冒頭ご紹介したメールは日本語のできる中国人が中国語のウィンドウズなどで作成したのだろう。今年入った新人なのか、ハッカーといってもレベルはまだアマチュアに近い。どうせスパムメールを送るなら、せめて日本語の漢字フォントが打てるソフトを使ってほしいものだ。
典型的なハニートラップ
下手なスパムメールよりも、はるかに効果的なのが「ハニートラップ」による情報収集だろう。3月21日、59歳のハワイ在住米陸軍元将校が国防機密漏洩罪などで刑事訴追された。恋愛関係にあった27歳中国人交換留学生に戦略核関連の機密情報等を漏らしたのだという。
日本でも報じられたので、早速某テレビ局から電話取材があった。理由を聞けば、「ハニートラップと言えば、宮家さんだと思った」などと言う。そう言えば以前中国の諜報活動についてコメントしたことはあったが、もちろん筆者はハニートラップの「専門家」でも、何でもない。
「冗談じゃない、人聞きの悪いことは言わないでほしい」と釘を刺した。幸か不幸か、別のニュースが入ったため、中国に関するインタビュー取材は結局中止となった。だから、というわけではないが、その際にコメントしようと思っていた内容を簡単にご紹介しておこう。
●中国の対外諜報活動の主体は必ずしもプロの工作員だけではなく、素人の学生・企業人・学者・研究者など誰でもスパイになる(または、強制される)可能性がある。
●ハワイには太平洋軍司令部があり、核兵器、ミサイル防衛、早期警戒レーダーなどの機密情報を知る立場にあるこの元陸軍将校のようなコンサルタント業者は数多くいる。
●同様に、ハワイには米国のアジア太平洋政策を専門とする研究機関も多数あり、そこでは既に多くの若い中国人学生・研究者が在籍し、様々な研究を行っている。
●この中国人女性がプロの工作員かどうかは大きな問題ではなく、むしろ、ハワイなどでこの種の情報収集活動がほぼ日常茶飯事化していることの方が問題ではないか。
ちなみに、被告側弁護士は「29年間も陸軍に奉職した被告人が意図的に米国に害を与えるはずはない」と主張している。一方、FBIによれば、被告人と中国人女性との関係は2011年6月に始まっており、電話盗聴などで容疑を固めたという。恐らく、これも「クロ」だろう。
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