女とは対照的に大和帝国陸軍の制服を立派に着こなしていた。
ただし、総合格闘技のオクタゴンリングの上で格闘家ルックの方がより似合いそうではある。
「あっ、"カンちゃん"」
男の名は【石原完治】。
なんと我らが大和帝国陸軍最高司令官であらせられる。
歳の頃なら見た目は20代後半っぽいが、実際の年齢はその三倍近い。
それにも理由はありそうだが……
「それと我が国の"帝"を掴まえて"天ちゃん"はね〜べさ」
しかし、真に驚くべきは……
完治と英美が"同年代"であるという点だろうか?
「いーじゃん。天ちゃんだって、それでいいって言ってるし。本人、只でさえ生き神様扱いされてんのに、親しい者からの呼び名まで畏まられると、地味に年齢思い知らされてヘコむらしいし」
「年齢って……あのお方って、確かもうすぐ2600歳だろ? 世界の長寿記録を毎年更新してるっていう」
「一応、2600歳になったら"紀元節"って大きなお誕生日のお祭りも企画してるけどね〜。同じ年にちょうど東京オリンピックもあるし、予算も通りやすいと思うのよ」
わりと金勘定に細かい……いやいや、しっかり者の英美である。
☆☆☆
大体予想はついたと思うが、英美としゃむの言う"天ちゃん"とは大和帝国"天帝"
、
【天照大帝】
の事である。
生まれは紀元前660年というトンでもない人物で、遥か西方から流れ着いてこの極東の列島で国を立ち上げたらしい。
何度かの成功と失敗を繰り返し、この島国に来てから1000年を経て"大和朝廷"と確実な権力構造を構築した。
しかし、国家規模の拡大につれて朝廷では事務処理が追い付かなくなり、そこで天照は一計を案じ、自らを権威の象徴"大帝"として神格化し取り巻きを"神道"という宗教団体に纏めた後に、権力(実務)を分離させる事に決めたのだ。
そして、大帝から権力を委託された内政に特化した政治外郭団体こそが"幕府"だ。
ちなみに天照の当時の愛読書の中に、
ローマ皇帝府発行
【サルでも判る十字教入門】
があったのは国家機密である。
☆☆☆
だが、時の流れにより周囲の国家は国際化の流れとなり、内政に特化した幕府では政務が手に余るようになってきた。
そこで天照は当時の幕府首班"徳川将軍"や幕閣僚と話し合い、幕府を発展的解消。
より規模を拡大し、普通選挙制度を導入して広く人材を募る"政府"の立ち上げを企図する。
それが今から約70年前の話。
こうして現"大和帝国"が樹立したのだ。
そして、今……
その大和帝国政府の頂点にいる存在こそが、ガネッ娘ようぢょ……に見えるが、実は石原完治と同年代の彼女、内閣総理大臣
【東條英美】
であった。
**********
帝国では、特に現役軍人の入閣に対する規制は無かったので、彼女はわりとあっさり政治家になった。
いや、特に軍政家に興味があった訳じゃないが、周囲の薦めとノリで決めた(笑)
この時の彼女の公約に掲げたのは、
【男女恋愛結婚均等法】
である。
公約を要約すると、
【性別年齢種族血縁身分その他一切合切の諸々の恋愛と結婚に関する制限を、一度に撤廃する】
という凄まじくラディカルな法案だ。
もちろん、
「ひでみんは思うんだけど……恋愛と結婚くらい自由でいいんじゃない? ただでさえ世の中不自由なんだからさ」
というノリと思いつきで決めたのだろう。
しかし、英美の複合公約……通称【ひでみっくす】は誰もが思うよりがっつり民衆の心を"はぁと☆きゃっち"した。
特に軍部のシンパと民間人の一部の圧倒的支持により、あっさりと英美は当選。
以後、彼女は軍人と政治家の二足の草鞋を履くようになったのである。
☆☆☆
時の政府は、支持率低迷を回復したくて人気のある英美を取り込みに走り、国防大臣として入閣させた。
当時の犬飼内閣は、【ブリティッシュ魏】と【ゲルマン呉】との大陸との外交交渉に失敗し、友好関係にあったのは【ソビエツカヤ蜀】くらいだった。
まあ曹カレンや孫シュトーレン(というか宰相の周メリーアン)が相手じゃ、やり込められるのも無理も無いだろう。
普通、ゲルマンが魏でブリテンが呉のような気もするが、どうしても帝政ロシア改め【ソビエト社会主義帝国(ソーシャル・ソビエト・インペリアル:SSI)】の南下を抑えたいブリテンには、選択肢など無かった。
対してブリテンとも張り合いたくて張り合いたくて仕方のないドイツ・ゲルマン帝国は呉と接触した。
これが後に大陸で何よりも恐れられる【江東の"虎"戦車】の入手フラグになるのだが……それはまた後の話。
ちなみにシュトーレンは、真っ赤に塗った装甲服とMG34機関銃が大のお気に入りらしい。
蜀は何と無くソビエトと地理的に近かったから……だろうか?
あと、ソビエトの大粛清の際、国外追放された"きょぬー娘"達の受け皿になったのも大きいかもしれない
更にタイ王国を除くインドシナ半島は【フレンチ南蛮】という何だか妖しい創作料理っぽい名前になってしまってる。
☆☆☆
どうやら日本人というか大和人の外交下手はDNAに刻まれたものらしく、中々に後手後手に回っていた。
国民支持率は鰻下がりで、これじゃあまずいと英美を入れたのだが……
英美が公約に掲げた【男女恋愛結婚均等法】が、「ラジカル過ぎる。十字教徒を全てを敵に回しかねない。」と成立しなくなった途端に……
クーデターが起きた(汗)
世に言う【2/26事件】の始まりだった。
**********
『私は信じていたのですよ……理想を……いつかショタが市民権を得られる日を……後ろ指さされずに坊っちゃまと交際できる日を!!』
『その為にいくつも冷たい朝を、血塗れの夜を越えてきたというのに……それを……それを!!』
これは、わざわざ南米から坊っちゃまをひっかついで南太平洋戦争の帝国海軍基地(正確には隣接する海軍街)に逃走(二人に言わせれば愛の逃避行)して帝国に亡命した人狼族のメイドが、2/26事件で火打銃片手に大暴れした時の台詞である。
『アンダルシアの名にかけて……全ての不義に鉄槌を!!』
あと騙されてはいけないのは、彼女が血塗れにして冷たい肉体に変えたのは、坊っちゃま奪還を依頼され返り討ちにされた哀れな南米マフィアである。
どちらかと言えば身分違いの恋に堕ち、坊っちゃまひっさらって駆け落ちしたメイドの方がよっぽど不義のような気もするが……そこはツッコんだら駄目なのだろう。きっと。
とりあえず、メイドに挽き肉や細切れにされたマフィアに合掌。
すまない。
クーデターは正解では無かったかもしれない。
正しくは"叛乱"で、それを鎮圧すべき軍や警察の英美シンパが煽動したからクーデターになった。
それだけの話だ。
☆☆☆
結局、クーデターは帝国放送協会(THK)を占拠したクーデター軍により、犬飼首相が
【犬娘に逆さ亀甲縛り&蝋燭/鞭責めされて、白濁液を撒き散らしながら逝ってしまう】
という醜態が全国ネットで中継され、『犬飼が犬に飼われた』とか『犬飼が飼い犬に手を咬まれた』と"社会的な死"を迎え、犬飼内閣は退陣に追い込まれた。
そして軍部民衆の一部圧倒的な支持を後ろ楯に
【東條内閣】
が誕生したのである。
ちなみにこのクーデターで大きな役割を果たしたのは、
【恋愛と結婚の自由を求め、日本に政治亡命した元外国人】
であることは追記しておきたい。
**********
「神田には美味しい天麩羅屋さんがあったから、帰りに"特大エビ天丼"食べてこよっか?」
「にゃ〜ん♪ ごしゅじんしゃま大好きにゃん☆」
更にギューギューゴロゴロする"しゃむ"の頭をナデナデしながら、英美は『流石は帝国の誇る二大マスコット……威力がマヂぱねぇ……』とボソボソ呟いてる完治に、
「カンちゃん、悪いんだけどひでみんが帰ってくるまでに、"恋歌"(牟田口恋歌:英美の筆頭秘書官)とか"志摩っち"(酒井志摩:陸軍機甲総監)とか集めておいてくれる? あと、"てっちん"(永田徹子:陸軍首席参謀)に"やすなん"(山下泰奈:陸軍参謀総長)にも。海式は適当に」
「適当にって……投げ槍だなぁヲイ」
思い切り呆れる完治に、英美は唇を尖らせて、
「だって海式にはあんまり知り合いいないし……」
「だからいつも言ってるだろ? 海軍サンともちゃんと付き合えって」
「……海式、嫌いなのよ。きょぬーばっかだし」
拗ねる英美を思わず可愛いと思う自分は、大分毒されてるなぁ〜と感じる完治であった。
次回へと続く……といいなあ(汗)
皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m
いや~、いよいよ始まりました無茶連載(汗)
果たして何処へ飛んでいくか分からない、風任せ♪ 風任せ~♪なスラップスティック・戦争コメディ(?)の始まりです(;^_^A
ぶっちゃけ、この物語はノリとテンションで八割方構築されてるので、更新速度と1話の長さは作者の精神コンディション次第で変わる出鱈目な作品ですが、ご贔屓願えたら幸いです(__)
それでは皆様、天照大帝とお稲荷さん共々、次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)
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