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【私説・論説室から】

よくも悪くも老練の強み

 自民党国会議員のベテラン秘書が事もなげに言う。「もろに公約違反だろ、あれは」。あれとは環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加問題を指している。

 TPP反対を叫ぶ農業団体らの陳情が事務所に相次いで、議員も日比谷公園での決起集会に加わったそうなのだが、この秘書に言わせると「協定参加の流れはもう、決まりでしょ。議員も俺もそう思ってる」。

 表向きの発言と、結局はそうなると見越す腹の内とが違う。いわば建前と本音が正反対の二枚舌対応だ。

 これがもし民主党政権下だったなら…交渉参加を政府が表明した時点で反対派が離れていったりして、党は再分裂していたんだろうなあ、と想像してしまう。

 同じく世論を二分した消費税増税問題で民主の政権が党内の造反に体力をそがれたのとは違って、今のところ自民に不穏な空気はない。政権運営のノウハウにたけた老練の党なのだ。

 かねて自民の政治にどっぷり漬かる秘書出身の知人は「民主になくて自民にあるのは根回し。それに、泥をかぶるまとめ役」と解説してくれた。民主の議員は個々には優秀でも、政治をどう動かすかとなると未熟だったね、とも。

 二枚舌や古い談合政治が当たり前のようになっては困るが、下野した民主党の面々には自民の老練さを謙虚に学んで他日を期してほしいと思う。もちろんこの先も党が存続していればの話だけれど。 (谷政幸)

 

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