前々から気になっていた「知の逆転」が非常にエキサイティング。ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、ジェームズ・ワトソンなど、6人の賢人のインタビュー本です。
誰も知らないインターネット最大の会社
なかでも、アカマイ社のトム・レイトン氏のインタビューが大変面白かったです。この会社、ほとんど知られていないけれど、誰もが使っているサービスを提供するインフラ企業だそうで。ぼくも知りませんでした。
アカマイ社はおそらく、”誰も知らないインターネット上最大の会社”というふうに表現してもいいかもしれません。当社は、ほぼ全てのウェブ上の最も人気の高いサイトの内容を配信したりスピードアップしたりしているので、誰もがアカマイ社を使っていることになります。毎日13万以上のウェブサイトが、アカマイ社を通じて配信されています。
なんだかすごい会社らしいです。Wikipediaの解説が分かりやすいので、こちらも引用。
アカマイ社の特徴は、世界随一とも言われる高速ネットワークを有していることにある。アカマイ社は毎日10億件を超えるヒットに対して配信を実施しており、インターネット通信量の15〜30%を取り仕切っているとされており、その要求を適切に処理するために、自社のサーバを世界中に設置している。
技術的には、アカマイのDNSサーバが、ユーザーの使っているIPアドレスから判断して、ユーザーが利用しているISP内などのユーザーに近い位置にあるアカマイサーバを割り当ててくれるので、遠隔地のサーバまでアクセスすることが必要なく効率が良い。これらの技術によって、アカマイ社は国内外でコンテンツデリバリネットワーク(CDN)最大手企業としての地位を不動のものとしている。
アカマイ社は、世界中の様々な企業が顧客となっている。アメリカ国防総省やYahoo!、Apple、IBM、メジャーリーグ、日本国内では全日本空輸(ANA)、読売新聞グループ、日本放送協会(NHK)、ユニクロなど様々な業界の大手企業が顧客となっている。また、Wiiおよびプレイステーション3におけるコンテンツ配信のインフラとしても採用されている。
もちろんGoogleやYahoo!といったサイトも利用しています。初めて聞く名前ですが、インターネットを使っている以上、アカマイのサービスに触れないわけにはいかない、というレベルのようです。
(NTTサイトより)
ちょっとわかりにくいですが、コンテンツをアクセス地点の近所のサーバーに配置し、高速にアクセスできるようにするサービスと理解すればよいでしょう。
たとえば本国Amazon(amazon.com)のデータはアメリカのサーバーにありそうな感じがしますが、実はアカマイが管理するの日本のサーバーに入っており、ぼくらは自動的にそこにアクセスすることになる、といった具合です。
すでに上場している大成功したベンチャー企業ですが、起業の経緯は意外なもの。
・授業料や子どもの学費が払えず困っていたところ、学内でビジネスプランコンテストが開催されていたので、賞金目当てで企画を出した。
・結局企画は入選せず。しかし、ベンチャーキャピタリストから資金提供のお声が掛かった。…が、「ナイーブでアカデミックだったから」一旦は断ってしまった。
・ビジネスプランを練り直し、デモも完成。そこで「これはリアルだ」と実感した。
・1998年に会社を立ち上げ、サービスイン。
もともとは賞金目当てだった、というのが驚きですね。しかも一度は起業を断っています…笑
アカマイ社はMITと深い結びつきがある、ある種の「産学連携」の成功事例でもあります。本社と大学は至近距離にあり、CEOのトム・レイトンは今でもMITで授業を持っているそうです。MITはアカマイに出資もしており、それによってキャピタルゲインも得ています。日本だと慶応SFCがこんなかたちの連携ができるのかも?
★この記事を読んだ人にはこちらもおすすめ。
というわけで、アカマイ社について詳しくは、CEOのインタビューが掲載されているこちらの書籍をぜひ。トム・レイトン以外にも、世界的な賢人たちのすばらしい洞察に触れることができます。