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■「『市バス民営化』その課題は…」 2013/03/26 放送

 地下鉄と路線バスの民営化議論が続く大阪市。

 橋下市長は、いまの議会で地下鉄、バス共に市の事業としては廃止する条例案の可決を目指していますが、議会側は難色を示しています。

 各区の区長の思いとも絡んだ、市バス民営化の課題を取材しました。




 平野区の老人福祉センター。

 毎日100人ほどが集まり、体を動かしたり、文化講座を楽しんだりしています。

 

 今一番の心配の種は、交通手段である赤バスが、今月末で廃止されることでした。

 (Q.やはりバスがなかったら、こちらになかなか来られないですか?)
 <お年寄り>
 「来られません。自転車もこの年では無理」
 <お年寄り>
 「どないして来たらええやろな。足も弱ってるし」

 というのも、老人福祉センター利用者のおよそ3分の1が、市バスを利用しているからです。


 赤バスは、地域の足として1990年に運行が始まりました。

 しかし、この赤バスをはじめ、市バスの乗車人員は年々減少していて、それに伴い赤字が増え続け、昨年度は100億円近い赤字となりました。

 

 <大阪市 橋下徹市長・2011年11月>
 「赤字路線が消えるから、赤字路線を廃止しちゃいけないから、全部ひっくるめて公がやるんだという思想にはたちません。原則は民営化で」

 地下鉄・バスの民営化を市長選の公約に掲げた橋下市長、就任直後、バスの赤字解消に向けて路線の見直しを指示しました。

 そして大阪市交通局は、一定の乗客数を満たせなかった赤バスを今月で廃止し、来年4月には現在の132路線を89路線に整理した上で、民間に譲渡する案をまとめたのです。

 

 大阪市の南東端にある平野区は、今は網の目のようにバス路線が張り巡らされています。

 しかし、来月からは先ほどの老人福祉センターを通る赤バスが廃止され、さらに来年4月には平野駅と八尾駅を結ぶ路線と南巽駅と平野駅を結ぶ路線がなくなる見通しです。

 2つの路線だけで赤字は年間1億円を超えていて、経営効率が悪いのは間違いありません。

 とはいえ、地元議員にとってはどうにも納得できません。

 <公明党 漆原議員>
 「びっくりしました。恐ろしいぐらいびっくりしました。市民の足をどう考えているのかと」

 そこで各区では、赤バス廃止の代わりとなる交通手段の検討をはじめ、平野区は来年度に限り、1,100万円かけて民間のタクシーを代わりに導入することを決めました。

 <平野区 藤井清美区長>
 「高齢者の方とか障害者の方とか、移動の足に困られる方がおいでになりますので、何かの形での福祉的な意味合いでの措置が必要だと考えました」

 利用者は70歳以上の高齢者や障害者など登録した人に限られ、事前予約も必要ですが、委託を受けたタクシー会社は介護ヘルパーの資格をもったドライバーが対応します。

 また、バスのような停留所が設置できないため、コンビニエンスストアの駐車場で乗り降りできるよう、現在、区の職員が頼んで回っています。

 結局24区のうち、半分以上の区で赤バスに代わる交通手段が検討されたのですが、なかには区長と交通局とでトラブルになる事態が起きていました。

 <区長>
 「足の確保をなんとかしてもらいたいと」

 <交通局>
 「私どもの考えていたものとは、少し異なったものになっているのかなと」


 今月中の赤バス廃止が決まり、代替の交通手段を検討してきた大阪市の各区長。

 平野区の隣の東住吉区では民間出身の和田区長の発案で、いち早く去年10月に民間事業者の公募を行いました。

 区の財政負担なしで、バスを運行してもらう狙いでした。

 <東住吉区 和田智成区長>
 「最終的には事業者が黒字で運行していただくことが目的ですので、はっきり申し上げますけど、補助金出るから参入しようという方は参入していただかなくても結構です」

 赤字のバス路線に参入する会社は現れるのか?

 区長の心配をよそに、説明会には大手バス会社をはじめ、14社が参加しました。

 結局、地元のタクシー会社、「日本城タクシー」が運行することに決まり、昔の市バス模様の小型バスも完成しました。

 <日本城タクシー 坂本篤紀取締役>
 「便利であるならお客様は必ずつくだろうし、収益にあわせて仕事をしていくのが民間事業であって、十分採算あうと思います」

 ところが、和田区長の意向を受けて、「日本城タクシー」が採算が合うようにと考えた路線に対し、交通局が異議を唱えたのです。

 

 <大阪市交通局 井沼芳徳課長>
 「交通局としましては今回、赤バスを廃止させていただくということでしたので、本来私どもが考えていたのとは少し異なったことになっているのかなと」

 交通局は赤バス廃止に伴い、「日本城タクシー」が考えた路線では赤バスの代わりの役割を果たせていない上、今の市バスの路線とも重なるというのです。

 しかし、「日本城タクシー」は赤字路線をそのまま走らせ、補助金で補おうという交通局の考えには従いませんでした。

 <日本城タクシー 坂本篤紀取締役>
 「要望に応じてコンビニエンスストア的なものが、コミュニティーバスなのに補助金ありきからすでに間違ってると思います」

 結局、この問題は「日本城タクシー」を誘致した和田区長が交通局に対し、強硬な態度を取ったとして、橋下市長に更迭される事態にまで発展しました。

 <東住吉区 和田智成区長>
 「税金を投入しないということを、私は前提に考えておりましたので、なぜなんだという疑問がその時に言葉が荒くなることはあったと思います」


 一方、赤バスが廃止され、福祉タクシーが走る平野区では、来年度のバス路線に関する住民説明会が開かれました。

 

 <大阪市交通局 井沼芳徳課長>
 「バスに投入されてる市税を減らす、そしてそのお金を他の事業に活用する…」

 民営化の必要性を訴える交通局に対し、住民からは反対の声が相次ぎました。

 <住民>
 「初めから民営化やるんやぞと、納得せえと。押しつけや!はっきり言うて」
 <住民>
 「老人切りみたいなそんな政策をやめて、もうちょっと年配の方を大事にする政策をお願いしたいと思っております、以上です」

 これに対し、大阪市は民営化しても住民のために5年間は、現在の路線を維持するとしています。

 しかし、民間のバス事業者の立場では、「日本城タクシー」のように採算を考えてしまうのも無理はありません。

 <大阪市交通局 井沼芳徳課長>
 「どの民間事業者も好きに参入して下さい、という形のものではなくて、今やっている事業をきちっと引き継いでいくと、一定の財政支援をしながら、バス路線を維持していきたいという方針です」

 これからの時代、無制限に税金を投入するバス事業は許されません。

 一方で、市民の足をしっかり確保していかなければ、民営化に納得は得られません。




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