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正義を止めた日

 超感覚的知覚<Extrasensory Perception>、通称『ESP能力』。<Esper>と書いてエスパーと読んだりもする。
 ようは超能力のこと。
 2023年の現在から約10年ほど前に発見され、世界中に広がった存在。
 百人に一人はこのESP能力者だと言われているほどの広がりようだ。
 ESP能力で一番多いのは『念力』(サイコキネシス)『発火』(パイロキネシス)『瞬間移動』(テレポーテーション)の三つが上げられる。
 いまこの世界は、超能力者は一般的なものと考えられていて。それほどまでに身近な存在となったのだ。
 そして、やはり力があれば悪用するものもいる。
 ESP能力の犯罪を組織的に行う『悪の組織』や『悪の秘密結社』は『ESP犯罪組織』と呼ばれ、それを取り締まるのが正義の組織。
 その名も『ETCSS』(エトクス)だ。
 なんの略称かは知らない。知っている人なんて世間でも少ないだろう。
 この組織は、ESP能力者の少年少女を育成し、ESP犯罪組織を取り締まる国家機関みたいなものの一つだ。
 俺の幼馴染の三人も所属している。『爆炎発生』(エクスプローション)北島(きたじま)浩介(こうすけ)『氷河魔王』(アイスエイジ)木崎(きざき)(りょう)『紫電轟雷』(ストライクサンダー)姫野(ひめの)朱音(あかね)の三人だ。
 この三人でチームを組み、ETCSSでも上位のメンバーに食い込んでいるそうだ。この間テレビにも出演していた。
 俺か?俺の名は竜胆(りんどう)勇輝(ゆうき)、ESP能力の欠片もない平凡な男子学生だ・・・・・・。

















 「勇輝くん、勇輝くん?」

 「ん?ああ、どうした?」

 ボーっとしていた俺の顔を覗きこむ金髪の少女。俺は思考の波から引き戻され、返事をする。
 背は低いが抜群のスタイルを持つ彼女、俺の幼馴染である姫野朱音だ。

 「なんだか元気ないよ?どうしたの?」

 心のそこから心配しているんだろう。彼女は感情が顔に出やすい。

 「なんでもないさ」

 「そう?なんだか落ち込んでいたように見えたけど・・・・・・」

 顔に出ていたのだろうか、俺も結構人のことを言えないのかもな。
 なんでもないから、と強引に言い切って彼女を追い払う。
 何か言いたそうにしていたが、渋々と引き下がって行った。
 少し俺のことを話そうか、さっき俺は自分のことを平凡と言ったが、それは才能面であって実力的には他人から羨ましがられるようなものだ。
 ETCSSの現役隊員さえ比較にならない頭脳、知識と空手、柔術、ムエタイ、中国拳法、カポエイラ、ボクシング、シラット、CQCとあらゆる武術を習得し、指揮能力もある・・・・・・。
 朱音曰く、顔も素晴らしいそうだが、そんなことはどうでもいい。あいつから俺のことを聞いてみろ、誇張とか一方的な惚気を延々と聞かされる羽目になるぞ?
 まあそれもどうでもいいな。
 俺は秀才だ。
 だが、そんな俺でも本物の天才、いや神童には勝てなかった。
 幼馴染の三人は、俺を差し置いて最年少でETCSSに入隊、瞬く間に功績を挙げて行った。
 凡人以上天才未満、あの三人といつも一緒にいたのを見てきた連中は俺のことをそう評した。
 三人と俺達の親はそんなことを気にすることはなかった。
 でも、俺は気にしたさ。三人の能力を疎ましくさえ思った。俺だってESP能力があればもっと高みに上れただろうに。
 ESP能力がなければETCSSの上層部に入ることは高校生である俺には不可能だ。
 俺はよくて中堅だった。
 名を上げることができない。実力が半分くらいしか認められない。幼馴染はどんどん有名になっていく。
 それで俺は、幼馴染に内緒で正義の組織を抜けることを決断した。





































 「やっと来てくれたんだね~?お姉さん嬉しいよ~」

 薄暗い室内の中、俺を出迎えたのは白衣の魔女だ。
 腰まである長い銀髪で肌は病的なまでに白く、瞳は赤く染まっている。なんのことはないアルビノだ。
 背は俺よりも少し低いくらいで、胸やお尻は朱音よりも大きく、腰も細い。
 絶世の美女、そう言っても過言ではないだろう。

 「前言っていた話は本当なんだろうな?」

 「うんうん。お姉さんは嘘は付かないんだよ~?ゆーくんのために、トッテオキを作ったんだから」

 俺は三日前、この女に勧誘を受けたのだ。

 「最強にして最凶、最悪のゆーくん専用の殲滅兵器、その名も・・・・・・」

 女は部屋の奥を指差し、楽しそうに言った。
 指差す方向は真っ暗で、何も見えない。

 「『全てを喰らう覇者』(オール・イーター)!」

 そこにあった漆黒の鎧を、スポットライトが照らすのであった。















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