私、楠葉(くすは)葵、ついこの前、真面目すぎて面白くないという理由。いやそんな理由でもないか、年末に振られてしまった。
「なんで、私何か悪いことした???だったら謝る!」
私はどうしても納得できず新たに作ったであろう彼女の前で問い詰めた確かにいろいろ人の目が気になるからキスはやめてといろいろ言ったけど・・・・・・・・
「だって、面白くねえし、大体俺遊んでただけだしさ、お前みたいな糞まじめ俺が好きだと思ってんの、お笑いだよな」
「ホントばっかじゃないの、もともと私と付き合ってたのに、人が悪いぞ遊ぶなんて」
「わりぃわりぃ、じゃあ行こうか、じゃあそういうことだから、ばーか」
こんな感じで私は振られた、だから今は独り身の理由、わかってはいたのだけど………そんなに魅力がない人だったのだろうか………私なんて………
年が明けてこれから気持ちを新たにというのだけど……
「どうにも………なぁ………一人で行ったところでだし」
そんなところに
「ねえ大丈夫………葵?」
「母さん………」
まだ傷が癒えないと思っているのだろう……母さんが声をかける、でもこうして心配してくれたから……
「もう大丈夫、私ひとりじゃないし、よく考えれば、ほかの人とできているのに、それでだますような人だから、よく考えればよかったの」
嘘偽りない本音、ただ違うのは………
「(私を、ううん弄んで遊んで、無茶苦茶にしたことだけは許せないけど……)」
私だって、あんな思いをされて……心穏やかなほど仏様ではない、だけど私は弱いし、何より女、
それに仕返しなんてできるわけがない、彼はそこら辺の男よりよほど強いのだから
「(折り合いつけるしかないのよね……誰だってそうしてるから)」
あっそうだ、どうして母さんは……
「ところでどうしたの?」
「ああ、そうそう、お友達が来たわよ、新年なんだから、あなた初詣でも行って、それで今年の心機一転をしてきなさい」
「初詣………」
「そう、でも最近物騒だから気を付けるのよ、なんでも正体不明の化け物が出るんだって♪」
と母さんはいたずらっぽく笑っていった、きっと傷ついていると思っている私を励まそうと思ったんだろう
「はいはい、じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
正直どうでもよかったのではあるが、せっかく来てくれたし、ここにいても余計なことばっかり浮かんで……気晴らしくらいになるかなと思った私は………
「うん、わかった。家でじっとしててもしょうがないし、せっかく来てくれたし」
「うん、いってらっしゃい、気を付けてね」
・・・・・
「もう遅いぞ、葵」
「あーごめんごめん」
出迎えた、加瀬久井(ひさい)、私の幼馴染であり親友
「それより初詣だぞ、傷心してるのはわかるけど」
「ううん、そんなことじゃないの、彼とはもうどうでもいいんだけど、周りが気を使ってね、それがきついの」
「ふうん、その点、私は大丈夫かしら」
「ああ、その点は大丈夫、あなたが気を使うなんて、あったら気持ち悪いから」
「まあそのくらいの元気あれば大丈夫ね、よかった、新しい人も探す気持ちで、行ってこようか」
「そうね」
なんだかんだ言っても、こうやって元気にそして親身になってくれるから、
私は久井とここまでやってこれたんだなと素直に思う、思えばずっと隣にいて、こうして私のことを助けてくれたのだから
「ん???どうしたの???やめてよ、私………女なんだから私そこは専門外だよ」
「違うわよ!」
「だって、ボーっとして私のほうを」
「もういいわよ、どうでもいいことだから」
かと思えば、こうしてとぼけて私のことを気遣う、気遣いは嫌い………だといったけど、
こうやって和ませて、いつの間にか肩の力を抜かしてくれるのは好きだ、もっとも、本人は知ってやってるのか、知らないでやってるかわからないけど……
「やっぱり多いわね……よくこんなに来るものだわ」
「そりゃあ、一年の始まり、それに今年こそ何とかしたいって思いで来るのだから、そりゃあ必死でしょう」
「去年、あれだけのことがあったんだから、今年は私、変わる思いでやらなきゃ、いつまでも引きずっていられないし」
「そうね、変わる思いでまずは引いてみますか」
そうして、私たちは気分も新たに順番が回ってきて運勢を引いてみた
「何これ、変なの」
「あら、面白いじゃない」
運勢といえば、大吉と書かれていた………いたんだけど
「変われることに対して、恐れず進めばきっといい道ができる」
「あら、葵にふさわしいじゃない、変わって進めなんて」
「まあ確かにそうなんだけど……なんか作為的すぎない、こうもズバズバ当たるなんて」
「こんなのよくあることじゃないかしら?」
確かにそうなんだけど……なんか…………
「それとも何かありそうな気がするの?」
「そういうわけじゃないんだけど……何か引っかかって……」
「気にし過ぎよ、こういったら悪いけどさ、ありそうなことを書いただけじゃない、それを引いただけよ」
「まあそういう身もふたもないいい方しなくても………そうよね……私、まだ気にしちゃってるのかしら……吹っ切れたつもりだったんだけど」
少しセンチな気持ちになってしまう、やはり私は弱いのかもしれない
「よしよし、何かあったときは、私が守ってあげて、生まれ変わらせてあげるからねぇ♪」
「ったく何を言ってるんだか、さあ、もう終わったんだし、そこらへんぶらぶらしたら帰るよ」
まさかこのときは知らなかったすぐに帰ればと………どのみち同じだったかもしれないが………
「あら、珍しいわねこんなところに占い師なんて、葵、行きましょうよ、そんなにお金取られないみたいだし」
「えっまた???だってさっきしたばっかりでしょう、それにお金払ってまで」
「だって、まだ占い師からやってもらったことないし、見るだけなんだから」
「まあそれなら………」
そういい、私はされるがままにされ、さっそく見せられた人は
「うーーーん、素晴らしい、きっと近いうちに素晴らしいことが起こると暗示してますよ
もしチャンスだと思ったら強引にでもモノにするべきです」
うーーん、ありきたり、と思ったんだけど当の………本人は
「うわー、だってさ、葵もやってみなよ」
ったくどうして、一度やったものを………とは思ったけど
久井がやった手前………しょうがない……
「では、早くお願いしますよ」
そういい、見ていただくと
「こ、これは…………あなた近いうちに今まで体験したことのない経験をします。
これに逆らってはいけません、怖いこともあるでしょうが、きっとあなたのためになる素晴らしいことです、
その経験を大事にするように」
うーん、この胡散臭さ、なるべく早く帰ろう面倒なことにならないように………
「私もいろいろと見てきていますが初めてですね、そうだ、これから帰るところですが、どうですあなたたち」
「っていうと???」
「興味ありますし、もっと見せたいものがあるんですよ、そうすればもっと詳しく鑑定できますし、近くですから、もちろん嫌だといえば仕方ないですが」
「いいんじゃない、ねえ葵?」
「うーん………」
「いいじゃない、葵どうせすぐに帰ろうと思えば帰れるんだし、ねっ?」
結局押し切られる形で私は引きずられるようについていった。
しばらく道なりに歩いていると、急に人気のいないところへと歩いていく、だんだんと不安になってくる
「ねえ大丈夫なのかしら……」
「さぁ?でも大丈夫って何が大丈夫なの?」
まあそういわれればそうではあるのだけど……
見た感じこの占い師華奢だし、力は強くないのだけど………
「(なんなんだろう、この得体のしれないものは……)」
次第に不安はどんどん大きくなる、誰も人気がいなくなり行き着いた先は
「ねえ久井なんなのここ、真っ暗でなんかしかも怪しい、とても占いをする雰囲気じゃあ……」
「でも、楽しいことがあるって、言ったわよ大丈夫でしょ」
だからって、なんか薄気味悪い部屋で、何か物々しい感じがして、よく見えないんだけど何か見える、何かわからないけど
「それになんなのあれ………怖い………」
「ふふ、大丈夫よ」
プスッ!
「あっ………何か刺された首筋に………いったい誰が………」
「すぐに、このことに感謝することになるわ、きっとね………」
倒れる瞬間、垣間見えたものは薄ら笑いを浮かべていた久井の姿だけ………
すぐに意識は闇に溶け込んでいった