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安倍政権のカラーが出はじめるのは、夏の参院選後だと、専らの噂である。当然ながら、参院選での勝利が前提条件になるが、現下の高支持率や様々な政治情勢を考えてみれば、野党の大逆転勝利などは考えにくい。そう考えると、憲法論議が本格化するまでには、もう少し忍耐が必要だという事になる。

改憲、破憲両論あるが、憲法に手を入れるという事になれば、現実的には先ず96条の改正条件の緩和が突破口となる。護憲派は「96条の改正は9条の改正に直結する」と警戒感を強めているが、これはいささか短絡的な見方に思える。確かに9条は、レジーム化した戦後民主主義の支柱、象徴となるものだろう。だが、憲法には悪しき前文や、義務と釣り合いが取れない権利を謳う第3条などがあり、9条は改正すべき要件のひとつに過ぎないのだ。9条がクローズアップされるのは、いま日本の安全保障が脅かされている中で、可及的速やかに改正が必要だという実態がひとつ、そしてもうひとつは、9条というものを護憲の象徴と定義する妄想者が多いことにある。

その護憲派の団体のひとつに「九条の会」がある。
ソビエトの諜報組織であるKGBから資金提供を受けていた小田実や、戦後民主主義的左翼を代表する大江健三郎など9名が呼びかけ人となり、2004年に立ちあげられた団体である。
九条の会のホームページには、設立の理念である「「九条の会」アピール」という文章が載っているのだが、その結びの文章がこれである。

私たちは、平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法九条を激動する世界に輝かせたいと考えます。そのためには、この国の主権者である国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です。それは、国の未来の在り方に対する、主権者の責任です。日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。


つまり、この九条の会という組織は、何も憲法9条だけを守るのではなく、“「改憲」のくわだてを阻む”という言葉が示す通り、憲法は一言一句変えてはならぬという、いわば絶対護憲論の理念に基づいているということが分かる。

大江自身もこう語っている。

 私は22、3歳で小説を書き始めたころから「自分は戦後民主主義者である」ということを書いてきました。そして憲法というものが、大げさに言えば自分の世界に対する態度ということ、自分のモラルというものの考え方の支えというか、外してはいけない土台として憲法があると考えてきました。

大江健三郎

ところが、これは大江の欺瞞なのだ。
「自分の世界に対する態度」であり、「自分のモラルというものの考え方の支え」であり、「外してはいけない土台」としての憲法感で、大江は嘘を言っている。

少し前に引用した、福田恒存の「当用憲法論」(「日本を思ふ」に収録)には、福田恒存、大江健三郎、憲法学者の小林直樹、国際政治学者の高坂正堯らが、NHKの「憲法意識について」という座談会に出演したときのやりとりが、エピソードとして載っている。
下記の段落が興味深い。

 断言しても良い。現行憲法が国民の上に定着する時代など永遠に来る筈はありません。第一に、「護憲派」を自称する人達が、現行憲法を信用してをらず、事実、守つてさへもゐない。大江氏は覚えているでせう、座談会で私が、「あなたの護憲は第九条の完全武装抛棄だけではなく、憲法全体を擁護したいのか」と訊ねた時、氏は「然り」と答へた、続けて私が「では、あなたは天皇を貴方がたの象徴と考へるか。さういう風に行動するか」と反問したら、一寸考えてから「さうは考えられない」と答へた。記録ではその部分が抜けてをりますが、私はさう記憶しております。或いは氏が黙して答へなかつたので、それを否の意思表示と受け取つたのか、いづれにせよ改めて問ひ直しても恐らく氏の良心は否と答へるに違ひ無い。が、それでは言葉の真の意味における護憲にはなりません。大江氏は憲法を憲法なるが故に認めてゐるのではない、憲法の或る部分を認めてゐるに過ぎず、また憲法を戦争と人権の防波堤として認めてゐるに過ぎないのです。


この欺瞞は、大江が戦後ずっと貫いてきたものなのだ。
既に昨年の8月のエントリーで書いたように、大江はノーベル賞受賞後の文化勲章の受賞を、「民主主義に勝る権威と価値観を認めない」、「戦後民主主義者に国民的栄誉は似合わないから」という理由で辞退した。文化勲章は、皇居内の宮殿で、天皇陛下から直接授与されるものであり、彼はその場所には足を踏み入れたくなかったわけである。皇室を認めないのだから。

前述のNHKの座談会で、大江や小林らは、「年寄りが死ねば、現行憲法は全国民の上に定着する」という見解を示したという。福田恒存の「断言しても良い。現行憲法が国民の上に定着する時代など永遠に来る筈はありません。」という一節は、それに対する反論である。
大江の思惑や打算とは裏腹に、憲法にかかわる議論はついに選挙の争点になり、国会議論の主要テーマのひとつとなりつつある。来る参院選で自民党勝利を必要とする理由は、この憲法という戦後体制の権化に楔を打ち込む千歳一隅のチャンスが、いま、まさに目の前にあるからである。


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史観 | コメント(2) | トラックバック(0)
コメント
No title
日本に生を受け日本人で在り続けながら、日本を愛しているとはとても思えない言動ばかりの人々の説には聴く耳を持ちません。
例え現憲法が、とても素晴らしく世界が渇望する代物だとしても、日本国の憲法は日本人が真剣に考え尽くして作成されるものであるべきで、占領国が短日の内に勝手に日本国の歴史も考慮しないで原文を造り押しつけた文章は、本来ならばとっくに改憲されてしかるべきものだと思います。

百歩譲って仮に条項内容が同じになったとしても、日本人が自らの意志と覚悟を持って制定される憲法であるべきだと強く思います。

人間性を剥奪され圧政に苦しんだ国々の人々や,複数の国の植民地になった歴史を持つ人々ほど「平和」よりも「自由」に大きな価値を置いて行動している現実を素直に学びたいと思います。

全ては参院選後、という政府の姿勢を理解出来ないではありませんが、日本を狙う諸外国がそれまで何もしないでいて呉れることを祈るばかりです。
さすが、ですね
さすが福田恒存氏。
パラノイア大江の欺瞞ぶりを
見事にあぶり出しましたね。

占領憲法にある
職業選択の自由を無視して
自衛隊員を「恥ずかしい」と
誹謗中傷したのもコイツ
パラノイア大江です。
日教組による職業差別もひどいものでした。
自分たちと異なる意見は「不適切」のレッテルを貼り
言論封殺にいそしんでいるのもコイツらです。

すなわち、護憲を叫びながら
憲法をないがしろにしているのが
反日変態サヨクどもなのです

「護憲」が聞いてあきれるわい。

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