TPPとFTA
毎日毎晩原稿を書き続けていて、我ながら仕事をしているな、とほめんりんこ。今風に言うと「自分にご褒美をあげたい」(笑)。
● 2012年2月、当時の中国国家副主席習近平が米国を訪問した。彼が翌年秋に開かれる中国共産党第18回大会において胡錦濤総書記に代わり、中国の新しい皇帝に就任することは確実視されていた。そうした事情から米国の政財界首脳たちは、習を熱烈に歓迎した。
● オバマ大統領ら米国首脳陣と習ら中国訪米団がこの時、あきらかにしたのが「米中経済関係強化に関する共同状況説明」(ファクトシート)である。これは米中戦略・経済対話の枠組みのもとで行われた経済対話で決定された合意事項を列記したものだが、米中両国の金融協力、相互の投資貿易の拡大を表明した第7項に次のような一項がある。
● 「米中双方はそれぞれ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)と中日韓自由貿易圏協定(FTA)など地域自由貿易協定の関連情報を共有することで合意した」。つまり、今後米国がイニシアティブをとるTPPと、中国が意欲的なFTA、それぞれの交渉に関する内容(進捗状況も含める)を互いに説明しあうという合意ができているのである。
●目的は明白である。
米国はTPPが中国封じ込めであるという「誤解」を与えないために、他方、中国は中国で、FTAが決してTPPに対抗するものではないという外交的なシグナルとして、互いに「関連情報を共有する」ことになったのである。
●まだある。この「経済関係強化に関する共同状況説明」は米中戦略・経済対話を通じて相互に確認されたものなのだが、
そもそも、戦略・経済対話とは第二期ブッシュ政権当時、財務省が主導してつくられた中国政府機関との最高レベルの情報交換の窓口であり、中国は首相、米国は副首相がトップになり、両国の閣僚が全員関わり、フルセットで政府レベルの課題を話し合おうという機構なのだ。いわば、米中経済「同盟」の象徴のような存在である。最高クラスのレベルで、「情報の交換」が一致されている。
● この5月、北京で開催される米中戦略・経済対話の場で、両国が互いにTPPとFTA交渉の進展状況を説明しあうことになる。その中心は訪米でTPP交渉に参加を表明した日本、日中韓FTA交渉をスタートしたばかりの日本について、になるだろう。TPPもFTAもアジア太平洋のもう一人のキーマン日本の存在なしにありえないからである。
●繰り返す。米国と中国はすでに日本の動きを念頭に「(交渉における」情報を共有しあう」ことで合意している。
「TPPが中国包囲網になる」などと一体誰が言い始めたのだろうか。
米中は互いに対立もすれば協調もする。この2面性こそが両国関係の本質である。
単なる米中対決論は日本の一方的な願望ではないのか。
以上は昨年配信したニューズレター・チャイナVol.144(2012年2月17日配信)記事、『習近平を熱烈に歓迎した米国ビッグビジネス~訪米の成果は「経済関係強化に関する共同説明」』の要約です。
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