【高橋乗宣の日本経済一歩先の真相】
日銀新体制が救えない瀕死の国内製造業
【政治・経済】
貿易赤字は8カ月連続
戦後の日本は「貿易立国」=「輸出立国」でやってきた。日本でつくったものを輸出することで生産が増え、雇用は膨らみ、経済も豊かになっていく。昭和30年代初頭からの復興も、原動力は輸出だった。それが今では、すっかり違う姿になっている。
21日は、日銀の新体制がスタートした。可能な限り金融を緩和する。そんな方向へ舵(かじ)を切るリフレ政策が動き出した。だが、国債やリスク資産の購入で市場がジャブジャブになっても、輸出立国の復活は望めない。実際、安倍政権の金融緩和を見込んだ相場が円安に振れても、貿易赤字は続いている。
金利を下げて経済をプロモートする場合、まずは投資が増えなければならない。それが雇用を増やし、消費を活発にする。物価は上向き、全体としての経済も上向くというシナリオだ。
それでは日本の現状は、金利が下がれば投資が増える姿にあるのか。50年前ならいざ知らず、グローバル化が進み、資本主義国家としても成熟しているのだ。単純な図式ではないし、投資を増やして雇用を拡大させようという企業も減っている。
日本の製造業の就業者数は、昨年12月の時点で1000万人を下回った。高度経済成長に突入した昭和30年代に逆戻りしている。ものづくりの主体が海外に移転しているため、働く人も減っているのだ。
国内の製造業は瀕死(ひんし)の状態といえる。生き残っているのは、どこにも真似されない強みを持っていたり、地域に密着したものづくりで成果を出していたりするところぐらい。これでは、いくら金融緩和を進めても、投資効果や雇用効果は期待薄だ。輸出が上向くことで貿易赤字の連続記録が止まるという状況も想定できない。
日銀の新体制が進める緩和政策によって国内でだぶついたカネは、結局、設備投資ではなく投機的な運用に回されることになる。アベノミクスの実態はアベノバブルス。庶民には恩恵のないバブルを招くのだ。すでにその兆候は株や不動産の価格上昇に表れている。失われた20年を経て、日本は、再び悪夢を見ることになりそうだ。
【高橋乗宣】